第37話 棺桶、空を飛ぶ
「竜巻魔法で空を飛ぶ!?」
素っ頓狂な声を上げるマイア。
どうやって空を飛ぶか、その方法について皆に解説したところ、予想通りなリアクションが返ってきた。
要は、魔法で作った竜巻に自分達を上空高く巻き上げてもらう、というアイデアなのだが。
「とんでもない飛び方っしょ……あ、シャレじゃないからね!?
そういや、以前オーガをそうやって空高く飛ばしてたこともあったっけ」
「つまり、私たちもフィンさまの中に入ったまま飛ぶ、ということですか……?」
そういうこと。
当然、棺桶とメルリーネを合わせた重量を飛ばせるくらいデカイ竜巻を作る必要があるが。
マイアは『場』に引っ込んでもらえば重量考えなくていいし、ドーナも人形化してもらえば軽いもんである。
「なにそれ。こわい」
まあ、自然災害に飛ばされるのと自力で飛ぶのは違うわな……
「ドーナは別行動で飛んできてもらってもいいけど」
「いや。面白そう」
どっちじゃい。
「極まれに、自然現象の竜巻に人が巻き込まれる話聞くケド……だいたいそのまま行方不明か墜落死っしょ」
普通はそうなるよな……
しかしこのフィンにはアイデアがあるぜっ。
「バリアを越えて落下し始めたら全員を鋼鉄化する。そうすりゃ無事に城に着陸できるはずだ」
「こっわ! タイミング次第では全員粉微塵になるっしょ!」
確かに、ぶっつけ本番でやるには危なすぎる作戦ではある。
「んじゃ、いったん魔王城を離れて、竜巻に巻き込まれる練習でもするか……」
「そんな恐ろしい練習、アンタ一人でやってよね!」
「いいけど、マイアはどっちみち俺と一緒に行動せざるを得ないんじゃないか?」
「そうだった……! この腐れかんおけに宿ったのが身の破滅っしょ……」
マイアにはあきらめてもらい、いったん魔王城を離れる。
城からは何度も竜巻が発生しては消える、というのが見えるかもしれないが怪しまず誰も調べに来ませんように……
――それから半日ほどかけて練習を行った。
ドーナにそばを飛んでもらって、飛び上がれる高さを検証。
竜巻を消すタイミングから鋼鉄化の流れの実践。
何とか感覚を掴めた頃、当然ながら怪しい竜巻を調べに魔王軍の偵察隊がやってきたが、ドーナが察知してくれたおかげで地中に潜ってやり過ごすことが出来た。
ここら辺は土壌が汚染されてなくて助かった。
魔王軍の偵察隊が去った後、地表へ浮上。蓋を開いてメルリーネを出してやる。
ドーナが空からふわりと降り立ち、「ゾンビエルフ」などとつぶやいた。
「……ふう。よし、次は本番だ。いける、いけるぞマイア」
「……(無)」
何度も空中に放り出され、落下を繰り返すうちにマイアは無になってしまった。
……このままのほうが、本番も静かに行えるかもしれない(酷)
「お疲れさまでした。何かお手伝いできれば良かったのですが……」
出番のなかったメルリーネがまた不満げだ。
なんせ上空から鉄の棺桶が何度も降ってくる事になるので、地上にいる間はメルリーネが危険だということでまた鉄の像になってもらっていたのだ。
「すまないな、魔王城に突入してからいろいろと頼むよ」
「はあい」
よし、これで準備は完了だ。
流れとしては、全員自分の中に入ってもらい、最大級の竜巻魔法を移動方向を指定して発動。
うまく自分たちを巻き込んでもらって魔王城の上空へすっ飛ぶ。クリスタルの円を越えたあたりで竜巻は消滅。
そして全員鋼鉄化して落下。城の天井ぶち破りながら無事着地する、といったところだ。
「城上空は警戒されてるかもだけど、相手が竜巻ならいきなり攻撃もしてこないだろう。
なんせ自然災害だからな」
思い切り不自然な発生にはなるけど……
――ともあれ、再び魔王城が見える丘まで戻ってきた。
ようやくというかいよいよというか。本番である。決戦である。
「さあ、いくぞみんな」
「……はっ? ここはどこっしょ? アタシ、生きてる……!?」
マイアが無から戻ってきた。
「大丈夫ですよ。今から魔王城に突入するところですから」
「全然大丈夫そうじゃない状況っしょ!? 突入、ってことは……?」
「飛ぶ。いいタイミングで戻ってきた。楽しもう」
「ぎゃあああああ!?」
錯乱しだすマイア。静かな本番は無理だったか。
「いい加減落ち着け。練習もしたし、大丈夫だ。心配ない。
それより巨大な鉄の塊が頭上から降ってくることになる魔王の心配をしようぜ」
「するかあ!」
場が和んだところで作戦開始。
ドーナは人形化してメルリーネに抱えてもらい、マイアは棺桶の『場』へ引っ込んでもらう。
「竜巻魔法……発射」
目の前に最大級の竜巻を発生させる――そこから少し進んだのちぐるっと回って、後ろから俺を巻き込みつつ魔王城へと向かうルートを設定した。クリスタルの円を超えたところで消える時限式竜巻だ。
ごうごうと響く音を立てながら、灰色の巨大竜巻が周りの物をすべてをなぎ倒し吹っ飛ばしつつ、移動を開始した……ゆっくりと弧を描いて、棺桶の後ろへ。
「竜巻に回り込まれてしまったっしょ……!」
「回り込ませてるんだよ」
トンチキなやり取りをしてる間にもゴゴゴゴと近づいてくる巨大竜巻。
(うう、後ろからすごい音が迫ってきますぅ……!)
(こわい。わくわく)
(……無無無)
マイアは再び無の境地に入ろうとし、棺桶内部ではメルリーネとドーナが震えながら(一方は楽しみつつ)その時を待つ。
待つものには長く感じられる時間をかけながら、巨大竜巻がじわじわと近づいて来て……
そして俺の、棺桶の体がふわりと浮いた……!
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