第47話 メルリーネ、察する
(ひゃああああああ!)
鉄にされた後、竜巻魔法で魔王城から強制的に脱出、現在空を飛んでいるところ。
二度と経験したくないと思っていたのにこの有様、め、目が回ります……!
しばらくして魔王城から少し離れた平原に落着し、鋼鉄化魔法は時限設定で自動解除。
なんとか動けるように。
「フィンさま……!」
がばっと身を起こし、魔王城のほうを見やる。
特に変化はないみたいですが……
「アイツ、魔王と心中するつもり……!? ……あのバカ……!」
マイアさんも棺桶の破片から体を出して深刻な顔。
ぎりりと歯噛みしている。なんだかんだ言って心配している様子。
心中……その言葉に体に悪寒が走る。
まさか、ここで完全にお別れってことは、ないですよね……?
「……今気づいたけどドーナだけ脱出してないっしょ!? メル、ドーナは近くにいるの!?」
「い、いえ、いません」
「まさか、心中に巻き込んだっての?」
「あの人がそういうことをするような人には思えません。何か考えが……」
(……板っきれを頼むぞ……)
フィンさまの言葉が脳裏をよぎった。
「……もしかして!」
自分の手にある、棺桶の蓋の破片。
最初はマイアさんの依り代を大事にしろ、という意味かと思いましたが!
「回復!」
蓋のかけらに回復魔法をかけます。
はじめは無反応でしたが、かけ続けるうちに徐々に破片から新たな棺桶のパーツが生え始めました。
「……なんだこれ」
木の破片からだんだん棺桶が形作られていく奇妙な様子に、マイアさんが思わずつぶやいています。
しばらくの時間ののち、地面の上に完全な形のフィンさま(のガワ)が出来上がりました。
「メルが棺桶づくりの職人に見えてきたっしょ……一晩どころか一刻でやってくれちゃって」
「……ふう……さすがは世界樹製、ってことでしょうか。驚きの回復能力です」
「しかしなんで棺桶を再生……まさか、アイツここに戻ってくる!?」
「魔王を自分ごと巻き込むやり方で倒したあと、こちらに戻ってくる、という意図で破片を預けたのかと思い……」
コンコンと棺桶をノックするマイア。
……返事はない。ただの棺桶のようだ。
喋りもせず、魔法も使えず。蓋だって自力で開けない――普通の、あたりまえの棺桶。
なぜか、今ではそっちのほうが不自然に思えます……
「おい! こら! 返事しろ! このやろー!」
どかどかと蹴り始めるマイア。
「ちょ、ちょっとマイアさん!?」
「放して! 人をさんざん面倒に巻き込み振り回して……最後はさよならもなし!
そんなんでどっか行っちまうとか許さんっしょ!」
「あなた、泣いて……」
「泣いてない!」
「マイア。泣いてる。珍しい」
「ないってば!……え?」
その聞き覚えのある抑揚のない声。
振り返ると、ドーナがふわふわ浮いていました。
「ドーナさん、無事で!」
「当然。棺桶と勇者の魂。持ってきた」
「い、今なんて!?」
マイアの驚きの声はスルーして、再生したただの棺桶の傍に降り立つドーナ。
その手から光る玉が現れ、すっと棺桶に吸い込まれるように消えていきました。
そして……
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