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第28話 棺桶、プロジェクタースクリーンになる

「なにこれ。暗い。狭い。出して」


 ドーナが棺桶内でじたばた……しようにも狭くて思うようにじたばたできないでいる。


「いいよ。魔弾で蓋ごと吹っ飛ば……!?」


 と、ドーナの目の前の蓋――の裏側――が光った。


 そこに映し出されたのは、ドーナの人形時代。

 人形の持ち主との楽しかった思い出が、走馬灯のように……というと死に際みたいだが。

 そんな感じで目の前の棺桶蓋裏スクリーンに、思い出の映像が投影されている。


 『鑑定』で見た記憶を、光魔法で映像化して再現しているのだ。

 名付けてシャイニング・コフィン・ヒールトリガー。

 俺の裏ブタが光って唸る。


「ドーナちゃん、きょうはピクニックだよ!」

「おそとゆきの服におきがえしましょうね~」


 唸るつったが実際音声は出ないので、セリフは字幕で再現した。

 我ながら細かい仕事をしている。


 ドーナは目の前で展開される思い出映像を食い入るように見ていた。

 そしてもうすぐ、持ち主の心変わりで捨てられる場面だ。


 当然、そんな映像はなく、穏やかで幸せな日々が続く映像が流れた。


「うそ。うそうそ。そんな」


 ドーナが頭を抱える。


「わたしは……捨てられた。捨てられたの。

 そこを魔王様が拾ってくれた。助けてくれた。力もくれた」

「それは魔王の嘘……あなたはずっと愛されてた……騙されないで……」


 マイアが精いっぱいのええ声を出して説得にかかる。

 初めてにしてはなかなか雰囲気出してくれているな。


 マイアにかけたレベルアップ魔法、既に制限時間が来ているのでマイアのオーラは通常に戻っていた。

 そして副作用も思った通り、何も起こらなかった。

 安心して今後も思う存分かけれそうだ(悪い顔)


 一方ドーナは真実の記憶と上書きされた記憶の間で揺れていた。


「ちがう。こっちがうそ。変なのを見せないで……!」

「思い出して……本当の記憶を……あなたは魔王に利用されている……愛を信じて……」


 マイアも頑張ってるが、ワードセンスがややうさんくさい……

 しかしこれが出来る精いっぱいだ、あとはひたすら映像を繰り返しマイアの言葉に耳を傾けてくれることを期待するしかない……!


「わからない。もう……どっちがほんとうなのか……わからない……」

「……じゃあ、一緒に行こう。アタシたちと一緒に、魔王のところへ。そして本当のことを聞くの」


 マイア、とんでもないことを言い出したな!?だいぶアドリブきかしておられる!

 しかしドーナはかなりの長い沈黙の後、


「…………わかった。……行く。今見たものに嘘はなかった。捨てられたところ以外。

 あんなことをする子じゃなかった。そこだけ本当におかしい。でもされた。矛盾。

 魔王様に会う。本当のことが……聞きたい」


 なんと了承してくれた。

 さすがに洗脳を完全に解くまではいかなかったか。


 しかし一緒に行くことになるとは想定外だ、まあこれで東部方面軍が瓦解することになれば人間側としても万々歳だろう。


 蓋を開き、ドーナを出してやる。


「ふう。生き返った。気分」


 そういうキャラかい。


 そして鋼鉄化を解いて変なポーズからメルリーネを開放した。

 経緯を説明すると当然ながら驚いたが、ドーナの境遇にも同情的だったメルリーネも彼女が仲間になることに異議はなかった。


 しかし今回は通してメルリーネはちょっと不遇な立ち位置だったな、立ちっぱなしで情報も共有されず、その後は鉄にされて固まりっぱなし。


 あとで俺の中で寝てもらうとき、目の前の蓋裏スクリーンに綺麗な映像でも映して癒し効果をアップさせたりしてみるか……


「インテリアにはし損ねたけど。しばらく一緒になる。その。……よろしく」


 ドーナが手を差し伸べてきた。

 握手はできないことに気づいて、ぽすぽすと軽く棺桶を叩く。

 俺がよろしくと返すと、彼女はふわりと浮き上がって棺桶の頭頂部分に腰掛けた。


「さあ。いこうか」


 マイアがそこはアタシの場所だとちょっとグズったが、とりあえず棺桶一行の魔王城への旅は再開された。


 ――魔将三傑の一人、ドーナがなかまにくわわった。

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