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第27話 棺桶、幼女を吸いこむ

「いったいどういう流れで人形を捨てることになったんだ?」


 鑑定履歴でドーナの過去を脳内閲覧する。

 超早送りモード。


 ……


 確かに突然の心変わりとしか言えない、むしろ豹変と言っていい。

 初めて人形をお迎えした日は、家族総出でお祝いのパーティを開いた。

 人形の持ち主は毎日、寝食を共にした。お出かけも必ず肩掛けのポーチに入れていた。


 毎日絶えず話しかけ、お着替えをさせ、楽しさであふれている日々。


 持ち主がそれだけ可愛がっていたにも関わらず、突然「飽きた」という冷たい言葉と共に人形をその辺の路地に捨てたのだ。


「……不自然にしか見えない」


 親にそろそろ卒業しろとか友達に笑われたとかいうこともない。

 女心となんたらとか言うけど、それだけでは納得がいかない……


 しかしこれ以上の情報は鑑定では引き出せない、鑑定結果に納得いかない場合どうしたものか。


「……鑑定結果を『鑑定』」


 鑑定魔法にセカンドオピニオンなんてなかろうが、どうにもこうにも疑わしい。

 さらなる鑑定の重ね掛けである。


 半ばやけくそ気味でやったことだったが、


「んん?」


 鑑定結果を鑑定した結果ややこしい、心変わりのシーンにノイズが入ったように見えた。

 これは……? さらに鑑定結果の鑑定結果を鑑定!そのうえで鑑定結果の鑑定結果の鑑定結果を鑑(以下略


 『鑑定』の字がゲシュタルト崩壊しそうになるくらい重ね掛けした結果――

 ついに、完全にノイズが取り払われた。


 そこにあったのは、変わらない人形との楽しい日々だった。

 持ち主の心変わりが起こることはなく……そしてある日。誰かの手で持ち主から引き離された……


「これって……記憶を操作された? 作られた偽の記憶を本来の記憶の上にかぶせ、

 長く続いた楽しい日々の記憶もなかったことにした……ってことか……」


 鑑定結果をいったんは欺くほどの強力な刷り込み。

 それをやったのは。

 おそらく、魔王――


「んげげ、マジか! 魔王が介入してたっていうの!

 つか、よかった、人形を捨てるような持ち主はいなかったんだ……」


 同じ鑑定を見ていたからか瞬時にマイアにも情報が共有された。


「私も共有したいですぅ~!」


 棺桶を持ちっぱなしのメルリーネがだいぶ悲しげだ。

 状況的に仕方ないとはいえ、だんだんかわいそうになってきた。

 この後めちゃくちゃ共有しよう。


「そうだな。そして共有するのはドーナ、あいつもだ」

「教えて納得するタマとは思えんっしょ」

「刷り込みには、刷り込みだ」

「?」

「いいか、このあと……」



 ■■■



 ついに魔力切れをおこし、俺の鋼鉄化が解かれる。


 代わりにメルリーネが鋼鉄に覆われ、棺桶を持ち抱えて踏ん張っているポーズで固まった。

 俺はその手から滑り落ち地面にごろごろと転がる。


 ドーナがやれやれといった感じで魔弾の雨を降らせるのを止め、


「あー長かった。どういう魔力量してるの……

 あれ。最後の魔力で赤エルフ。鋼鉄化して守ったの。時間で解けるのに」


 地上に降りてきた。

 仰向けに倒れている俺に近づき、


「確かに魔力切れ。異世界人間の魂は。……そこにある。おっけー」


 そこでドーナは顎に人差し指をあてて考え込むようなポーズ。


「どうやって持ち帰ろう。砦からオーガスケルトンの小隊。呼ぶしか。

 砦のどこに飾ろうかな……喋る棺桶のインテリアなんて初めて。たのしみ……きゃっ!?」


 そこで俺はいきなり棺桶の蓋を開き、竜巻を発生させた。


 魔力切れとみせかけ、実際魔力はほぼゼロだったが『異次元収納』に女神樹から引っ張り出した魔力を一時保存しておいて、ドーナが油断したタイミングで引き出し、竜巻魔法を使ったのだ。


 そしてドーナを巻き込み、そのまま竜巻ごと棺桶内部に引っ張り込んだ。

 バタンと棺桶の蓋を閉める。


 ――静寂の戻った雪原。

 もの言わぬ棺桶と、変なポーズのエルフの鉄像がしずかに佇んでいた。

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