第33話 棺桶、棺桶マンになる
マイアの魂がガクガクと震えだしたのが感じられる。
まずい、実にまずい。
だがここで死ぬわけにはいかない……
「というかどうやって日記を読んだんですか。これは自分にしか扱えない情報だったはず……
あなたたちは一体何者なんですか?」
おっと、死刑になる前に釈明の余地は与えられたみたいだ。
そしてこれは逆転のチャンス。
ということで、今までの経緯を説明する。
偽っても無駄だろうし包み隠さず正直に。
――女神樹の精霊と同調し、レベル偽装してこのネットに潜り込んだこと。
さらなるレベルアップの重ね掛けと鑑定スキルによる日記の閲覧。
自分は世界女神樹の儀式がらみで棺桶に封じられたこと。そして放置されたこと……
一切合切を話してやった。
そしてあえて話の最後のほうで世界女神樹のミスを指摘する。
すべての流れの原因がルダちゃんにあることを印象付けるためだ。
「…………」
そして狙い通り、黙ってしまう世界女神樹の顕現体。
「あー……そんなこともあった……ですか?」
そして両手をもみしぼりながら、目を泳がせ始める世界女神樹の顕現体。
よし流れはこっちに来た!
「俺の魂をなぜ棺桶に封じたのか、そしてなぜ長いこと放置していたのか。
その意図をぜひ聞かせていただきたくまかりこしましてございます」
最終的に質問に質問で返す形になったが、顕現体の人はさすがに世界規模の責任ある地位の人間……いや神。
人間の味方と言い切ってる以上、俺をこれ以上ないがしろには出来ないはず……!
「意図は……意図……」
しばらく汗を飛ばしながらきょろきょろしていた女神だったが、どうにも言い逃れ出来ないと悟ったのか最終的には涙目になって両手を合わせ、
「……ごめんなさぁーいわすれてましたぁーーー!!」
やっぱりかあああああ!
「勇者選別の儀式、その時地上にいる人間すべての魂を走査、検索して勇者の器を見つけるんですが、
そのタイミングとあなたの死が完璧に重なって……選別の結果の正確性が失われたかもしれなくて……
だから一時保管して後で調べようと思ってたら……」
見事に忘れたと。そしてなぜに保管場所が棺桶なのか!?
「棺桶だったのはその時近くにわたくしの力が馴染む素材があっただけの話ですーーー!
大・変・申し訳ありませんでしたーーー!!」
平謝りモードに。
よし死罪回避アンドすべての謎は解けた!
結局その程度の話かい、ってとこだけども……しかしまあ最終的には、この世界の神レベルのお方に貸しを作ったようなものだ。
余裕が出てきたので、顕現体そのものに鑑定かけて女神のパラメータを確認する。
数値は92、56、89。すごい。
「このたゆんたゆんな顕現体の人をどうにでも出来そうな流れをつかんだわけだ、ふっふっふ」
うっかり心の声が漏れだしてしまった。
「このエッチマンが」
もう大丈夫そうと分かったマイアが突っ込んでくる。
そ、そういう意味で言ったんじゃない……!
邪心は積もった塵程度しかない……!
ややあって、平謝りモードから通常モードに立ち直ったルダちゃん。
こちらに向き直り、
「ところでエッチマンさん」
「棺桶のフィンです」
「棺桶マンさん。勇者の力に目覚めたとのことですが……それは本当なのですか?
自分を勇者だと思い込んでいる一般人なのではないですか?」
なんだ棺桶マンて!
つか思い切り疑われてる……どころか頭のおかしい人扱いじゃないか。
「実際、勇者専用の魔法とスキルを使ってここまで来たんですが?」
「しかし、あなたは勇者選別儀式にヒットした人ではありませんよね……普通、器のない者には
勇者の力が発動することはありえないのですが」
「だから妹の血で……」
「うーん……条件は揃ってるとは言えますが……」
納得いかない感じで首をかしげているルダちゃん。
「二度目の選別儀式の時、あなたは死んでいた。もしかしたら、選別儀式による走査にかからなかっただけで、
実は器持ちとかの可能性があるかもしれません」
これは思ってもみない発想だった。
「マジですか?! ……でも最初の選別儀式では自分は引っかからなかったのでは?」
「後から器の才能に目覚めたのかもしれません。今から直接、わたくしの目であなたの魂、精査させていただきますわ」
うおお……緊張するな。
もしこれで実は勇者の器持ちであることが判明したら、俺、正式に勇者じゃん!
子供のころの夢がかなっちゃうじゃん! めっちゃドキドキしてきたぞ……あと人間になれれば完璧だ!
「……精査の結果が出ました」
「おおお、で、どうでした……?」
「……」
「……?ルダ……ちゃん?さん?」
「……」
「……めっちゃ引っ張りますね! はよ言ってください!」
「……だめー!」
指でバッテンを作られた。
さんざんじらしといてそれかーい!!
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