第44話 棺桶、気づいて察する
妙な事態に気づいたのは幸運にも俺が最初だった。
「……なんだありゃ。ミスリルーネがじわじわ動いてるぞ」
吹き出すマイア。
「み、妙な名前つけるなっしょ……てかミスリル化してるのに!?動く!?」
「……ドーナか。あの状態でも飛べるというのか」
確かにドーナはが飛行能力を持っていた。
さすがに今は重すぎて、氷の床をゆっくり滑るように移動するくらいしか出来ないみたいだが。
むしろ氷の床だからまだ、かろうじて動けているのかもしれない。
「何か分からんが意図を感じるな。ミスリル化を解いて聞いてみたいが……」
「それは多分マズイ気がするっしょ」
「……だな。とりあえず様子見だ。あれが魔王に気づかれぬようにするぞ」
なるべくミスリルーネが魔王の死角になるべく立ち回る。
放つ魔法も爆炎マシマシだったり、氷の壁で盾を作ると見せかけたり。
何を考えてるのか知らないが、魔王にバレないことを祈る……!
■■■
(もう少し……!)
魔王の椅子まであとちょっとの距離まで来ました。
しかし、その前に壁が立ちふさがる……段差。
玉座は広間の床から一段高くなっている場所にある。
高さ自体は大したことは無く、普通なら足を軽く上げて登っていけるところなのですが……
(あとちょっと高く飛べませんか!?)
(むり。すでに限界。重すぎる。ダイエット希望)
(わ、私は標準体重です! 今がおかしいだけです!)
しかし困ったことになりました。
段差を登ればもう2、3歩というところなのに!
(自分でなんとかしなきゃ……!でもどうすれば……何か特殊なスキルでも使えれば……スキル)
怪力のスキル。
自分にあるものはただそれだけ。
力が強い、それだけ……
でも。
(メルリーネは立派だ。俺が保証する。もっと胸を張って自信をもっていい)
脳裏をよぎるフィンさまの言葉。
(ミスリルの体を動かすほどの力が出せるでしょうか。でも、……やるしか、ない!いや、やれる!私なら!)
(全力でスキルを使ったことは、今までありませんでした。……それをやるのは、……今!!)
(う、ご、い、て、ええええええ!!)
■■■
「(……!? ミスリルーネ像が!?)」
「(動いてるっしょ……!)」
「はっ?! ……しまった! やらせないよ!」
さすがにこの異常事態には魔王も含めた全員が同時に気づくか……しかし!
「やらせないのはこっちのセリフだ!」
魔王の椅子に近づきつつあるメルリーネに向かって、飛んでいこうとする魔王の前面に
巨大な氷の壁を作ってやる。
「ぶっ!?」
思い切り突っ込んで顔面を強打する魔王。
■■■
ミスリルの体をギリギリと軋むような音を立てながら、魔王の玉座にじわじわ接近。
さすがにこんな音を立てれば魔王に気づかれるかもしれませんが、フィンさまがなんとかしてくれると信じて!
今はスキルのパワーで動く、のみ!
――そして、ついに十分な間合いに捉えた……!
腰をやや落とし、両こぶしを胸の横に構えて握り固め……
怪力のスキルを、今、100%中の100%に!!
(セイ!)
玉座に向かってエルフ流近接格闘術、エルフ正拳突き!!
「あ~!?」
魔王の叫びが広間に響き渡り――
■■■
ぐしゃあと言う音と共に、完全に破壊される玉座。粉々だ。
しかしなんだ? 玉座を破壊するのがミスリルーネの目的だったのか?
「……あ~あ、気づいていた者がいるなんて。というかミスリル化してなお動けるって」
常に笑顔を浮かべていたあの魔王が真顔になっている。
何か知らんが、メルリーネが魔王のためにならんことをしでかしたらしい。笑ってやろう。
「フハハハ、何か知らんがざまをみよ。全て計画通り」
「計画通りなのに何か知らんがって言ってどうするっしょマヌケ」
「え~? 玉座に復活の魔法が付与されてる事に気づいたんじゃ? ……あ」
「ここにもマヌケがいたっしょ……」
魔王のうっかりネタばらしに脱力するマイア。
以前の魔王に対する畏怖やら恐怖やらの感情はすっかり拭い去られてしまったようで、成長を感じる。
「なるほど、復活の魔法が付与された魔王の椅子か。……つまりそれがなくなった以上、
もう残機無限という訳にはいかなくなったと」
いや、よくやったぞメルリーネ! 輝いて見えるぜ! ミスリル体のためではなく!
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