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第14話 棺桶、竜退治する

「はい到着」


 ということで10階層ほどあるダンジョンを一気に貫通させたエレベーターで、

 最短距離・最短時間でラスボス前まで来てしまった。


 もともと埋められたダンジョンコアが土を変化させて建造物を作っているので、こちらの土魔法も余裕で通用する。実に便利な土塊操作。


 ダンジョン内部はレンガのようなものを重ねて作ったようなしっかりとした造りで、壁も天井もぼんやりと光っており、ある程度の視界は余裕で確保できている。


 降りたすぐ先、目の前には大きな扉があった。

 鑑定で判明したダンジョンコア守護獣の居る広間への扉だ。


「と、扉ごしでも分かりますね、何かとてつもなく強大な存在が居る、というのが……」

「体がビリビリするっしょ……今の状態で大声でも出されたら」


 マイアはその先を言わなかったし俺も追及しなかったが、精霊もその……漏らすとかあるんだろうか。

 などと緊張感のない事を考えてしまうあたり、割と自分落ち着いている、か?


 ……いや緊張はしている。ゴブリンやオーガなどはまるで相手にならなかったが、さすがに高難易度ダンジョンの主ともなれば実力は段違いだろう。


 しかも今回はマイアやメルリーネがいる。彼女らも無傷で帰してやらねばならない。

 そしてその事は、魔王討伐に反対しているマイアを説得する材料ともなるはずだ。

 いざという時は……2人をエレベーターまで戻して地上に戻すくらいの余力は残しておかないとな。


 覚悟を決め、メルリーネに声をかけた。


「……じゃあ、扉を開けてくれ……!」


 いったん俺を地面に下ろすメルリーネ。

 そして両開きの扉を両手でグッと押し込んで開いていく。

 扉の奥は暗くて何も見えないが、このダンジョンの主が住処としている空間があるはずだ。


「……失礼しまーす……」


 俺を抱えなおし、おそるおそる挨拶しながら入っていくメルリーネ。

 無駄に律義だな。


 扉を超えた先にはやはり広大な空間が広がっており、灯りはなかったが空間の最も奥にぼんやりと緑色に光る、正八面体の水晶のようなものがある。あれがおそらくダンジョンコア。

 そしてその前にうずくまっている巨大な、竜のシルエット……


「ドラゴン……か……?」


「ドr……!?!?」

「ひぅ!!」


 ドラゴンの姿を認めたとたん、マイアは言葉を失いメルリーネも固まってしまった。


 色んな叙事詩にも出てくる、想像上のモンスター。なんだ、普通に居るんじゃないか。


 ……いま自分は、棺桶の身ながら叙事詩の主人公と同じ立場にいる。

 そう思ったら、テンションが上がってくるのが分かる……!


 なので、いきなりこれをぶっ放させてもらう! 最強のモンスターには、最強の攻撃魔法だ!!


「棺桶ビーム!!!!!」


 まばゆい光の極大ビームが暗闇を切り裂き、空間全体を照らし出しつつ奥に居た漆黒のドラゴンに炸裂する。


 しかし突然の光芒に目がくらみながらも、ドラゴンはかろうじて体をかわし致命傷を避けた。

 避けた、とはいえ片翼を吹っ飛ばされ、体の4分の1ほど焼かれてものすごい咆哮をあげる。

 ダンジョン全体が地震のように揺れた。


「メルリーネ、右15度回頭!」

「……あ、は、はい!」


 固まってたメルリーネだったが、自分の声に金縛りを解かれたように反応した。


「行き過ぎたちょい戻して! ……よし棺桶ビーム!!」


 俺を抱えるメルリーネに方向を指示しつつ、再び最強魔法をぶっ放す。

 ビーム第二弾に対してドラゴンは飛び上がろうとしたが片翼では足りず、まともに魔法を食らってくれた。

 全身の鱗がバリバリとはがれ肉を盛大に焼いたような音がした。


「棺桶ビーム、もいっぱぁつ!」


 油断なくもう一撃をかます。威力はなんとなく分かってても、どこまでが適正でどこまでがやりすぎかまだ不明だったというのもある。


 しかし三発撃った後には、もう地面や壁が深く穿たれた痕と、吹っ飛ばされなかったもう片方の翼が残ってるだけであった。ダンジョンコアと思われる水晶の破片もその辺に散らばっていた。


「か、勝ったの……!?」


 かろうじてそれだけ言った後、言葉を失ってしまったようなマイア。


「ま、まさかドラゴンを倒すなんて……! 信じられません!フィンさま……!」


 まさに驚愕といった表情のメルリーネ。

 ぶるぶると足を震わせ、へたり込んでしまった。なんか大げさでない?


「ふう、ダンジョン攻略のクエスト完了だ。

 つか鑑定するの忘れてたけど、ドラゴンのレベルってどんなもんなんだ?」


 残った翼にダメもとで鑑定かけてみると、いちおう有効だったようで、レベルは70と出た。


「ま、高難易度とはいえ田舎街のギルド扱いのダンジョン。守護獣的にはそこそこまあまあの

 レベルかもしれないが、結構戦えるとわかってもらえれば幸いだがマイアさん?」


 と俺がマイアのほうを向くと、女神樹の精霊は放心していた。

 何度か声をかけると我に返り、信じられないようなものを見る目つきでこっちを見てきた。


「……竜種を倒せる存在なんて基本的に人間には居ないっしょ」

「え、そうなの?」

「このダンジョンは放置されてたからか極限まで育ってた。そんな育ち切ったダンジョンのコアは

 最強クラスのモンスターを守護獣とするんだケド……それがドラゴンなんて今まで聞いたこともない」


 あれっ。普通に居るんじゃないのか。


「この世界が複数の大陸で構成されてるのは、過去にドラゴンが暴れまわったせいで一つの巨大大陸が

 分割されてしまって今の形になったって話もあるっしょ……

 そんな守護獣を倒せるなんて。竜退治のサーガなんて、遠い昔に異世界から来た超戦士が倒したとかいう、

 古い伝承にしか残ってないっしょ……」


 確かに叙事詩にはよく出てくるけど。あくまで伝説は伝説。

 こんな田舎のダンジョンに居るからには、A級とかS級とかの冒険者なら倒せちゃう存在かと思った。

 違ったのか……


「アンタはその、伝承の英雄クラスに居るのね……」


 マイアの、俺を見る目つきがだいぶ変わってきた気がする。


「今度は、超戦士ならぬ超棺桶が竜退治したという伝説が残るわけですね!」


 興奮しているメルリーネ。

 俺、超棺桶にクラスアップしてしまったよ。


 竜退治のサーガ。主人公は棺桶。

 ……吟遊詩人も困惑しそうな設定だ。

 その者、四角き体をなして魔宮の竜を打ち取るべし……



 ……さて、とりあえずこれで実力は示せた。

 マイアも納得してくれたはず……って姿を探すと、ドラゴンが残したと思われる金銀財宝の山に寝転がって、お楽しみの最中だった。


「ひゃっほーお金だオカネー!光物大好き!」


 即物的な精霊だなあ。さっき俺に感心してたっぽいのはどこいった!?

 つかドラゴンは外にも出ずどこから集めてきたんだこの財宝……


「マイアさーん? 魔王討伐に反対してたマイアさーん?」


 呼びかけにビクッと反応するマイアさん。


「う……分かったわよ……アンタの実力は分かった。本気ですごかった。その……付き合ってもいい、っしょ……

 ただし! アタシの身の安全を最優先にね!」


 顔を赤らめ、ぷいっと横を見ながら条件付きで了承してくれた。やれやれ。



 こうして女神樹の精霊、マイアがなかまにくわわった。

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