第49話 棺桶、女神のサービスを受ける
「そろそろ、女神樹に挨拶に行くとするか」
魔王城を離れて3日。
いちおう魔王が何かの悪あがきをしないかという様子見をしていたが、魔王は変わらずミスリル像として動けぬまま、ひたすら(退屈! 退屈ゥ!)(棺桶ちゃんのバカぁ!!)の思念波を連呼している。
魔力の接続のようなものが二つの棺桶の間に存在し、魂の移動は不可能にしても地下の棺桶の様子はちょっと意識するだけで、手に取るように分かるのだ。
マイアと世界樹が繋がっているようなものだろうか。
魔王の様子が分かるのは安全のためには必要な状態かもしれないが……魔王の愚痴がいつでも聞けますって感じでメリットも何もあったもんじゃない。
あっちの棺桶からの魔力の接続は、女神樹のほうに繋げなおしてもらおう。世界平和のために(建前)。
「そのうち考えるのをやめてくれれば静かになるんだがな」
「は?どういう意味っしょ」
「いやなんでも……とりあえず魔王も動けないし目的は達したと言えるんで、女神樹に説明しないとなって」
魔王の討伐報告。封印という形なんで、約束が違うので人間に戻す事はなりませんとか言われなきゃいいけど。
さすがにそこまで心が狭いとかは無いと思いたい。
「はいよ、了解。いつでも行けるっしょ」
「ドーナもよろしく」
「了解」
キャンプ地とした、深く暗い森の中。
魔王は封印したとはいえ、メルリーネたちに一応の警戒を頼み、マイアに女神樹ネットへの接続を頼む。そういや前も同じような場所で接続したな……
――そして再びやってきた、海中の森のような青い、女神樹ネットの世界。
女神樹に直接話そうと向かうも、レベル制限の壁にぶつかるので結局レベルアップで不正に突破する羽目に。
何かルダちゃんと合言葉的なものを取り決めておけばよかったかね?
まあ今更そんなことを考えても仕方ないので、とりあえず普通に泳いで女神樹本体までたどり着いた。
「もしもーし!? ルダちゃん? 居るー!? 野球しようぜ!」
「ちょ……相変わらず不敬すぎっしょ! ……やきゅうって何?」
「こう呼べっつったのは女神樹本人だぜ……適当なネタは気にするな。
……女神樹の顕現体、顕現しないな」
しばし待ったが、現れる気配もない。
仕方ないので、女神樹を再鑑定し、日記の最新版でも読んで暇つぶしすることにした。
「また恐れ多いプライバシー侵害……! アタシは見ないからね! で、なんて書いてあるの?」
「▼青の月7日。
下着を全部洗ってしまったので今日は下着を着けずに過ごす羽目に。
でもよく考えたら、夢を通して人間の前に降臨したりする日以外は気にすること、ないかも。
むしろ何も着なくてもいいのかも。今度試しにやってみよう」
「……ズボラすぎんしょこの女神!?」
ほんとそれ。
「▼青の月8日。
何も着ずに過ごしてみた。
開放感ある!
これは癖になるかも。むしろ少し興奮s」
「ちょっとぉー!? わたくしの日記を読み上げてるのは誰ですのー!?」
前にもあったなこの流れ……
日記読み上げが女神降臨の儀とか、締まらないにもほどがある。
つか聞こえてるなら最初の呼びかけに応じてくれよ……
そして目の前に女神樹の顕現体が降りてきた。
全裸で。
「うわー!?」
「ちょー!?」
「またあなたたちですの!?うわーって何……きゃわー!!」
自分の姿に気づき、瞬時に消え、またしばらくして今度は以前見た格好で顔を赤らめつつ降りてきた。
素晴らしいドジっ娘女神樹さま、ありがとうございます!ありがとうございます!
「ありがとうございます!」
「エッチマンいい加減にするっしょ!」
「お、お見苦しいところを……その……ごほん。一体何用ですの!?」
もう威厳もあったもんじゃない女神樹の顕現体。
まあ本気になればこちらを一瞬で消し去る程度の力はあるんだろうけど、そういうのを一切感じさせないよなあ。
ともかく、魔王討伐と勇者の魂を取り戻した件を報告する。
■■■
「……というお話だったのさ」
「人ごとのように……? いや! しかし本当に魔王を、封印という形とは言え討伐してしまうとは」
素直に驚くルダちゃん。
「完全に想定外でした。正直侮っていたことを謝罪します。棺桶マンさん」
「フィンです。1万年後にBBA魔王が復活する事にはなりますが、当面魔王の脅威は取り除かれたってことで。
……これで、自分を元の姿に戻していただく件、大丈夫ですよね?」
「それはもう。文句はありませんわ」
安堵する。ルダちゃん心は広かった。
ようやく、棺桶の体から解放されるのだ……!
「それにしても前代未聞の出来事です。勇者以外の者が魔王と戦って封印してしまうなど……!
ミスリル像にしたおかげで魔王自体の影響力もなくなりました。
歴史に残る偉業ですよこれは……しかも棺桶の身という意味不明さ加減」
意味不明にしたのはあんただっつの……
しかし、やったぜ。前代未聞の偉業だと。
人間の身で成し遂げたかったとえばそうだけど、もうこの際棺桶でも構わない。
それくらいの達成感はあるのだ……歴史に残ると言われればなおさら。
ある意味子供のころの夢が叶ったも同然、と言える……
……ここでちょっとした疑問がわいたので、ルダちゃんに聞いてみた。
「……ところで、もし『人間』の勇者だったら魔王を完全に滅することはできたのですか?」
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