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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒猫虎 恋愛

現役スーパーアイドルの義姉と義妹が毎日俺を殴ってくる(あと不良も)

作者: 黒猫虎

R15相当の暴力、イジメ、微エロ、特殊性癖フェチの描写があります。

また、後半に「○○視点」といった視点変更があります。

15歳未満の方、およびこれらの注意事項で苦手なモノがある方はブラバ推奨です。

m(__)m



       1



 その日、俺はいつものように、同じ学年の不良連中から体育館の倉庫に呼び出されていた。



「お前の義姉(あね)義妹(いもうと)の恥ずかしい写真を取ってくるか下着を持ってこい。分かったか?」


「それだけは、出来な……ッ!?」



   ドカッ ボコッ


 めちゃくちゃ腹を蹴り上げられる俺。



「シア太のクセに生意気だぞ。俺たちが『ヤレ』と言ったらやるんだ。分かったな?」


「ぐはッ……」


「返事くらいちゃんとできねーのか!?」



   ドコーッ ボコーッ


 もっと激しく蹴られた俺は、派手に地べたを転がってしまった。



「……分かりました……」




 俺こと四能(シアタ) 真値人(マチト)は、この高校に入学した時から最下層の扱いを受けている。

 苗字を某有名漫画のいじめられっ子風に「シア太」と呼ばれ、実際にいじめを受けている。

 何かにつけ殴られ、パシられ、金を巻き上げられる毎日だ。



 中学まではここまでヒドいことは無かった。

 タダのどこにでもいるクラスの目立たない陰キャの扱いだったのだ。

 しかし、とある事情により、高校入学してからというもの暴力的(バイオレンス)な日々を送るハメになってしまう。


 それは今年の春、俺に新しく出来た義理の姉と妹が、現役の(スーパー)アイドルであったことが原因だった。

 要は、変に目立ってしまって校内の反感を買ってしまったのだ……。




義姉(あね)義妹(いもうと)の恥ずかしい写真または下着を持ってこい」か……。




 これ無理ゲーだろ。





       2



 俺は家に帰る途中で、食材を買い込む。

 家族の中で唯一忙しい仕事を持たない俺が、自然と飯炊き担当なのだ。


 はっきりいって、料理の腕だけは自慢できるようになった。

 天国にいる母ちゃんに食べさせてあげたいくらいだ。


 まあ、ここ最近の俺の状況からすると、ワリとその夢はすぐに叶ってしまうかもしれないな。




「「ただいまー」」



 夜の9時を回ろうかという頃、問題の2人が帰ってくる。


  義姉(あね)のサヤカさんと義妹(いもうと)のシイナだ。


 同じ家の中に超美少女が2人もいるという、この違和感。


 しかもそれが超有名なスーパーアイドルという……違和感しかない。



「マチポっち、今日のメニュー何ー?」


「マチくん、もちろんハンバーグだよね。アタシ、今日ハンバーグの気分」


「ウソ、お姉ちゃんハンバーグなの? シィナは絶対すき焼きなんだけど」



 や、やばい……今日のメニューは……。



「ん? マチくんてば、なに震えてるの?」


「どしたー? マチポっち……あっ、これ野菜炒めじゃん! 肉はどうしたん――だっつうの」


   ボコーーッ


「ぐはっ」



 義妹(シイナ)のボディフックが俺のお腹に着弾。


 俺は火にかけているフライパンや食材の安全を一瞬の内に確かめてから、ホコリを立てないように、キッチンの床にうずくまる。



「ちょっと、シイナちゃん、気ィ短すぎ」


「ゴメン、お姉ちゃん。シィナの右の(こぶし)がマチポっちの血を吸いたがって止まらなかった」



 テヘッと舌を出す義妹(シイナ)は信じられないくらいの超美少女であり、義姉(サヤカ)さんも同様である。


 それもそのはず、この2人は俺から見て(かなり客観的に見て)超()級な国民的美少女なのだが、実際に現役トップアイドルであり、と同時にティーン雑誌の1・2番人気のティーンモデルでもあり、青年誌の超人気グラドルでもあり、超期待の若手女優でもあるのだ。

 要するにこの2人、現役の(スーパー)アイドルなのだ。



 俺はタダ普通の一般高校生男子なので、この家の中でもヒエラルキーは自然と最下層の扱いを受けていた。



 そして、この姉妹、性格が超ドSなのだ。


 俺は、もしかすると学校の不良たちよりもこの2人に毎日殴られていた。





       3




   シャワワーーッ



 俺は夕食の後に1階のお風呂に入っている義姉(サヤカ)さんのシャワー音を確認し、2階の義姉(サヤカ)さんの部屋に忍び込む。



 俺の目的は義姉(サヤカ)さんの下着の入手だ。



   パチッ



 義姉(サヤカ)さんの部屋の明かりをつける。

 そこは、フワフワとしたカーペットやウサギのぬいぐるみが置かれている、何とも普通の女子のような部屋だ。



(あの2人が帰ってくる前に、先に物色しておけばよかった……)



 毎日の義務である食事作りの方に注意が行き過ぎてしまった俺は、最大のチャンスを逃していたことに気づく。


 しかし、嘆いてみても後の祭り。


 しかたなく、この危険な時間帯での作戦決行となってしまった。



義姉(サヤカ)さんのお風呂タイムは1時間、余裕はあるはず……)



 俺は、義姉(サヤカ)さんの下着が入っている収納の段を開ける。

 場所は完璧に分かっている。

 なぜなら、俺が家族の服は全て洗濯して畳み収納しているからだ。


 俺がいちばん地味で布が汚れていないパンティを選んで、自分のズボンのポケットに入れようとした、正にその時だった――――



   ガチャッ



 とつぜんドアを開けて入ってきた義妹(シイナ)に見つかってしまった。


 最初は驚いた様子の義妹(シイナ)だったが、次第にニヤニヤといった表情に変わっていく。



「マチポっち、お姉ちゃんのパンチュ(丶丶)をどうする気なのー? 自分のオカズ用(丶丶丶丶)でちゅかー?」


「……」



 ヤバい。



「おいこら!」



   バチーンッ ゲシーッ ボコーーッ



 どうすることも出来ずにフリーズした俺の頬に強烈なビンタが張られる。

 そしてすかさずローキックとボディフックのコンビネーションが決まった。



「ううっ……」



 思わずうずくまってしまう。

 食べた夕食、吐きそう。



「お姉ちゃん来るまで、正座してな」



 俺の寿命はここまでかも知れない……。





       4



 俺の余命は義姉(サヤカ)さんが来るまで、か。

 その間に俺の家庭の事情を説明させてもらおう。

 いまさらかもしれないが……。


 俺の家、四能(シアタ)家の家族構成はこうだ――――



 親父(オヤジ)義母(はは)義姉(あね)、俺、義妹(いもうと)


 俺が親父の連れ子、

 義姉と義妹が義母の連れ子になる。



 俺が中学3年のときに父が連れてきた再婚相手が、一流芸能人かつ実力派の美人女優、一影(イチカゲ) 佐織(サオリ)だった時には驚いた。

 親父はしがない三流映画監督だったから。

 まあ、同じ業界人であれば一流芸能人と結婚する可能性がゼロでないということだろう。


 ハイスペック義母の連れ子たちは、当時すでに国民的人気を博していた(スーパー)アイドルの沙耶花(サヤカ)詩衣菜(シイナ)


 しかし、感動できたのは、初めての顔合わせの時ぐらいで、彼女たちは、その狂暴な素顔をすぐに俺に見せていくことになる。



 そして、最後の俺だけがただの高校生だ。



 俺以外が芸能人と業界人――


 そんな家庭事情だったから、自然と俺が家事担当になるのは必然だった。

 四能家の中に俺を最底辺とした家庭内カースト制度が築かれてしまったのだ。

 あっという間にあっさりと。


 今現在、俺は新しく出来た義姉妹(きょうだい)から、毎日殴る蹴るの暴力を受けているのだった。



 この大きな変化は俺の学校生活にまで影響が及んだ。

 学校生活の方に最大の問題を起こした原因が、1つ歳上の義姉(サヤカ)さんが、「(それまで通っていた)芸能人(が通う)学校をやめて、高2から俺の通う高校に転校する」と言い始めたことだ。

 また、俺と同学年だけど早生まれな義妹(シイナ)も、義姉(サヤカ)さんと同じく、俺の通う高校に入学するという。




「「家から近いから」」



 そんな、めちゃくちゃとも言いづらい理由で、俺の高校生活はめちゃくちゃにされてしまったのだった……。





       5



   カチャッ


「ん、何? シイナちゃん。……とマチくん。何してるのアタシの部屋で」


「あっ、お姉ちゃん、聞いてよ。コイツさぁ――」



 お風呂から戻ってきた義姉(サヤカ)さんに、義妹(シイナ)が俺の許されざる行為を報告している。



 ……終わった。

 とりあえず、終わった。


 後は、2人からの制裁をただ待つのみである。


 最悪は、この家から追い出されるまであるかもしれない……。



 全てを聞き終えた義姉(サヤカ)さんが、意味ありげに微笑むと、正座している俺の目の前まで近づいてきた。


 ちょうど俺の鼻先に義姉(サヤカ)さんの腰を包む部屋着のピンクのモコモコした短パン(アイスクリームみたいな名前の高級パジャマメーカーブランド製のエロい雰囲気のヤツ)が迫り、こういう状況なのに俺は正直少し興奮してしまっている。

 義姉(サヤカ)さんは激怒した雰囲気で、ソレ(丶丶)どころじゃないのに……。



   ドゲッッ


「グフッ」


「マチくん。アタシのパンツで何するつもりだった? アン?」



 容赦のない義姉(サヤカ)さんの飛び膝蹴り(ジャンピングニー)が俺の顔面にヒット。

 普段は上品ぶってる義姉(サヤカ)さんの狂暴な本質がのぞき見えた瞬間である。


 映画やドラマの殺陣(アクション)もこなすこの義姉妹(ふたり)の体術は実に本物だ。

 その本物の技が本気の気合いを伴って、いつも俺に襲いかかるのだ。


 俺は激しく吹っ飛びながら、しかし、現役(スーパー)アイドルのお風呂上がりたてな石鹸の香りつき生膝感触をしっかり味わった。



「マチポっち。お姉ちゃんが質問しているんだから。正直に答えろよッ」



 ここで、床に転がった俺の顔を義妹(シイナ)の黒タイツに包まれた足裏が俺の顔面を踏みつける。


 まだ洗ってない現役(スーパー)アイドルの蒸れた足裏を俺は痛がってみせながらも堪能してしまう。



 いつからか俺は、暴力的義姉妹(ぎしまい)からのこの扱いを、(よろこ)んでしまう様になっていた。

 しかし、そうと知られては、本当は嬉しいこのイジメが、間違って本当に俺が望まないただ痛いだけ、ただ俺をイジメるだけといったモノに変化しかねない。


 俺は、この状況を守るために慎重に行動を選択していかなければいけない――――






「アイツらごときがお姉ちゃんとシィナをどうにかしようなんて。本当に頭が悪い連中だよね?」


「本当ね。マチくんをイジめるだけで満足しておけば良いものを」



 全てを洗いざらい白状した俺の顔は、まだ魅惑の足裏で踏みにじられていた。

 そっと上に視線をやると、そこにはうっすらと黒タイツの布越しに義妹(シイナ)のカワイらしい白とピンクの縞々パンツが見えた。



「あっ! コイツ、シィナのパンツ今見た!」


   ドガーッ ドゴーッ ゲシーッ


「ぐぁっ」


「義理の妹のパンツ見て嬉しいのか、この変態義兄(あに)


「ご、誤解……見てない……ッ」



 誤解じゃないけど、蹴られているのを悦んでいると知られないように演技する。



「待ってシイナちゃん。良いこと考えた」


「何、お姉ちゃん」


「アタシのパンツはもちろん返してもらうけど、シイナちゃんのパンツの写真撮るのはいいよ」


「「えっ」」



 疑問の声が思わずハモってしまった。

 いったい何を考えているんだ、義姉(サヤカ)さんは?



「シイナちゃん、悪いようには絶対ならないから、アタシにまかせて」


「お姉ちゃんがそういうなら仕方ないケド……」



 もちろん、俺に発言権はない――――





      6



 俺は今、義妹(シイナ)に顔を踏みつけられたまま、自分のスマホを手に構えている。

 右目は義妹(シイナ)の左足の下にあるので、左目だけでスマホの画面を見ながら角度調整、ピント調整を行っていく。

 義妹(シイナ)の左足は俺の左側にあるので、義妹(シイナ)は今、俺の顔の上をほぼ跨いでしまっているような格好だ。



「シイナちゃん、もっと足開いて。カメラに見せつけて」


「お姉ちゃん、こ、こう?」



 俺の持っているカメラには、さっきまでのチラ見で盗み見していたのとは比べられないほどの光景が写し出されていた。



流石(さすが)ね……。一流芸能人の娘であり、本人も《現役(スーパー)アイドル》《現役超人気グラドル》、《一影(イチカゲ) 詩衣菜(シイナ)》の秘密の撮影会って感じが出てきたわ。お姉ちゃんたまらない」


「お、お姉ちゃん。こっちは超恥ずかしいんだけど……」


「シイナちゃん、もっと本気出して。マチくんもカメラ技術勉強していたでしょう? お義父(とう)さんとお母さんにバラされたくなければ、最高の写真を撮りなさい」


「う、うん」

「わ、わかりました」



 どうして、こんなことになったんだ?

 正直言って、こんな事態、俺は嬉しいだけだ。

 しかし、それがこの2人に見抜かれてしまったら、この貴重な時間が終わってしまうのは間違いない。


 俺はイヤイヤながらという雰囲気を装い、義理の妹を下から見上げる構図でシャッターを切っていく。



  カシャッ

    カシャカシャッ



 スマホを縦にして、足先から制服のスカートの中、頬を染めてはいるが勝ち気なままの表情を1つの構図に収めていく。



「シイナ、左足を少し上げて」


「な、なに、マチポっちの(くせ)に、シィナに命令する気?」


「いい写真を撮る為だ。足の裏が写るように撮ってみたい」


「お姉ちゃんの命令だからって、調子に乗って……」



 普段は俺の言うことなど一切聞かないハズの義妹(シイナ)が俺の指示に従ってポーズを変えるのに、俺は深い感動を、ゾクッと得ていた。


 もちろん、それをこの2人に(さと)られてはいけない。


 義妹(シイナ)も流石の現役グラドルという落ち着きで、こちらが特に指示を出さなくとも、特殊な構図のポージングをこなしてくれた。


 俺は、各ショットにつき2枚ずつ、表情全部Ver.(バージョン)と目を写さない鼻から下のみVer.の組み合わせで素早く撮っていく。



  ピッ カシャ カシャッ

  ピッ カシャシャッ



「マチくん、デキはどう? そろそろ見せてくれるかな」


 ――いや、つい夢中になってしまった。


 俺も、被写体(モデル)になった義妹(シイナ)も、いつの間にか2人とも息が上がっていた……。



「流石ね。腐っても映画監督の息子。いい腕だわ」


「マチポっちのクセに腕あるんだ。お姉ちゃん、シィナにも見せて――――」


「この写真、最高ね。シイナちゃん、めっちゃ色っぽいよ」


「確かに……スマホでこんな写真撮れるなんて、マチポっちプロのカメラマンスキル持ってる?」


「意外に意外、あのお義父さん(丶丶丶丶丶丶丶)の才能をちゃんと受け継いでいるのかもね」



 一応、映画監督の息子としては、あるていど映像や写真の勉強はしていた。

 最近はソッチ(丶丶丶)はサボってしまってたが、役に立ったようだ。



 これで何とか「恥ずかしい写真」をゲットできた――――?



「じぁあ、写真全部アタシのスマホに転送して、っと」


「あっ、お姉ちゃん、シィナもコレとこの写真欲しい」


おけまる(了解)。じゃあ、写真は全部消去~」



 な、なんだと!?



「じぁあ、マチくん。明日はアイツらに言っといて。『オマエらに渡すパンツも見せるパンツもねえ』ってさ」



 本心からおかしいという様子ながらも、ギリギリ笑ってしまうのを堪えている義姉(サヤカ)さん。



「最初からマチポっちを見捨てるつもりだったんだ。流石(さすが)お姉ちゃん。さすオネ!」


「そ、そんな、サヤカさんッ」



  パタン



 義姉(サヤカ)さんの部屋から追い出される俺。


 ハハハ、と2人の楽しげな笑い声が響く。



 この瞬間、手ぶらで学校の不良連中に会わないといけないことが決定的になってしまった。





       7



「それで、イイワケはそんだけか、――よッ」



   ドカーッ ボコーッ


    ズザーッッ



「ぐふぅッ――」



 俺は今、不良連中に絶賛ボコボコにされて、地べたを滑ったり転げたりしているところだ。


 全身はズタボロ、腹部は蹴られ過ぎて痛覚を失ってきている――――



「今日はあの姉妹は学校に来てるか?」


「来ない日です」



 ボス格が下っぱに2人のスケジュールを確認している。

 全部把握してるのか、本格的だな。



「シア太、2人を学校に迎えに来いと呼び出せ」


「俺にはムリだよ。仕事中のハズだから」



   ドゲーーッッ



「げぅっ――――ッ」


「どんなに遅くなってもいいから、来いと言え」


「……」



(あの2人が俺なんかの為に来るハズがない)



 そう諦めていた俺だったが、SNSで連絡すると「すぐソッチに行く」と返事がきた。



「見捨てられずに助かったな。よし。お前ら、(スーパー)芸能人姉妹がココに来るぞ。出迎えの準備だッ」







 それから約3時間後、夜の闇が訪れ始めた頃。

 俺の義姉妹2人が体育館の倉庫に到着する。

 思ったよりもずっと早く、義姉(サヤカ)さんと義妹(シイナ)は駆けつけてくれた。


 芸能人で現役女子高生な2人の安全に比べたら、俺なんてどうでもいいのに。

 今からでも、帰って欲しいくらいなのだが……。



「ガハハ。お前ら、コイツ(シア太)を返して欲しければ、そこで服を脱げ!」



 下品に笑うボス格と手下たち。

 しかし――――



「おい、お前ら何のつもりだ――――ッ!?」



 2人は不良共に臆することなく、ズイズイと地べたに転がる俺の方に向かってくる。



「ふざけんな、コイツがどうなってもいいのかッ」



  ドカッ ドケッ



 俺を何度も蹴り上げるボス格。

 それでも俺に近づく2人。


 気圧される不良たち。

 その彼らの目の前で、今度は義姉(サヤカ)さんの蹴りが炸裂した。



   ドガーッ ドゴーッ


 ――俺に。



「げほッ、げはッ」


「マチくん。仕事中のアタシたちを呼び出すなんて、どういうつもり?」


   ドゲーッ ドゴーーッ



「お、おい、ソイツはお前の義弟(おとうと)だろ……」



 ボス格が引いている。

 フツウ、やっぱり引くよね?


 今度は義妹(シイナ)の強烈蹴りが俺を襲う。



「マチポっち、シィナたちに迷惑かけるなって、シィナ何回もゆったよねッ」


   ドゴンーーッ ボゴンーーーッ



「ひでえ、俺らでもソコまではしないぜ……」



 2人の蹴りが普段よりも激しい気がする。

 だが、当然だろう。

 大切な仕事に穴をあけたのだとしたら、この怒りは納得だ。



「……くはっ……ハァ…………ウグ…………」



 散々蹴り飛ばされた後、義姉(サヤカ)さんが俺の襟の後ろをつかみ引きずり始める――――それは倉庫の出口に向かってだった。



「おいちょっと待て。俺の目は誤魔化せねーぞ。密かにコイツ(シア太)を助けようとしてんじゃねえか――」



 義姉(サヤカ)さんの行動に気づいたボス格が、義姉(サヤカ)さんを止めようとした手が触れた、その瞬間だった。



   バシィーーン! 「グァッ」



 引き摺られながら後ろを見る形となっていた俺の目に映ったのは、ボス格に義妹(シイナ)の長い足がムチのようにしなって、ハイキックがお見舞いされたシーンだった。


 この2人はアクションもこなせる女優を目指しているので、格闘術のレッスンを受けている。

 本当に、見事なハイキックだった……。



(今度は映画用の撮影機で撮りたい)



 思わず、父親譲りの血が騒いでしまうが、今はそれどころではない。

 下っぱたちが倉庫の出口をふさぎにかかる。



「お前ら、このまま帰ってただで済むと思ってるのか!?」

「そうだ、そうだ!」

「ゼッテェ、帰さねーよ!」



「……サヤカさん、シイナ、俺を置いていってくれ。俺がもっと殴られれば、ヤツらの気も済むかもしれない」


「確かにソレでも問題ないかもしれないけど……コイツらをタダで済ませる心算(つもり)もないわ。社長! 入ってきて」



 義姉(サヤカ)さんが何者かに呼び掛けると、屈強そうなな男たちが4、5人倉庫に入ってくる。



「みなさん、後はよろしくお願いしますね」


「ああ、まかせろ」





 ここから以降は俺たちが現場から去った後の出来事であり、俺は後から知った話である――――




「な、なんだぁー、テメエら!?」


「俺らは《一影(イチカゲ) 沙耶花(サヤカ)》《一影(イチカゲ) 詩衣菜(シイナ)》のファンクラブの者だ」


「小僧ども大人しくしろ。痛い目見たくなければな?」


   ドカッ バキッ ドゲシッ


「うわぁーっ」

「い、痛てぇー」

「こ、降参します、ごめんなさいーっ」


「次やったら、警察につき出すからなッ」





       8




 ――後で2人に聞いたトコロによると、彼らは彼女たちの所属する事務所の社長と暴力仕事担当の非正規社員の皆さんとのことだそうだ。


「けしてヤ○ザではないそうなので安心して」と言われたのだが、全然安心出来ないのだが(汗)。


 このご時世、反社会勢力との付き合いは一発アウトなので、絶対にしてはいけない。






「さて、マチくん。もう歩けると思うんだけど?」


「えっ?」



 あれっ。

 何か見抜かれてちゃっている?


 現場から(引きずられて)助け出された俺は、のそのそと立ち上がる。



「やっぱりね。毎日アタシたちに『教育』されてるマチくんが、アイツらの『へなちょこキック』でどうにかなるはずないもんね?」


「だと思った! 毎日シィナとお姉ちゃんに鍛えられてるもんね?」


「……まあ。あれ、くらいなら大丈夫です」



 ――この2人には、どこまで見抜かれてしまっているのか。



「さあ、今日は家に帰ったら、いつもより強力にオシオキしないとね」



 ゾクリ。





       9



 《サヤカ視点》


 アタシと妹のシイナに新しくできた義兄弟(きょうだい)のマチくん。

 彼をひと目見たとき、アタシはなんともいえない嗜虐心(しぎゃくしん)の高まりを感じた。

 それは、子猫に対して感じる「愛しさと同時に苛めたいと感じる気持ち」に似ていた。


 出来るだけマチくんの近くにいたいと感じたアタシは、それまで通っていた芸能人の多く通う学校から、マチくんの通う学校に転校することにした。


 すると、なぜか妹のシイナもアタシについてくるという。

 まあ、いつもアタシにベッタリなお姉ちゃん子だったから仕方なかったかもしれない。


 その時、アタシは初めて、アタシとシイナが現役のアイドルであったことを思い出す。

 アタシたち2人は自分たちに護衛(ボディーガード)を付けるくらいには稼いでいるので、腕利きの護衛を付けることにしたのだった。



 その結果、マチくんが学校でいじめを受けることになっていたとは……。

 アタシたち以外がマチくんをイジめるなんて許せないわ。




   ドガンッ



 アタシの渾身の蹴りが、マチくんのお腹にめり込む。


「ぐは――ッ」


 マチくんの顔がかわいく歪む。



 こう見えて、アタシたちの蹴りは何人も共演者を葬り去っている(誇張表現、せいぜい病院送り)。

 何しろ、香港アクションスターと本場の武術家の直伝、そして且つ、非公式ながら免許皆伝を言い渡されているのだ。


 このアタシの蹴りを何回も耐えられるマチくんの秘密は何だろう。

 アタシは長いこと不思議に思っていた。


 その秘密が今日、解き明かされた。

 マチくんは尋常じゃないほど受け身の技術が半端ないのだろう。

 さっきの学校の不良どもの『へなちょこキック』を喰らって、痛そうに転げ回るのを見て分かった。

 

 完璧に不良の技を受けて、ワザと自分から吹っ飛んでいた。

 さすが、アタシの拳と蹴りを何回も耐えられる男の子だ。


  バシィッ グシャーッ


「ぎゃーッ ぐぁーッ」


 やはり。

 アタシの拳を、蹴りをモロに喰らいながらも、ギリギリのところで威力を受け流している。

 全ての威力を消せてはいないけど、たぶん4分の1位にはダメージを減少できてる。

 見た目はアタシたち2人と違って、まったく(はな)の無い義弟(おとうと)だけど、この技術は本当に見事だわ。



 それにしても、必死な顔でアタシの蹴りを耐えるマチくんが、本当にカワイイ。

 そして、痛みを堪えながらも必死にアタシのスカートの中を何度も盗み見る凡人顔。


 もうダメ。

 アタシ堪えられない。


 マチくんのその顔、アタシ好き。

 とてもゾクゾクするのよ。


  バコーッ ドカーーッ


「痛いッ うわーッ」


  ゾクゾクッ♡


 ああっ、もうガン見してるよーーーっ。

 バレてるんですけどー?

 でも、ゾクゾクするぅ。


 どうしよう、マチくん、ホント好きだよーーーっ。

 





       10



 《シイナ視点》


 シィナとお姉ちゃんに新しくできた義兄弟(きょうだい)のマチポっち。

 マチポっちをひと目見たとき、シィナはマチポっちのことを「めちゃくちゃいじめてあげたい」って思ったんだ。


 凡人顔なんだけど、なぜかかわいい。

 ていうか、お義父(とう)さんにそっくり。


 たぶん、お母さんがお義父(とう)さんを好きになった理由といっしょなんだと思う。

 遺伝子の力(D N A)ってやつ?


 お姉ちゃんが「マチくんの学校に転校する」って言い始めた時は「あっ、お姉ちゃんもなんだ」って、すぐに分かった。

 このままだとお姉ちゃんにマチポっちを取られてしまう未来しか見えなかったから、シィナもすぐお姉ちゃんといっしょに転校すると決めた。



 まさか、学校であんなにイジメを受けていたとはびっくり。

 まあでも、お姉ちゃんに毎日あれだけ可愛がられて平気なマチポっちなら、アレくらいなら全然大丈夫だったと思う。

 気分は良くないけど……。

 アイツらには、今度別で制裁も考えなきゃね……。


 マチポっちはシィナたち家族には隠している「投資」の才能がある。

 シィナにはバレているけど。


 だから、お金を巻き上げられてもマチポっちは困らなかったんだろうと思うけど。

 絶対、許せない。

 慰謝料も上乗せして高額請求してやる!




 あーー、でもでも。

 もしかしたら、あのことバレちゃったかもしんないな。

 お姉ちゃんに。



 あっ、シィナがマチポっちを「本気で好き」なのがバレるのは心配してないよ?


(でも、ソッチがバレるのも、もしかした時間の問題かも……)



   ドゲンッ


「うぎゃっ」



 今、シィナがお姉ちゃんバレを心配しているのは、シィナのマチポっちへの攻撃が、本気じゃない『演技』だってこと。


 だって、お姉ちゃん、いつも本気でマチポっちのこと蹴るんだもん。

 シィナはマチポっちがかわいそうだから、お姉ちゃんにバレないように、演技で本気に見せかけた攻撃をしてるんだ。


 シィナたち姉妹は、香港アクションスターと本場の武術家の直伝の技を受け継いでいる。

 そして、映画女優として一流の殺陣(たて)の技術も習得しているの。



 見て見て! このシィナの本気蹴りに見せ掛けた演技蹴りを!


   パシーーン


「うわーっ」


 演技の本気ハイキックがマチポっちに見事にヒット!

 それを受けて、マチポっちの見事なダメージを喰らった演技!

 この阿吽の呼吸は愛でしょ、もう。



 最後に、体重が乗ってるように見せ掛けたシィナ特性の足裏顔面マッサージ!


 屈辱の表情のマチポっちだけど、チラチラとシィナの足を、太ももを、スカートの奥を盗み見ているのが分かる……。


  ゾクゾクゾクッ♡


 ああっ、足の裏の臭い嗅いじゃってるじゃん、なめちゃってるじゃん!

 スカートの中のパンツもガン見じゃん、もはや!

 もう、この変態義兄(あに)!!



 どうしよう、シィナ、本気で好きになっちゃったかも……。


 お義兄(にい)ちゃんーーーッ。





       11



 うーん……。

 半分バレて、半分はバレていないという感じなのだろうか。

 2人から普段より2、3割位強烈な『わからせ』を喰らいながら、俺は必死に思考を巡らせていた。


 種あかしをすると、俺は幼少期から親父の映画撮影に付き合った結果、「ある程度の攻撃なら完璧に受け流す事が出来る」というスタントマンの技術(スキル)を持っている。


 これで義姉(サヤカ)さんの攻撃を実際にはほとんどダメージを受けていない。

 但し、それだとすぐに義姉(サヤカ)さんにバレてしまうので、4分の1だけはワザとダメージを喰らうようにしているのだ。



 それに対して、義妹(シイナ)の場合はダメージが無い、演技の蹴りだ。

 これは非常に不味い。

 喰らっている演技だけだとすぐに義姉(サヤカ)さんにバレてしまうだろう。


 だから、あえて義姉(サヤカ)さんと同じだけ自分でダメージを作っている。

 これはかなり高い技術力を要するテクニックだ。



 ちなみにここ最近の事だが、この性質がまったく違う2人の攻撃を同時に受けても、それぞれの攻撃に対して全ての対処を完璧にこなせるようになってしまった。



  バコーッ ドカーーッ

    ドゲンッ バシーーン


「ぐわーーーっ」


 2人から同時に顔面へのストレートと足を払うような強烈なローキックを同時に喰らった俺。

 それぞれを見た目の4分の1のダメージになるように、『喰らう演技』と『ダメージを自らに与えるテクニック』を実行する。


 ゴロゴロロッと床を転がり、大の字にノビた演技(フリ)をする。


 その俺の顔のすぐ上に、体を動かしたからか、顔を上気させてマジで色気しか感じない現役(スーパー)アイドル2人が並び立つ。

 俺の顔のそばからそびえ立ち制服のスカートの奥に消えていく、神々しい黒ニーハイ姿の長いおみ足の持ち主は義姉(サヤカ)さん。

 これまた同じく、神聖さ溢れるようにそびえ立った黒タイツに包まれた長いおみ足の持ち主は義妹(シイナ)


 もちろん、スカートの奥はバッチリ見えている。


 ――見事な絶景である。



「マチくん、まだまだイケるよね。全部分かってるんだから」


「えーっ。マチポっち――――お義兄(にい)ちゃんのことはシィナの方がよく知ってるよ。ねぇ、お義兄(にい)ちゃん」



 おい。

 繰り返しになりますが、2人のスカートの奥が、パンツが見えちゃってるんですが。

 特に黒ニーハイ義姉(サヤカ)さんのパンツはダイレクトに見えちゃっているんですが。

 それとも2人は俺にスカートの中を、パンツを見せつけてるんでしょうか。



 ん!?

 今もしかして義妹(シイナ)に、初めて「お義兄(にい)ちゃん」って呼んでもらえた気が!?

 めっちゃ震えるほどウレシイ――



 あ、あれっ、今度は義姉(サヤカ)さんが俺を殺しそうな目を向けているんですががが。

 俺気づかないうちに何かした!?




 あれか。

「自分だけの妹だったのに、コイツに取られちゃった」みたいな感じ?

 自分だけが「お姉ちゃん」って呼ばれる特別感が薄れちゃうから――?





 俺はすぐに立ち上がって義姉(サヤカ)さんをなだめようとしたのだが、気が付いた時には、受け流し不可の強烈な蹴りが目前に迫っていたのだった――――





   フッ





 ――《強制終了(ブラックアウト)》――






 ~fin~








最後までお読みくださりありがとうございますにゃ。

もしよければご指摘、ご感想など頂けますと成長に繋がりますにゃ。



「まあまあ面白かったぜ」という方、

シア太(マチト)義姉(サヤカ)義妹(シイナ)の3人を好きになってくださった方、

ぜひ応援のブクマと評価もお待ちしておりますにゃーん(=゜ω゜=)








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[一言] 最初はなんて可哀想な主人公なんだ!いじめ犯や姉妹許すまじ!! わからせてやれ!と思っていたら主人公のドM告白でえっ?となり最後はみんな幸せなんじゃないか!最初の憤りを返せ!! 主人公爆発しろ…
[良い点] 極振りした癖 最高です笑 ごちそうさまでした (≧▽≦)ノ
[良い点] えーと、世の中「受け」と「攻め」が噛み合ってれば上手くいくというお話? ある意味ハッピーエンドですね! 後、際どい現実世界〔恋愛〕を書きためしてる途中なので、どのくらいまでセーフなのか勉強…
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