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第45話 棺桶、覚悟を決める

「ふん」


 バラバラ玉座の所に舞い戻る魔王。

 スキル全開使用でもう動けなくなったミスリルーネを足で「このやろ」と蹴り飛ばす。

 ごろごろと固まったままフィンの足元に、転がってくるメルリーネ。


 ミスリル化の魔法を解き、


「よくやったな! むちゃくちゃ頑張った、魔王無限復活のからくりを見抜いたうえにあの体で動くとは!」


 全力で褒める。


「あ、ありがとうございます! フィンさまの言葉を信じてやり切りました! あの言葉がなければとても……!」


 涙を浮かべてメルリーネが笑顔で答え、抱き着いてきた。


「あたしも。褒めて」

「そうだな! ドーナの飛行能力もなかったらたどり着けない話だった、グッジョブだ!」


 ドーナもその無表情気味の顔にやや嬉しさを浮かべ、頭を擦り付けてきた。ここで人間体だったら二人とも頭なでなでとかしてるような場面かもしれないが、やはり棺桶の体のためにそれは出来ず。まあ気持ちは言葉に全力で込めた。


「あ……あたしもずっとサポートしてるっしょ~?」


 なんだ、マイアも褒められたいのか?


「そうだなーマイアもお疲れだなー」

「なんか扱い軽くない!?」


 マイアとの距離感はこんな感じが良いと思うんだよな。

 まあとりあえず、あとは残機ゼロの魔王を叩くのみだ……!


 魔王に意識を向けると、バラバラになった椅子を拾い集めてる最中だった。


「せ~っかく世界樹で作って魔法付与儀式に膨大な魔力を込めた逸品だったのに……作り直すのが大変だ~」


 などといいつつ、隅に置いてあったごみ箱らしき物の中に椅子の残骸をほいほいと放り込んでいく魔王。


「なんだと? 世界樹で作ったと言ったのか」


 結構聞き捨てならない話じゃないか!?


「そうよ~、あ、こっちの世界の世界樹じゃないの。女神世界樹っていうんだっけ?

 それじゃなくて、魔界の世界樹よ、こっちの世界樹とは裏表の関係かもね」

「そんなものがあるなんて知らなかったっしょ……」

「椅子に加工されても魔界世界樹と繋がってるから、そこから魔力を得て、復活の契約をした私を

 何度でも蘇らせてくれるってわけ」


 世界樹から魔力を得る手法、こちらと同じだったのか。


 ……魔力を自身に引っ張ってこれる俺とはやや差があるけども。


「しかし、もうその復活は使えない。もう死んだら最後だな」

「くふふ。そうでもないよ~?」

「何……!?」


 こちらの認識をまたしてもひっくり返されるようなことをあっさり言われた。

 残機ゼロで無限復活状態は続くってのか……!?


「さっき魔界の本拠地にバラバラの椅子を送ったから」

「魔界に送った……? さっきのごみ箱に入れたのがそうなのか!?」


 ちっちっち、と指を振る魔王。


「ごみ箱じゃないよアレ。魔界とこちらを繋ぐ次元ホール。

 なんで、送られた椅子の破片から何が起こったか察した部下がまた作り直してくれる。

 だからこの後わたしを殺しても、しばらくすれば魔界で復活してまたこっちに戻ってくるよ~」


 ……なんてこった。


 魔王を倒すなんて実質出来ないってことじゃないか。

 ここで一度倒したとしても、結局は戻ってくる。


「あの玉座を完全に消滅させない限り……ってことっしょ……」


 マイアが気落ちした声でつぶやいた。


「いや、消滅させても、魔界で作り直されれば同じことか。魔界まで行けってか?

 つってもごみ箱みたいな次元ホールとやら、小さすぎて入れねえし! もっとでっかく作っておけ!」

「ごめんね~? アレ単なるちょっとした連絡とか小物のやり取り程度の用途なんで。

 あたしたち別にあの箱から行き来してるわけじゃないからね~? こっちに顕現するときは

 割と大規模な魔法陣作る必要があるんだよね~知ってた~?」


 魔王めニヤニヤしながら思うさま煽ってきやがる。


 自身の弱点が別世界にあるようなものだからな……

 心臓が自分の中にはなく、別の場所にあるのでそれを知られない限り無敵、なんて話があったな。

 あれとは違ってこっちはそんな場所に行く手段自体がないと来た……!


「大丈夫大丈夫~。魔界世界樹の枝で作るオーダーメイドの一点もの。作るのにも時間かかるし、

 魔力は尋常じゃない量を込めないとだし、あと1年ちょっとは人間世界が平和になるから良いじゃない」


 良くねえよ。

 こっちには今ここで魔王を討伐しなきゃならない理由があるんだよ。


「あんたらのやるべきことは椅子を破壊することじゃなく、どこかあたしの手の届かないとこに封印することだったね~

 地中ふかーくとか」

「なぜ地中」

「暗いし汚いし……」


 潔癖症かよ。


「私がやった事は無駄だったの……」


メルリーネは床にへたり込み、


「……っ!」


 拳で床石を叩く。

 スキルのせいで拳は深くめり込んだ。


「そ、そんなことないっしょ! 魔王を一時撤退させる羽目に追い込んだだけでも十分っしょ!」

「そうだ、確かに……」


(……そうなんだが。

 魔王は倒すと女神樹に断言してきちまったしなあ、自分が元の体に戻るためにも

 魔王の討伐は必須条件だ……)


 メルリーネが穿った床の穴をなんとはなしに見つめ、考える……


(床、深く……めり込む。……! ……)


「……やはり、そうするしかないか……」


 決意のつぶやき。


「え? 何か言ったしょ?」

「……マイア」

「なに?」

「とりあえず出てってもらおう」

「は!?」

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