第39話 棺桶、自動人形とバトる
「目的には二つ。勇者の魂を取り戻しに。そしてあんたの討伐だ」
「勇者の魂……? ああ、あのインテリアにしたやつ。これ~」
そう言って魔王は玉座の斜め後ろにあるものを指さした。
人の背丈ほどもある巨大クラゲのような置物だ。ぼんやりと青く光っている。
「いい輝きでしょ。そういえば、棺桶のあんたも似たような輝きの魂、持ってるね?
勇者と同じタイプの来訪者だったのかあ。勇者にもいろんな姿かたちがあるのね、面白い~」
「面白がるな。これでも人間なんだ。棺桶の姿なのは世界女神樹の失態だ」
この失態はいろんな人に語り継いでいきたい。
「……女神樹といえばっしょ、」
「女神樹の失態? そーなの? 面白そうな話! ……でもその前に……」
と、ここで少し魔王の圧が増した。
マイアが何か言いたげだったが割り込まれてしまい、そのうえ魔王の圧は
この場で今喋ってよいのは自分一人である、という強権を余裕で通す威力があった。
「……ドーナ? なんでそっち居るの?」
ドーナが直立不動の姿勢で地上3センチほどぴょんこと飛び上がる。
「ま。魔王……様に。聞きたい話が。あって……その」
ガクガク震えながらなんとか声を絞り出すドーナ。
あのいつも無表情気味で落ち着いたドーナが、こんな反応をしめすとは。
「おかしな記憶を刷り込んだ話についてだ」
助け舟を出す。
魔王のパワハラ圧に話をごまかされないようにしなければ。
「……ああ。あの話ね……当然、嘘だよ~。なんでバレちったか」
駆け引きもくそも無くあっさりと認めやがった。
話が早くて助かるが、結局ドーナが味方だろうが敵だろうがどうでもいいという事なのか……
「じゃ。ま。魔王……様は。だ。だ。騙して……」
もうドーナはしどろもどろだ。
色々な感情がぐちゃぐちゃになっているんだろう。
――魔王に偽の記憶を刷り込まれ、思い出を台無しにされ。
人間に敵対するように動かされ、いままで何人の命を奪ってきたのか。
その背中をメルリーネがそっと抱きしめる。
「大丈夫、大丈夫だから……」
「そうだ。ドーナは何も悪くない。すべての元凶は、魔王なんだ。
歪みの原因を断って、何もかもを元に戻そう。俺たちが味方に、助けになるからさ」
「そうっしょそうっしょ」
皆でやさしく声をかける。ドーナの目に涙があふれてきた。
「はい、うっざーい」
いきなり魔王がドーナを指さしたかと思うとその指先から黒い閃光が走った。
その閃光はメルリーネごとドーナを貫ぬき……はしなかった。
危うい所だったが、二人への鋼鉄化魔法が間に合ったのだ。
ばちんと魔王ビームは弾かれる。
「っとお! やらせんぞ魔王。空気読め」
「ちぇっ、良い反応。じゃあもういいや。茶番はおしまい、あの棺桶やっちゃって」
魔王がぱちんと指を鳴らし、傍に控えてる人影に命じた。
傍に控えていた人影がゆらりと動く。
全身を赤いラインの入った黒タイツに包み、肩までの蒼い髪。
首には太い石のような首輪をつけている。目の光彩はなく、全くの無表情だ。
「直属護衛長ベロニカ。参ります」
言うなり、飛び蹴りで突っ込んできた! 行動が早い!
鋼鉄化を自身にかけて耐えたが、ズズッと数センチほど衝撃で後ろにずらされる。
なんて蹴りだ……!
ガデールは続けざま蹴りの連撃を浴びせてくる。
「鉄を蹴って平気なのこの子……!?」
マイアが驚きの声を上げた。
こんな硬くて重量のある四角いものを右から左から蹴りまくるとか、並の人間ならかえって自分の足にダメージが行きそうなものだが、当人は何事もないかのように蹴りの猛攻を緩めない。
「コイツ自身も鉄かなんかで出来てるとしか思えないっしょ……!」
ひとしきり蹴りを叩きこんだものの、こちらが全くのノーダメージの様子を見て取ってかベロニカはいったんバックステップで間合いを取り直した。
その隙にいったん鋼鉄化を解き、鑑定魔法をベロニカに。
「名前:ベロニカ・フォーマー。職業:魔王直属護衛長。レベル:85。上から80・57・80」
「状況わきまえろかんおけ!」
「お、お約束で……ん、種族:オートマタ!?材質:ヴェルデニウム。なんだこの素材」
「アタシも知らんっしょ。つかやっぱり人間じゃなかったのね」
未知の材質のオートマタと来たか。
ゴーレム的な、自律式の人形だったっけ。
「正解、この子はオートマタ。魔界の鋼、ヴェルデニウムで作った自動人形だよ~。
ちょうど人間界の鋼鉄と同じくらいの強度かな?」
魔王が親切に補足してくれた。
だとすると、こちらの魔法で通用するのは棺桶ビームくらいってところか?
極大系火炎魔法でも当て続ければ溶かせないことはないが……
しかしあれほど素早く動く相手に当てられるようなものじゃない。
そもそも棺担ぎのメルリーネが今は鉄像になってて(したのは自分だが)動くこともままならないのだ。
「動かずに攻撃をする方法か、逆に自力で動く方法を考えなければ……」
「今更自力でとか、メルに頼り切りだからこうなるっしょ!動かずに攻撃ってどうするっしょ!」
「うるせー箱入り精霊もなんか考えれ!」
とかやってると、ベロニカがさらに間合いを取り、やや後ろを向いて気合を入れるかのような姿勢になっている。
やっべ次の攻撃がくる……! いや今がビームを当てる好機か? 射線的に魔王ごとやれないか?
一瞬の迷いが命取り。
ベロニカのオーラをまとった後ろ突き蹴りがすさまじい速度で飛んできた。
「!?」
お読みいただきありがとうございます!
「面白かった」「続きが気になる」「興味ある」と思ってくださった方、
下のほうにある☆☆☆☆☆で評価をお願いいたします。
☆一つからでも構いませんのでどうぞ採点してやってください。
ブックマークもいただけたなら更なる励みになります。
何卒よろしくお願いいたします。




