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第35話 棺桶、再び温泉回を堪能する

「――という話だったのさ」


 もうだいぶ夜も更けた森の中。

 キャンプ地に戻ってきた俺とマイア(の魂)。

 ようやく女神樹ネットでの出来事の説明を終えたところである。


 女神相手に啖呵を切ってきたということで、メルリーネは「感服しました」と拍手しドーナもちいさくぱちぱちやっている。


「いやもう疲れ果てたっしょ……今日はもう寝る」


 とかなり憔悴した感じのマイアは早々に棺桶の中に引っ込んだ。


 まあ自分も死罪宣言で結構焦ったといえば焦ったしな。


 魔王討伐宣言の後、レベル偽装や日記盗み読みについてはまだ何か言いたげなルダちゃんだったが、誠意ある説得が功を奏し、どちらも不問にしてくれた。

 これまで通り、魔力引き出しについても好きにしてくれて良いという言葉も引き出せた。


「……人間の魂を棺桶に封じて放置したり、最近投げやり気味になってた事を

 下級精霊でも閲覧できる掲示板に書かれたりしたらヤバイですよね……?世界樹が炎上とかシャレにもならんすよ」


 まさに誠意。恫喝ではない。


 マイアには女神樹ネットからログアウト(ネットからの離脱をこう言うらしい)しようという時に

「あまりにも不敬すぎっしょ!!」などと言われたが、こっちもだいぶ理不尽な目にあってるわけで……

 ちょっとはその件を利用したって良いじゃないか。


 ――森を抜ければもう魔王の城まで馬車で3日というところ。

 このキャンプが最後にリラックスできる機会かもしれないな。


「また露天風呂、作るか?」


 唐突に提案する。


「魔王だって王に違いない。王に謁見するなら、身なりを綺麗にしておかなきゃな」

「いいですね! 賛成です!」

「ろてんぶろ。とは?」

「……露天風呂やるならアタシも入るー」


 喜ぶメルリーネ、露天風呂を知らないらしいドーナ。

 まだ寝てなかったマイアもずるりと棺桶から這い出して来た。


 とりあえず周囲に敵も居なさそうだし、久々の温泉回だ。


 前やったように土塊操作で広く浅めに穴を穿って、氷魔法で穴を埋め、炎魔法で溶かしつついい感じの温度に調整。

 特に効能のない、ただのお湯が張られた露天風呂が出来上がる。


 例によって自分には視界を隠すための布がかけられ、女性陣は衣服を脱ぎ湯船に入っていった。


「また布か……最後かもしれないだろ? だから全部見ておきたいんですけど」

「うるさいっしょ。風呂はありがたく頂戴するケド、そういうとこでプラマイゼロっしょ」


 マイアがお湯をすくって飛ばしてくる。うむ、適温。


「これが。露天風呂。気持ちいい……」

「でしょう! ほら肩までつかって。あったまりますよ」


 ドーナも初めての露天風呂、堪能しているようだ。


「ふふ、ドーナちゃん目を細めて猫みたいですね」

「ぶくぶく……」

「マイアさん!? 眠っちゃダメですよ、沈んじゃいます。死にます」


 マイアはお疲れのようだな。

 精霊は窒息死とかないだろうけど、頭まで潜るのはマナー違反だぞ。


「ほらほら起きてください」

「眠い……あれ……何か肉まんがある……む、この肉まん、取れないっしょ……」

「そ、それは肉まんじゃありません!!」


 なんか素敵な光景が繰り広げられてそうだ……


 事実を確認するべく、こっそり蓋を開いて布の一部を極小の炎魔法で焼き、穴をあけようとしたけど速効バレて蹴りを入れられました。眠いくせになんでそういうのは気づくんだよ……


「……ここまで来たうえで、今頃って感じなんだが……魔王ってどんな奴なんだ?」


 ドーナに聞いてみる。

 女神樹ネットでも魔王について一応調べたことはあるが、詳細は不明のままだった。

 しかし今、魔将三傑の一人がここにいるのだ。


「見た目。人間の。女の子」


 え、マジでか。女子魔王とは思わなかった。

 しかしこの際だ、ドーナから色々情報を聞き出しておこう。

 敵を知り自分を知れば、ってやつである。


「それ以外。良く知らない」


 百戦危ういかも。


「わたしに人間の体を与えて。変な記憶を植え付けて。

 人間を憎むよう。説得された気がする。魂を奪う能力をくれて。そして三傑の地位につけられて……」


 ここでドーナが頭痛がするかのように頭に手をやり、


「変な記憶。正しい記憶。ごっちゃになって。ちょっとぼんやりしてくる。ごめんなさい」


 うーん、それなら仕方ないか。

 そもそも魔王の実力なんて実際戦ったものでないと分からないだろうし、人間との戦いに直接出向いてくるのは三傑とその配下くらいだったもんな。


「こっちこそすまんドーナ。せっかくリラックスするはずなのに嫌な気分にさせちまったな。

 ゆっくりしてくれ」


 魔王の実力はもう、実際会って確かめるしかないか。

 三傑に能力を分け与えてる今が、チャンスのはずなんだ。


「ドーナ、大丈夫っしょ?おっぱい揉む?メルリーネの」

「な、なんで私のなんです!?」

「もむ」

「ちょっと何言ってるんですかドーナさーん!?」


 その後しばらくメルリーネの悲鳴が続いた……



 そんなこんなで皆で露天風呂を堪能、魔王との決戦前にリラックスできたようだった。


 後から俺も、バスタオル姿のメルリーネに隅々まで綺麗にしてもらう。

 これはこれで何とも言えない悦楽である……


 ――てとこでお休みの時間。


 メルリーネはいつものように、俺の中にリネンを敷布団代わりにひいて横になった。

 マイアも依り代の『場』に入ってすでに就寝中。


 ドーナは人間モードから人形モードになってメルリーネの腕に抱かれる形に。

 魔王に力を与えられて人間体になったドーナは、自在に元の人形にも戻れるのである。


 棺桶の中に二人はさすがに入れないので、これは便利な能力だ。


「さて自分も寝るか……」


 身体強化の魔法で自身を鉄の棺桶と化し、念のための守りを固めて眠りにつく……

 ……が、なかなか眠れない。


「そろそろこの旅も終わりが近づいてるからかな」


 こういうとき自分が人間体なら、キャンプをそっと抜けて思いに浸っているとヒロインが一人やってきて、いい感じの会話をするのが定番なんだろうけど……


 そういうのがやりたくても出来ないこの棺桶の体である。

 そもそも全ヒロインが自分の中に居るって状況だからな……

 一切触れられず手出しも出来ず、なんとも健全なハーレムであることだ。


 しかし早いとこ魔王を倒して妹を救わねば。

 そうすればちゃんとした人間の体になれる……


(……そうなったら、みんなとは、どうなるんだろう)


 いかん、余計眠れないような事を考えるハメになってしまった。

 どうするかはその時が来たら考えればいい……

 さっさと寝よう。寝返りも出来ない体、いい加減に終わらせたい。

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