第40話 棺桶、人形を釣る
慌てて鋼鉄化をかけるが、その蹴りは鉄と化した蓋を突き破り――棺桶内部まで達した。
「うげっーー!!」
蹴りの衝撃で後ろの壁まで吹っ飛ばされてしまった。
蓋は真ん中に穴が開き蝶番も破壊され、ひしゃげて棺桶本体から外れ床に落ちてガランガランと音を立てる。
中身が丸見えの棺桶になってしまった。いやん。
「身体強化系には身体強化系だね~。速度アップ、足先硬度アップ。
もともと強化してない状態で互角なんだから、強化かけたらそうなるに決まってる。
私の自動人形は優秀です、ってね」
魔王が得意げにふふんと鼻を鳴らす。
「! …………!!」
「だ、大丈夫っしょ?生きてるっしょ!?」
「……問題ない。生きてはいるけど……」
これが生身だったら完全に死んでるな。
初めて棺桶の身に感謝したかもしれん……!
なにせ内臓も何もないから貫かれたところで致命傷にはならない。痛みは感じはするものの。
――しかし、さっきの魔王のセリフ……
鋼鉄化を解き、回復魔法を自身にかける。
たちまち蓋は再生され、元の閉じた棺桶に戻った。
「ありゃ? 棺桶から蓋が生えちゃった。完全回復?粉みじんにしないとダメ系なのかな~」
「……いや、もう一度同じ攻撃を食らったらヤバイな!」
「え? そうなの!? ちょっと……どうするっしょ!!」
慌てふためくマイア。
間髪入れずベロニカが滑るように走って突進してきた。
そして体を回転させ、再びあの必殺のオーラ蹴りが飛んでくる!
「ぎょえーーっっ!!」
マイアが間抜けな悲鳴を上げる……!
……が今度は棺桶の蓋は突き破られず、逆にベロニカの足がぐしゃぐしゃに砕けてしまった。
足を一本根元から失ったベロニカは突進の勢いのまま自分に一度ぶつかり、少し跳ね返って魔王の間の床に転がった。
「えええ……あれ? なんで?」
マイアが目をぱちくりさせる。
「鋼鉄化の魔法自体にレベルアップの魔法をかけて、変化できる材質を鉄からミスリルに格上げした」
「ミスリル! 確かに鉄以上の硬度の代表格っしょ。んなことできたの」
「自身にレベルアップ魔法はかけられないが、こういう応用は出来る。
強化系には、強化系って魔王様も言ってたぜ」
例によって誰にも見えない自分のドヤ顔。
「ありゃ~。なんかわざとらしいなと思った『もう一度同じ攻撃を食らったら……』ってセリフは釣りだったのね。
さすがに自動人形だとそこまで思い至れないか~」
魔王が椅子のひじ掛けをぱちんと叩く。しかし全く悔しそうな表情ではない。
「釣りなら釣りってなんでアタシに言っとかない! マジ焦ったっしょ」
「言ったらバレるだろうが……」
「いやー、今回のはけっこー良い感じに作れたと思ったのにな~」
と、魔王が床に転がったベロニカのそばまで歩み寄ってきた。
機能不全を起こしたのか、ガクガクと揺れながら許しを請うように魔王に手を伸ばすベロニカ。
しかし魔王は、
「おっつかれさん」
などと言いつつ人差し指と中指でVを作ったと思うと、ベロニカの両目に突きつけ黒い閃光を打ち込んだ。
ガクリと動かなくなるベロニカ。
「両目が弱点。頭脳部分まで攻撃が届いちゃう。
体は鉄でも、ここはどうしてもそこまで硬くない素材じゃないと、周囲を見る事が出来なくてダメだったのよね~」
ころころと笑いながら言う。
「おいおい……味方だろ……」
「失敗作だし。次はもっとうまく人間を作るよ」
「……胸糞悪いっしょ。
人間も何もかもただの道具くらいにしか思ってなさそうだし、その道具も大事にする概念がなさそうっしょ」
マイアがこれ以上はないくらい顔をしかめた。
道具に宿る精霊としては、道具を大事にしない奴は不倶戴天の敵なのかもしれない。
まあ魔王と名乗るような奴に、まともな心があるようなイメージはないけども。
しかし、
「この子はまだ道具だけど、そのうち人間にしてこの世界を満たしてやるもん。
たくさんの人間が皆仲良く暮らせる平和な世界。それがあたしの夢だから」
「……!?」
なんとこの魔王、夢とか言い出した。
だがしかしちょっと意味が分からない……人間の平和な世界、だと?
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