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第21話 棺桶、あたたかくなる

 馬の蹄鉄が雪を踏みしめる音がぎゅっぎゅっと気持ちよく響く。


 見渡す限りの雪原。

 北には雪に覆われた山の稜線が白くどこまでも続いている。

 吐く息も白。肌を突き刺すような冷たい空気。


「はー。メルの息は白くなるのに、アタシの息は白くならないんだケド」

「実体がないからじゃね?」

「ちぇっつまんな」

「そもそも呼吸、してるのか……?」


 俺たち棺桶一行は北の山岳地帯にいた。

 正確には山が連なる険しい一帯ではなく、少し南よりの山麓に沿った比較的なだらかな地域を魔王城へ向かって進んでいる。


 メルリーネは街で防寒着などを買っておいたのを着込んではみたものの、ここら一帯の寒さはなかなか身に染みるようであった。つか自分も寒かった。


 なので今は棺桶内部に火炎球を常時発生させ続け、蓋を開きっぱなしにして馬車の座席のすぐ後ろに立つようにしたら、「暖炉みたいで快適です」とご好評をいただいた。


「あーあったけえ、棺桶マジあったけえ」


 生身の体ではないはず精霊のマイアにもなぜか好評で、棺桶の頭?に腰掛けながら目を細めている。

 常日頃から棺桶をディスる言動が多いくせに現金なものだ。


 魔王城へは、山岳地帯を馬車で突破とかは当然無理なので、多少回り道だが結果的には最短になると思われるルートを進むことになった。


 北に見える山脈にはなんでも大昔、絶対零度の名を冠する魔王が当時の勇者と戦ったのち、剣に貫かれた格好で氷壁に閉じ込められている、という逸話がある。

 その魔王が死してなお冷気をまき散らすため、この辺り一帯は寒冷地になっているのだ、という。


 死んでも影響を残す魔王とか。今の魔王はあとくされなく消えてくれれば良いんだが。


 と、メルリーネが鼻をひくひくさせる。


「何か嫌な感じのにおいが。左からやってきました」

「だって。マイア、どうだ?」

「んんー? ……お?」


 マイアが左を向いて目を細める。

 そして何かを見つけたようだ。


「9時の方向、距離5000。白魔狼ホワイトワーグ、……のスケルトンの群れ。

 数は30ほど?こっちに向かってるっしょ」


 一番高い位置にいるマイアが報告してきた。

 あったけえとか抜けた事は言ってても、頼んだことはちゃんとやってくれているので助かる。


 そしてメルリーネの嗅覚。ただの匂いフェチかと思っていたが、敵まで事前に察知してくれるほどのものを持っていたのだった。おかげでこれまでも敵に対しては常に先制攻撃がかけられている。


「……ワーグ? 野良とか回遊モンスターの類なんだろうか。ともかく了解」


 しかし骨の狼か。この辺りはスケルトン系との遭遇がとにかく多い。

 いったん馬車を止め、メルリーネに自分を下ろしてもらう。


「目標ホワイトワーグ。

 9時の方向、距離5000、仰角30度。炸裂火球魔法、発射用ー意。てー」


 メルリーネに俺の向きと角度を調整してもらい、先制魔法攻撃。

 てーとか言っても撃つのは自分だ。


 蓋を開けた棺桶の内部から次々と火炎弾が飛び出し、30秒ほど滑空したのちホワイトワーグの群れの上空で爆散、細かな火炎球を浴びせかける。


「全滅したよ!」


 マイアが棺桶の頭をばちばち叩きつつ威勢のいい報告。

 ホワイトワーグ自体は群れで囲まれて襲われれば厄介だが、遠距離先制攻撃が出来ればこんなもんである。


 ここまで来る途中はこんな感じで魔王軍やモンスターとの遭遇が何度かあったが、問題なくすべてを退けていた。


 匂いによるメルリーネの敵感知、遠目が効くマイアの索敵、自分の先制魔法攻撃。

 ナイスコンビネーションである。

 俺が人間体であればハイタッチしてそうな状況。マイアのばちばちはそういう意図もあるのかもしれん。


「また勝ちましたね! おめでとうございます!」

「連戦連勝っしょ! 主にアタシのおかげで! 褒めれ!」


 ばっちんばっちん。

 ただテンションが上がってるだけな気もする。


 と、マイアがそのハイテンションぶりを急にストップさせ、怪しげな手つきで空中をまさぐった。

 例のアレか。情報の速報性、信頼性。なんと便利な女神樹ネット。

 実に助かってるんだが、それを受信するマイアの挙動は相変わらず不審者のそれだ。


「あー、女神樹ネットに新情報アリ」

「お、何か動きが?」


 上がった情報は、人間軍と魔王軍の大規模な戦闘が発生して人間側が敗退、魔王軍の領土がやや拡大したという件と、魔王軍の一部に謎の壊滅が起こっているという件だった。


 ――今この大陸で人間側に侵略行為を仕掛けているのは、魔王軍における東部方面軍。

 その東部方面軍を率いるは、最も力のある将軍として『魔将三傑』と称される三人のうちの一人、ネクロマンサーのドーナ。わりと最近就任したらしい。


 ちなみに三傑の残り二人は西部方面軍にいるが、西部方面軍は海を越えた別の大陸の人間らに戦争を仕掛けているらしく、この大陸における戦争には関わっていない。


「魔王軍が領土拡大……膠着状態が崩れたか。でも東部方面軍も一部壊滅したって?」

「ちょうどアタシらが今その支配領域を進んでるワケだけど」


 東部方面軍の一部壊滅……魔王軍はいったいなにと戦ってるんだ……


「この謎っての、完全にアタシらの事っしょ」

「ですよねー?」

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