第18話 棺桶、乾燥機になる
「ああ、いいお湯です……」
「……浮かんでる。デカいのが二つ、浮かんでるっしょ……」
「ちょ、持ち上げたり沈めてみたりしないでください!」
メルリーネとマイアのキャッキャウフフな声が布越しに聞こえてくる。
何の実験をしてるんだ……想像はつくけど。明確に。
「……アタシもレベルアップしたらそれくらいになるかなあ」
「さ、さあ……?」
「上級精霊のお姉さま方は皆メルくらいあるのよねえ」
胸の大きさとレベル、関係あるのか?
……あ、レベルアップで思い出した。
「そういえば、勇者固有の魔法に『一時躍進』てのがあってな。
短時間、誰かを強制的にレベルアップさせられる魔法なんだが」
と俺も会話に参戦。
布越しなので妙に声がくぐもっている。取ってくれないか。無理か。そうですか。
「短時間のレベルアップとか、意味ないっしょ」
「マイアの将来の姿が分かるかもしれんぞ?」
「……む」
ちょっと興味引かれた様子のマイア。
脳内にはきっと超ナイスバディな自分が浮かんでいることだろう。
「……ただ、このスキルには副作用があるんだよな」
「副作用? 何か良くないことが起きるのですか?」
実際、以前に勇者パーティがこれを使ったのを見たことがあるんだが。
「一時的にレベルアップして効果が切れた後、色々と肉体に症状がね……
脱力、麻痺。筋肉痛。骨がボロボロになることもある。おまけに宇宙が爆発し、この世は終わる。みんなが 死ぬ」
「なんじゃそれ!物騒すぎっしょ!」
「後半は冗談だが、結構重篤な状態になるんだよな。レベルアップすればするほど」
マイアが湯につかりながらぶるっと身を震わせた。
「怖すぎ! 絶対やんない!」
「ですよねー」
でもマイアは実体のない精霊だし、肉体的な副作用には無縁な気もしたが、本人をちょっと怖がらせてしまったし無理強いはしないことにした。
あとレベルアップってのは肉体の成長の事じゃないしな……
――露天風呂は急造のわりに好評で、二人はたっぷり時間をかけて浸かってもらえた。
旅の垢をすべて落せたようで、さっぱりしたメルリーネは街で買った違う服に着替える。
今まで着ていた服はどうしようかと迷っていたので、
「じゃあ次は洗濯だな」
と穴を新しく作って水を満たし、そこで洗ってもらって、次に木と木の間にロープを張り、洗った服を吊るす。
その洗濯物の前に立ち、棺桶の蓋を開いて風魔法で風を適度に噴射し乾かしていく。
「ああ、なんか色々とすみません……フィンさま、ありとうございます」
下着まで吊るしてあるのでメルリーネはやや恥ずかしげだ。
大丈夫、履いてない下着はただの布派です。
「……生活面で妙に便利なかんおけっしょ」
寝袋になるわ、温泉を作ったと思えば衣類乾燥機になるわ……
マイアは呆れてるんだか感心してるんだか微妙な表情だ。
メルリーネはお気に入りの服を捨てるようなことにならず、助かったと感謝の言葉を何度も述べた。
――平和な一時。
魔王軍のモンスターもこの時は現れず、まったりとした時間が流れていった。
「こういうのも旅の醍醐味かな」
また、時々露天風呂作ったりしよう。
今度はかぶせられる布の問題を解決しないとな。
そう決意する、俺であった。
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