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第17話 棺桶、露天風呂を作る

「ほういえは、ひんさんははへもほほはへあえないほに、ほうあっへひひおえへふひーをえへいるんへひょう」


 唐突にメルリーネが復活の呪文みたいなことを言い出した。

 大食いの上に口にものを入れたまましゃべるとか、エルフであるということを忘れそうになる挙動だ。

 食べ始めは淑やかだったのに。さっきのはたぶん、


「そういえば、フィンさまは食べ物を食べられないのに、どうやって日々の活力を得ているんでしょう」


 と言ったんだろう。

 答えようとして、そういえばどうしてだろ? と思ったら、


「コイツはアタシを通して世界女神樹と繋がってて、そこから常に魔力供給がされてるっしょ」


 と、世界女神樹の精霊たるマイアが解説してくれた。そうだったのか。

 しかしお前もよく復活の呪文を読み解けたな。


「ということは、俺は基本的に魔力で動いているんだな」

「そうね。でもアタシがいる限り自動的に魔力は回復し続けてるから、たぶん半永久的に活動できるわよ」


 半永久的に自立稼働する棺桶。ホラーというかシュールというか……


「でも、消費量の多い魔法を連発したらさすがに一時的な魔力切れを起こすから

 調子こくんじゃないわよ」


 うーん魔力無限ではなく随時回復系と。


「そういえば、ダンジョンから脱出した時に立ち眩みと脱力感があったが、もしかして

 あれが魔力切れの初期症状だったのかもしれんな」

「うえ、実際切れてたの? 危なかったっしょ」


 確かにデカい魔法を連発したもんな……あの光魔法は3連射が限度ってとこ?

 魔王がそれ以上耐えたらどうしよう。


 コスパの良い魔法とか必殺技ってないものか。それか魔力量をどうにかするか。

 何か考えておく必要があるかもな……


「ふう、食ったわー。ごちそうさん」

「おそまつさまでした」


 お腹をさするマイア。

 別に膨れてるわけでもない……食べ物はどこへ行くんだろう?

 聞いてみたところ、直接魔力に変換されるらしい。便利な体だな。


「ん、うーん」


 食後の小休止の時間。

 メルリーネがなにやら自分の体をあちこちを嗅いでいる。

 そういや宿には風呂もなかったし、出会ってからはずっと野宿だった。


(そろそろ匂いが気になる、か)


 俺はメルリーネに定期的に棺桶の体を拭いてもらってたので大丈夫だけど、女の子に今の状況は辛そうだ。

 時々濡らしたタオルで体を拭くくらいのことはしてたみたいだけど、それでも限界があるか。

 食糧の準備とかも頑張ってくれたし、なんとか報いてあげたいな。


 風呂、風呂か……魔法で作ってみるか?


「えーと、じゃあまず土塊操作かな。メルリーネ、頼む」

「はい?」


 ちょっと俺を抱えてもらい、良い感じのスペースがあるところまで運んでもらった。


 そして、土塊操作。地面に穴を穿ち、棺桶が縦横2×5で10個ほど入る大きさと深さに広げる。

 ……自然に自分のサイズで換算するようになってしまった事には気づかないフリをしよう。


 その穴を氷系魔法で作った氷塊で埋め、炎系魔法で溶かしつついい温度になるまで調整。


「これ、もしかして……!」


 メルリーネの顔がほころんだ。

 お手軽露天風呂(効能無し)の出来上がりである。


「ありがとうございますフィンさま! 露天風呂を作っていただけるなんて!」

「ただのお湯をためただけだから、冷める前に早く入って。早く脱いで。早く」

「うおおい! かんおけ!」


 マイアの横やりが入った。ちぃ。


「アンタかんおけとは言え魂は男なんでしょうが!」


 とかいってレジャーシートを俺にかぶせてきた。なんてひどいことを。


「そういえばそうでした。フィンさまにはしたない姿をお見せしてしまうところでした」

「油断も隙もないっしょ……! へえ、これが温泉ねえ。実物初めて見た。アタシも入ろっと」


 俺は一向にかまわん、のだが。はしたない姿。

 てかマイアも入るんかい。実体無いくせに色々としたがるやつだなあ。


 何か衣擦れの音が聞こえてくる。メルリーネが脱いでいるようだ。シ、シートがー。


「……マイアさんの服、一瞬で消えましたけど!」

「ああ、着脱は思ったら即よ。便利っしょ。

 イメージ次第でどんな服でも着れるけど、今はあのロングドレスがお気に入り」


 なんだそりゃ。めっちゃ興味深いんですけが……!

 精霊の生態を知るためにも、この布どけてくれませんかねえ?


「かんおけ。その布取り払ったら消し炭にすっからね!」

「その時はマイアも消滅してしまうのでは……!?」

「あそっか」


 うかつか。


「と、とりあえず覗くなってことっしょ!!」


 うえーい。

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