疲れ果てた夜に
あなたは凄く疲れている、朝から晩まで働いて。
体はクタクタ、頭はボーっとして、まぶたを閉じたら今すぐにでも寝てしまいそうだ。
でもまだ眠りたくはない。
そんな夜ってありますよね。
あなたは凄く疲れている、一日中気を遣って。
家に帰って、意味もなくネットサーフィンを続けている。
本当は全然興味なんてないのに。
そんな夜ってありますよね。
あなたは凄く疲れている、理不尽なことで怒られて。
ソファーに寄りかかって、強いリキュールをちびちびと飲んでいる。
その酒が、全てを忘れさせてくれるのを期待して。
そんな夜ってありますよね。
あなたは凄く疲れている、親に過度な期待を背負わされて。
塾の帰り道で、夜空に浮かんだオリオン座を見上げている。
試験に受かりさえすれば、明るい未来が待っていると自分に言い聞かせて。
そんな夜ってありますよね。
あなたは凄く疲れている、恋人と些細なことで言い争って。
部屋で小説のページを、ただめくり続けている。
本当は相手の放った言葉が、胸に刺さり続けているというのに。
そんな夜ってありますよね。
日本のどこかに、すぐに寝てしまう気になれない人たちが、今日もいる。
眠りについたら全てを失ってしまうような気がして。
でも結局、いつかは眠りに落ちるのだ。
そして夜明けはやって来る。
あなたは凄く疲れている。
でも今はまだ、布団に入る気にはなれないみたいだ。
きっともう少しだけ感じていたいのだ。
今日という、二度と戻らない一日を。