第32話 棺桶、女神のプライバシーを侵害する
「……女神樹の日記だこれ?」
「……日記!? いや聞こえないんだったアタシ。日記って?」
聞こえないといいつつ興味津々なマイア。
あかんとは思いつつ、人の日記ではあるが読み上げてみる。
「▼赤の月12日。
夜、天界神と魔界神と運命のダイス遊びをやった。
天界神のやつがめっちゃツキが良くて、イカサマを疑うなど。ばかにしないで」
「▼橙の月1日。
今日はうれしい日。おやつのアイスクリームがおいしかったから」
「……ただの日記ね」
「……ただの日記だ」
ええい重要な情報はやっぱりないのか!? 焦ってページをぺらぺらめくり、
なんとかそれっぽい記述を探してみる。
「▼黄の月5日。
最悪の事態。勇者の魂が魔王に取られた。ありえない。
安全設計機構が起動しない。外部からの干渉しか考えられない。
この勇者は死んだも同然。一刻も早く次の勇者を選別しないと」
む、これは……!妹が魂を取られた日のことか。あきらめ早すぎて腹立つな。
もうちょっと前の日記を見てみる。
「▼緑の月5日。
魔王の勢力と膠着状態が続くのは良くない。勇者選別儀式の実行を決意する」
この儀式の結果、妹が選ばれたやつか。
んで首都正教会の人間にお告げをして、その結果俺のいた村に使者が来て妹が召し抱えられていったわけだ。
「▼紫の月15日。
なんか今の勇者、たよりない。おっかしーなあ?
もう一度選別儀式を実行するしかなさそう。めんどいー」
やっぱ女神樹の目でも頼りないと思われてたか……つか、もう一度、だと!?
妹が魂を取られる前じゃないか。そんな話、聞いたことないぞ。
「▼紫の月30日。
選別儀式を実行。結果、やはり同じ結果。今の勇者で正解。性格の問題かあ……
でもなんか、たまたま儀式のタイミングに重なって死んだ魂があるみたい。
選別儀式の結果に影響があったかもしれない。なんて間の悪い奴。
仕方がない、近くの何かを依り代にしてその魂は一時保管しとこう。あとで精査する」
これは!?
もしかして、その依り代って棺桶……その魂って、俺では……!?
……
しかし、それ以降その件について触れている日記はなかった。
妹が魂を取られた後の、三回目の勇者選別儀式もなにかトラブルのせいでうまくいかないらしく、女神樹がどんどんふてくされていく様子が記されていた。
最新版と思われる日記は、
「▼青の月3日。
全然やる気起きない。選別儀式の魔法陣描くのやめちゃった。おなか すいたー。たすけ て だれか」
「……完全に忘れてる感じっしょ」
「うおおおおこおおのおおお女神樹ェ……!!」
などと、女神樹の放置プレイに怒髪天を衝いていると。
「ちょっとぉー!?わたくしの日記を読み上げてるのは誰ですのー!?」
まさに『天』から声が降ってきた。
「うぎゃあああ!バレた!! ……終わった……何もかも……」
大慌てしたあと急速に静かになるマイア。
魂が半分抜けているイメージ映像がピッタリという感じだ。
しかしまさか本当に女神樹の本体が降臨してきた!?責任は取るとは言ったものの一体どうすれば、と内心焦っていると。
「あなた? ……いやあなたたち?どーゆーつもりなのか説明しなさぁい!」
腰に両こぶしを当て、やや前かがみのぷんすかポーズで目の前に現れたのは――
ピンク髪で、左右に分かれたツインテールが螺旋のような縦ロールになっている。
真っ白のスモックブラウスのみを身に着けた姿。
体の線が透けて見えそうで、いやそれ以前にメルリーネをさらに超えてくる大ボリュームの胸部装甲たゆんたゆん。
「黙ってたら何もわかりませんよ?」
怒ってはいるものの、あらあらまあまあ系のお姉さんという感じの、美しい女性だった。
いろいろ神々しくて見とれてしまう。神々しくて。
「……あなたが、もしかして女神樹さま……の人間体か何かであらせられる?」
おそるおそる尋ねる。
「そうです。この世界の均衡を保ちつつ人間に味方する世界女神樹の顕現体、それがわたくし。
ルダ・ホスティン・メトセラです。お気軽にルダちゃんとお呼びください」
「はあ」
結構気さくな女神だった。
怒り心頭で、もう許しません死にましょうね♪ みたいな問答無用、理不尽な神のふるまいを想像したが話の分かりそうなゆるいお姉さんで助かった。
「さて、わたくしの日記の盗み読みは死罪となってますが……」
助かってなかった。
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