第42話 棺桶、フラグを回収する
「そういうセリフは何故かなんとなく不安になるな……
……しかし確実に手ごたえはあった。ビームは魔王を完璧に捉えていた。直後の大爆発。
今、この場に魔王はいない。周囲を鑑定しても破片一つ残っちゃいない」
断言してドッペル棺桶をすべて消す。
マイアが両手を上げて歓喜の声を上げた。
「ま、マジにこの棺桶、やっちまったっしょ……! 驚きの魔王スレイヤー棺桶の誕生っしょ!」
「ほんと、びっくりした~!」
「ですよねー!! ……え?」
今言ったばかりの断言をひっくり返す声がした……
振り向くと、玉座のほうからこっちに歩いてくる、魔王の姿。
案の定、全くの無傷である。
「フ、フラグ高速回収……いやしかし何で? 確かにやったはずなのに……」
「やられはしたよ~。まぶしかった!
でもあたし、死んでも復活できるんで」
なんだって……
スキル『生還』は勇者固有のものじゃなかったのか!?
しかしこんな安っぽい「やったか?」→「やってない」のフラグ回収をしてしまったのが
むやみやたらと悔しい。やられ役が回ってきそうじゃないかよ!
「さーてね。じゃ第二ラウンドと行こうか~?」
■■■
「……これで何体目だっけ」
「16体目っしょ……」
魔王戦は続いている。
ビームで頭部を消し飛ばしても、心臓のあたりにデカい風穴を開けても。
竜巻魔法で魔王本人を巻き込んで、棺桶内部に吸い込み極大火炎魔法で灰になるまで焼き尽くしても。
そのたび大爆発ののちに魔王は蘇った。
いつの間にか何もなかったような顔をして広間に出現している。
そしてまた始まる魔法合戦。
魔王がこちらの繰り出す攻撃魔法を避け、ときおり相殺し。
こちらも魔王の魔法を避け、相殺し、食らってもダメージ軽微。即回復。
たまに魔王がこちらの魔法を食らって爆発するも、即復帰。
――そんな不毛なやり取りがもう1時間ばかり続いていた。
「……きりがねえ! 影武者が大量に用意されてるのか、何か幻でも見せられてるのか……!」
「言ったでしょ~? あたしに『万一は無い』って」
「こういうことか……! 魔法は確かに通じてるというのに。なんにしても、精神的に疲れる、これは。
何度も蘇ってくる勇者と戦った魔王軍も、同じ気分だったのかね……」
思わず愚痴る。
「ちなみに影武者でも幻でもないからね~」
「ご親切にどうも……! 本気で残機無限なのかよ? まさか勇者スキル『生還』持ちなのか!?」
「魔王スキル『復活』とかかもよ~?」
しかし鑑定結果ではそんなスキルも魔法も持ってなかった。
魔王の過去情報、記憶を読もうにも、ドーナにも使ったらしい記憶操作魔法が働いてるのか、意味不明な情報ばかり出てくる。鑑定対策か。自分自身の記憶をめちゃくちゃにしながら普通に戦ってるとは、さすがに魔王。
幻にしては手ごたえがあるし(爆発する)、蘇るごとにこちらの戦略を先読みするようになったりするので影武者も考えにくい……復活する都度、再鑑定してみたが結果は魔王本人としか出ない。
念のため鑑定結果を鑑定しても同じだった。
「じゃあ一体何なんっしょ……左旋回!」
マイアが腕を組んで首をかしげつつ方向指示。
ぐるっと左旋回して柱を回り込み魔王の雷撃をかわす。
「しかしこの状態、単なる膠着だし不毛がすぎる。
ドーナの時と同じで魔力切れを狙ってるのか? まあ今ではこちらの魔力は無尽蔵なんだが、なっと!」
氷魔法で床から飛び出すつららを連続生成し魔王をけん制しつつ、2度も同じ戦術は通用しないんじゃいとばかりに自信たっぷりに言い切ったところ、なぜかマイアがビクッとしたのち、恐る恐ると言った感じで切り出した。
「……それで言い忘れてた話があったっしょ」
「ん?……おうっ」
ここで魔王の極大火炎魔法をもろに浴び、吹っ飛んで壁に埋まる俺たち。
埋まりつつも回復魔法で微ダメは元に戻る。
その様子を見て魔王も埒が明かないと思ったのか、手を休めて考えるポーズ。
違う戦術を検討しているのか……
「それで、なんだ? 言い忘れた話って」
「あー……その。魔王城に入ってから、世界女神樹との魔力経路が途切れてる、っしょ。
……魔力補充、全く出来てない」
目は泳ぎまくり、汗かきまくりで重大情報を告白するマイア。
「……マジで?」
「マジで。何か結界があるんだと思うしょ」
「なぜに今頃言うー!?」
「いや、この広間に入った時に言おうとしたけど、魔王の横やりが入って、
そんでうやむやになって今まで忘れてたっしょ……」
そういや何かあの時言いかけてた気はする……
確かにその後状況はゴタゴタしたかもだが……
「なので魔力は無尽蔵じゃないっしょ。てへぺろ」
てへぺろするマイア。
しかし女神樹に相対した時くらいにはビビってる様子が見て取れた。
目を伏せ、両手を組んでぐねぐねやっている。かなりの深刻モードだ。
なんせ魔王戦の途中で魔力切れますよって話だからな……。
しかし。
「てへぺろじゃねえよ……仕方ないな、プランBと行くか」
「……あ、あれ? めっちゃ怒るかと思った……気でも触れたっしょ?」
「今の一言のほうが腹立つわ! 実はこういうこともあろうかと、女神樹から引き出し続けた魔力を
異次元収納にしまっておいてあるのだ」
例によって見えないドヤ顔の俺。
「ま、マジでー!?」
「前に、魔力は満タンでも女神樹からは魔力をずっと引き出し続けろ、って言っただろ?
それはこういうときのためだった」
目を見開くマイア。
そして心底ほっとしたようだった。
「用意周到っしょ……! 時々本気で感心するわ、アンタ」
「まあ女神樹の怒りを買って魔力供給が途絶えたりしたら、自分は活動不能になるからな。
そうならないためにも、魔力の貯蔵は前々から考えてたわけだ。結局、供給は女神樹だよりに
なってるのが現状だけど」
魔力吸収スキルでもあれば女神樹に頼らなくてもいいんだが……飛べなかったり吸えなかったり
つくづく痒い所に手が届かないのが、この世界の勇者スキルのようで。
女神樹の協力を得られて本当に良かった。誠実な交渉の成果だ(まだ言う)。
「ということで、このまま全力魔法合戦しても、自分はあと10年は戦えるくらいの魔力はあるんで安心せよ」
「10年もやってられんっしょこんなこと……あと、プランBなんてのがあるならアタシにも話しとくっしょ!
なぜに今頃言うー!?」
マイアの軽口も復活して、閉塞感のある雰囲気も解けた感じだ。
実際は何も解決してないのだが、何かが変わる事を期待して出来ることを続けるしかないな……!
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