第19話 棺桶、今頃ステータスオープンする
街を出発して10数日。
土地がら気温も下がってきて、植生もそれっぽく針葉樹の森林が見られるようになった。
我ら棺桶一行はときおり魔王軍との遭遇戦を突破しながら、山岳地帯を目指して進んでいる。
「お、鑑定したところあの川の水は飲めるぞ」
「ありがたいです」
旅に飲料水の確保は必須だ。
魔王の領土だとたまに土壌が汚染されており、人体に害をなす沼地とかあったりする。
のどが渇いたからって下手にその辺の水を飲んでしまうと色々大変なことになるため、事前の鑑定は必ず行う。
「んしょ……きれいな水です。匂いも問題なし」
棺桶一行の近接戦闘兼食糧担当であるメルリーネが、手持ちの水筒に川の水を確保する。
食糧や水は旅立つ前に大量に異次元収納に確保してはあったが、それでも
無限ではないので、食べられる素材や水は鑑定しつつマメに採取していっている。
「鑑定ってマジ便利なスキルよねえ」
マイアが感心したようにつぶやく。
確かにな。これさえあれば無人島のサバイバルでも問題なく健康を維持できそうだ。
「魔物なんかも名前やら弱点やら完全に看破できるし、生活面でも戦闘面でもこれほど使えるのって
なかなかないっしょ」
マイアはいままで遭遇した魔物の情報を、街で手に入れたらしいメモ帳に逐一書き込んでいる。
世界女神樹の精霊として、外の世界のことは女神ネットで話には聞いてはいたものの、実際に自分で巡るのが新鮮らしく、結構この旅を楽しんでそうだ。
特に魔物には興味津々の様子。そのうち魔物図鑑が完成するかもな。
「そのスキルって、物や魔物などではなく人にも使えるんでしょうか」
ふとメルリーネが尋ねてきた。
鑑定スキルを人に向けて使ってはいけません、とかいうルールはないけど……そういえば実際使ったことはなかったな。
「試しにやってみるか……マイアを鑑定!」
「ちょ、なんでアタシ……!」
両手で顔と体を隠すようなポーズをするが、無駄である。
データが俺だけに見える状態でマイアの周囲に表示される。読み上げてみよう。
「えー、名前:マイア・マイルズ。そんなフルネームだったのか。
職業:世界女神樹の精霊。レベル:16。……上から78、56、79」
「ちょーーー!! そんな情報まで言うなっしょ!!」
「体重についてはプライバシーを重視して触れないでおいた」
「配慮が中途半端!!」
ちょっと調子こいて気になるデータを読み上げてしまった。
実体のない精霊の体重って?と思うが、あるものはあるから仕方ない。
そのほか細かいステータス的なものや来歴などもあったが、さすがにスルーしておいた。
「ちなみにメルリーネの場合は……
名前:メルリーネ・オデール。職業:棺担ぎ。正式に職業になっとる!?
でもまあ最近は慣れたもんだし棺担ぎのプロといえるか。ん、回復魔法もいくつか使えるんだな……
レベル:15。上から85、59、88」
「やめなさいよ! って常々でかいとは思ってたけど……ぐぬぬ」
赤面しつつ汗を頭上に飛び散らかすメルリーネであった。
「しかし完全にプライバシー侵害っしょ! かんおけ!
アンタの情報も開示せい! ……せっ! 出せっ……!」
「わかったわかった」
まったくガラの悪い精霊である。
初めて使うが、鑑定には得た情報を誰でも見れるように具現化する拡張機能がある。
……マイアの魔物図鑑も、これで手間いらずで完成しそうな気がするのは黙っておこう。
自分を鑑定し、その結果を表示、出力……すると空中にスクロールが一枚出現、ひらひらと降ってきた。
情報具現化って、そうなるのかー。
それを拾って確かめるマイアたち。
「おー、なんか色々書いてあるっしょ」
「どれどれ……」
結果やいかに?
マイアが表記を読み上げる。
「名前:フィン・ザーク。職業:棺桶。棺桶て職業なん!? レベル、ってとこには何も書いてないわ」
……あれ?
なぜか自分のレベル表記はなかった。
どういうことだ。
「レベル、0ってこと?」
そんな馬鹿な。レベル70のドラゴンを倒せるというのに?
「棺桶だからレベルの概念からは外れているってことでしょうか……」
「コイツ成長の余地がないってことなのかも笑」
くっ、しかし確かに棺桶のレベルアップって何だと言われれば全くわからん。
レベルアップ魔法は自分にはかけられないから、それで確認も出来ん。
人間は成長するが、物品は普通は素材の劣化しかないもんなあ。
自分は世界女神樹のおかげで半永久的な存在なので劣化はしないけど、成長もしないから
レベル表記はなしってことか。
レベルなしの最強棺桶、魔王だって倒しちゃいます。
そんな叙事詩もアリだろう。たぶん……
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