第25話 棺桶、精霊に賭ける
身構えたものの。
いぜん魔弾の豪雨は降り続け、こちらが動けない以上相手の出方を待つしかない。
しかし、ドーナは別段何かを仕掛けてくるわけでもなく……状況は変わらない。
「なんだ? 発動にめっちゃ時間がかかる系なのか?」
「いや……何かの魔法はすでに発動してる感じはするっしょ……」
マイアが棺桶の中で腕を組んで考え込む。
「自覚症状無しで進行する悪意ある魔法って、一番危ないのではないでしょうか……」
メルリーネが怖い事を言う。確かに、気づいた時にはもう遅いってなる類だったら致命的だ。
「うーん……何かのステータス変化が起きるとかか……?」
「それにしては何もなさすぎっしょ……あ!」
マイアが棺桶内部に投げ入れられたままだった俺のステータススクロールを拾い、
なんとなく眺めていたが急に焦ったような声をあげた。
「魔力の数値がどんどん減ってるっしょ!!」
「……魔力吸収系か! 確かに攻撃魔法ではない……
そして魔力切れで無力化、ってことか」
以前魔力切れを起こして脱力した事を思い出す。
「魔力の数値、250から249、248、247……!」
1秒につき1ポイント、女神樹からの常時回復ぶんと差し引いてそのペースか。あと4分……
「マイア、女神樹からもっと魔力は引っ張って来れないのか?」
「普段の分だけで精いっぱいっしょ! それ以上引き出すのはむり!」
「むう、そもそもの回復量が少ないからな」
「レベルが大した事がない精霊で悪かったっしょ!!」
しまった地雷だったわこの話題。
「レベルが高ければ高いほど、女神樹から引き出せる魔力も上がるんでしたよね」
メルリーネもあえて踏んでいくスタイルやめてよ。
「その通りですが何か!?」
キレ散らかすマイア。
「す、すみません。何か今すぐレベルアップする方法でもあったらいいなってちょっと思って」
「そんな手段があればすぐにでもやってるしょおおおおお」
棺桶内でじたばた暴れるマイア。手足が棺桶の外に出ないようにこぢんまりと。
うーん、しかしそんな事言われてもな。簡単にレベルアップなんて手段あるわけ……。
……あ。
「……以前、人間に『一時躍進』、つまりレベルアップ魔法をかけると肉体に結構な副作用のある話をしたよな」
「! アンタまさか」
マイアも気づく。
「その時も思ったんだが、肉体のない精霊なら実質かけ放題なのでは……?」
「うげ、そんな副作用のある魔法とかやめてよね! つか、かけ放題て!
めちゃくちゃアタシにかける気じゃないの!! 怖すぎ!」
ドン引きして拒絶モードのマイア。
しかし状況打破の手段は多分これしかない。
「再計測の結果、魔力切れまであと180秒」
「そんなこと言われても! 嫌なもんは嫌っしょ!!」
「しかし俺が倒れればメルリーネもマイアもスケルトンだぞ……?
リスクはないはず(たぶん)、頼む俺たちを救うと思って! 絶対損はさせないから! 元本保証!」
なんかだんだん説得が詐欺師の常套句みたいになってきた。
「い、いや絶対とかありえないっしょ……」
しかしちょっとは揺らいでる感じのマイア。
レベルを上げたいという欲求は持ってるから試したい気持ちもあるはずなんだ。
あと一押し!
「そんな手段があればすぐにでもやってるしょおおおおおって言ってたのは誰だっけ?」
「! ……め、メルかな? (メルリーネに「ええ……」と冷たく呟かれ)うぐぐ……
……わかった! わかったっしょ! やればいいんしょ……」
なんとか折れてくれた。
「現状、マイアのレベルは16だが、とりあえず倍の32くらいに上げてみるか」
「32!? レベルアップすればするほど危険って言ってたっしょ!?!?」
「たぶん大丈夫ではないでしょうか……エルフの伝承では精霊は死なないし病気もなにもないと聞いています」
フォローのメルリーネ。
なんかマイアをお化け扱いしてるような感じだが。
「おっとあと120秒だ」
「ううー!! さあやれ! ころせ!! 死んだら未来永劫憑りついてやる!」
現状と何が違うのか全く分からん。
……しかし確かにちょっとした賭けでもある。
強制レベルアップした状態で女神樹への接続がアウトかセーフか……
祈るような気持ちで、マイアに『一時躍進』――強制レベルアップ魔法をかけた……!
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