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第13話 棺桶、ダンジョンを攻略する

 街から北に歩いて半日ほど。


 ――周囲は見渡す限り荒れはてており生き物の気配もない。

 ほぼ沈みかけている夕日に照らされるのはごつごつとした岩ばかり。

 そんな場所をまたしばらく歩いた先にそれはあった。


「ここがそのダンジョンですね……」


 ダンジョン、それは魔王軍の設置型モンスターの一種である。


 魔王軍の手により埋められたダンジョンコアを中心に、複雑な構造の建物が地下に広がる。

 ダンジョン内部には地上とはまた違った系統のモンスターが徘徊し、コアを守っている。


 放っておくと周囲の魔力を際限なく吸収して強力なモンスターが内部で育ち、いずれ地上にあふれて人間界を脅かす。

 周辺の土地もダンジョンから放出される毒素により徐々に荒れはてていき、モンスターにとっては過ごしやすい環境となっていく。


 魔王軍は定期的にダンジョンを作る事で領土を広げているのだ。

 そして冒険者はそのダンジョンを探索し、コアを破壊することがギルドから課せられた使命になっている。


 今俺たちが来ているのは、そういうダンジョンの一つだ。


「何よ、こんなとこに連れてきて……まあ、想像はつくケド」


 マイアが不満そうにつぶやく。

 冒険者ギルドで最も難度の高いクエストがないか調べたところ、このダンジョンが該当するようなのではるばるやってきたわけだ。


 そんな大きくもない街の近くのダンジョン、しかもギルドで聞いた限りでは高難易度とされてるわりに出現モンスターは凡庸。レアな素材も回収できないという「おいしくない」タイプらしいので冒険者たちからは歓迎されず、積極的に挑むパーティもあまりいないという有様であった。


「そのうち、あの街の冒険者ギルドに国から行政指導か処分かなんかが来そうな状態だな。まあその前に」


 さくっとやっちゃいましょう。


 俺の実力を示すために来たので、どうせなら「10年の1度の難度」「これまでで一番強くかつ攻撃的」「禍々しさが感じられる素晴らしい品質」などと評されているようなダンジョンが良かったが、とりあえずあの街で受注できる「最も高難易度なクエスト」がこれだから仕方ない。


「……要はこのダンジョンコアの守護獣を倒して実力を見せようってところっしょ」

「察しが良くて助かる」

「でも魔王を倒そうってんでしょ? 並大抵の守護獣じゃ納得は出来ないわね」

「だから難度の高いクエストをわざわざ選んだんじゃないか」


 やれやれと言った感じで首をすくめるマイア。


「わかったわよ。見せてもらおうじゃないの。勇者の力が宿ったという、かんおけ野郎の性能とやらを」

「でも、ダンジョンに挑むには地図役が居ませんが……」


 不安げなメルリーネ。


「地図役?ってなんだ?」


 ダンジョンに挑むパーティには、ダンジョン内部のルートを記録する地図役が不可欠だという。

 地図役が作るダンジョンマップは専門の魔法により描かれるもので、地図を見た人間はその場にいるような感覚でダンジョンの構造を掴めるらしい。


 平面的な地図なら誰でも作成できるだろうが、情報量は下がるし下がった分を補おうとすると書き込みが多くなり非常に見づらいものが出来上がってしまう。


 そして定期的にダンジョンは構造を変化させるため、同じ地図が通用するとは限らない。

 地図役はダンジョン攻略にその都度必須なのだ。


「なるほど……でも要らないよ、今回は」


 地図役についてメルリーネに説明されたが、残念ながら意見は却下。


「じゃあどうするってんのよ……」

「こうする」


 文句言いたげなマイアに対しニヤリと笑って見せ(あくまで気分的な話なので見えないが)


「鑑定」


 まずダンジョンに対して勇者専用のスキル、『鑑定』を使うのだ。


 鑑定――この世のすべてを見通し、対象の全データを暴き出すスキル。


 以前、勇者の妹もダンジョン攻略の際に使っていたのだ。

 ……地下1階のモンスターにやられて即撤退してたけど。


 鑑定の効果により、ダンジョンの階層数や全体の外観、生息モンスターの情報が俺の脳内に入ってくる。

 マイアやメルリーネには何も起きてないように見えるため、「?」といった表情だ。


 しかし俺には、このダンジョンは地下にどういった範囲で、どのあたりの深さにまで広がってるかまでもが手に取るように分かる。コアの場所も特定できた。


 この情報を誰にでも見えるように出力する手段もあるけど、今回はその手間を省く。

 鑑定、情報を看破するだけではなく、まだまだ色々機能があったりする。


「土塊操作!」


 そして土を動かす土系魔法で、ダンジョン入口手前の地面をずぶずぶと凹ませ、どんどん深い穴を掘っていく。

 その後、自分たちが乗る用の足場を作り、深い穴の入口に配置する。


「はい、このダンジョンの守護獣の部屋手前までの直通ルートが出来ました」

「ええっ! そんな攻略法もあるんですか!すごい!」

「はああ……? ズルすぎん?」


 驚きと称賛が入り混じったような顔のメルリーネとあきれ気味のマイア。


「勇者はさすがにこんな攻略はしてなかったけどね。『土塊操作』が出来なかったようだし……」


 なんでこんな地味な魔法が土系魔法の最上級に位置してるのか、ちょっと不思議だったが応用範囲が大きいからなのかもしれない?


 自分も最初は地面を這いずる移動方法にしか使ってなかったけど……使いようによっては便利すぎだこれ。


「まあルート作成はいいとして。かんおけのアンタがどうやって守護獣を倒すっての?」

「手順はこうだ。メルリーネが俺を抱えて敵に正面を向ける。蓋を開いて魔法を発射する。以上」

「そんだけ!?」


 そんな単純に行くわけないと言いたげなマイア。


「メルリーネは持ち前のスキルで自分を揺らさず安定させておいてくれればいい。さて行きますかね」

「は、はい!」


 土製の簡易エレベーターに乗り込む一行。

 常に土操作を発動させて一定の形を保つようにしているので、乗り込んだだけでボロボロ壊れるという事はない。

 維持するのに魔力を消費し続けるけど、どうせ一往復出来れば十分なのだ。


 そして足場を縦穴に沿って静かに降りていくように操作、いざダンジョン最深部へ……

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