第26話 棺桶、幼女の詳細をプリントアウトする
「……レベルアップさせてみた。どうだ?何か変化を感じるか?」
「……んん……? 妙に力があふれてくる感じ、するっしょ……」
マイアの体の輝きが強くなり、風圧のようなものが発生している。
「はあああああああああ……!」
「俺の中で気合入れてる場合か。早く女神世界樹に接続してみてくれ」
「……やってみるっしょ……」
マイアが目をつむり、魔力経路をたどって女神世界樹と繋がる。
「これは……! いつもと違う……!!
常時回復量、今までの倍になってるっしょ……!!
そのうえ必要な魔力をいつでも引き出せるっしょ!まだ上限はあるっぽいケド!」
成功だ!
さらにレベルアップさせればもっともっと魔力を引っ張ってこれるかも。
「これはいけますね!」
「これで魔力切れはなくなった……あとは魔弾の雨をどうにかできれば」
「棺桶ビームで一発っしょ!」
……いやまあそうなんだろうけど。
人間にしか見えない相手にそれはなんか躊躇の気持ちがある。
人間型のモンスターであればまあ、ってとこなんだが――
あ、しまった鑑定のことを完全に忘れてたな、話はそれからか。
「とりま『鑑定』で相手のステータスを調べよう」
「出たよプライバシー侵害魔法」
マイアが嫌な顔をする。
「でもフィンさま、魔法は今は使えないのでは……?」
「一瞬だけ鋼鉄化を解いて蓋を少し開き、即鑑定したら閉じてまた鋼鉄化する。
解いた瞬間は魔弾を浴びるだろうが、すぐ鉄になれば侵食も広がらない、はず。
メルリーネは重量の変化に対応してくれ」
「わかりました」
てことで即実行。
相手からも魔弾の飛沫で何かやったかは見えまい。
「いま鋼鉄化解けかけた。魔力切れまであとちょっと。かな。
それにしても粘る。めんどう」
見えてた。
でも勘違いしてくれてありがたい。あとちょっとそのままでいてくれ。
「『鑑定』成功。名前:ドーナ・ソームズ。職業:ネクロマンサー。
レベル:75。例の数値は57、52、59」
「やめろつってるっしょ!」
「お約束かなって。……すまん真面目に。ええと種族は……人形?」
ゴスロリ少女が人形? ゴーレム的な分類なのか?
それともあれが本体と見せかけて、実は別の場所で違う人間が操ってる系か?
「とりあえずアタシに見せれ。アンタに女性のあれこれを覗き見させるわけにはいかんっしょ」
「わかったわかった。――詳細をスクロール化」
一度鑑定したら、その後は鑑定履歴を自由に詳細を見れるんだけどね……
棺桶内部にドーナのステータスや来歴などが記されたスクロールが出現する。
手に取って目を通すマイア。
「……どうやら魔王によって人間の形を与えられた、人形みたいね」
「てことは、魔王も魂を扱う魔法が使えるってことか?」
「ちょっと違って、魔王は魔将三傑に自分の能力を与えてるのよね。
だから昔は魔王もネクロマンサー的なことが出来たけど、今それが出来るのはドーナだけ」
今は魔王は三つの能力を各司令に分け与えてるって、ある意味弱体化してるってことなのか。
いきなり本体を狙うってのは正解だったのかもしれん。
「ある少女に長年愛された人形だけど、捨てられちゃって、恨みが宿ったのね。
それを魔王に利用されたっぽい」
「お人形さん、ですか。
私も前はよく遊んだ子がいましたが、そういえばいつの頃からか卒業しちゃって……
もうどこにしまったのかさえ分からなくなってます……」
しんみり気味のメルリーネ。
しかし、そんなどこにでもありそうな人形から魔将三傑の一人とかぶっ飛んだ来歴だな。
「あれっ、来歴を詳しく見ようとしたら、文字を見ていたはずなのに
人形の周囲の風景が見えたり。持ち主が何を喋ってるのかまで聞こえてきたっしょ!」
「ああ、鑑定情報の深掘りで当時の記憶の状況を動画再生できるぞ。
リアルタイムで見ると時間がかかりすぎるから超早送りモードで見るといい。それで一瞬で情報は把握できる」
どこまでも便利な鑑定スキルである。
「うわわ……不思議すぎっしょ! 奇妙な体験! 誰かの人生を眺めるなんて」
「人形な」
人形生? 人形人生?
「というか、人形にそんなに記憶って刻まれるものなんだな……」
「何にでも愛されれば魂は宿るといいますから」
「実際かんおけがそうなってるっしょ」
「いや俺、長年愛された棺桶じゃないし。捨てられたし」
しかしまあ、いちおうドーナが人間じゃないことは判明はしたが……
「うう~!! かわいそっしょ! あれだけ愛されエピソードがあったのに、
持ち主の突然の心変わりで捨てられるなんて!!
初めておうちにお迎えされたあの日……冒険者の両親が遠出して寂しい夜を一緒に過ごした日々……」
あっこいつ、ドーナの過去ストーリーに感情移入してる。
メルリーネも「そんなことがあったんですね」とさらにしんみりモード。
……これでチャンスを見て棺桶ビーム! で殲滅しちゃったら完全に俺、悪者だなあ。
まあ今のところ撃つ気はないが、しかしそれ以外の手段て……説得が通じるような相手でもないし……
……そういや、人形の持ち主が「突然の心変わり」つってたな。
男の自分にはわからん世界だけど、なんとなく気になった。
ちょっと深掘りしてみる価値、あるかも?
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