表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『ハンガー』

 ベランダには、雨に打たれるハンガーが見える。

 この数ヶ月、日本では雨が降り続けている。

 近年、問題視されている地球温暖化の影響だろうか。神の暇潰しなのだろうか。誰にも答えはわからない。

 そのことは、仕事の求人紙に書いてあることの大半が嘘であることと何ら変わりない。

 土日休み、未経験者歓迎、口当たりのいい言葉ばかりで本当の真実は、入ってから分かる。

 俺が社会人になって、一週間後に気づいたことだった。

 大学を卒業し、I T関係の会社に入社した俺は、感染症拡大の影響をモロに受け、上司から与えられたタスクをこなすことに必死だった。量は多く、平日だけで処理するスキルがなかった自分は土日も結局、仕事をしていた。

 仕事はそれでも終わらなかった。

 テレビからは『明日があるさ』と缶コーヒーのCMが語りかける。自分は静かに電子機器の電源を切った。

 仕事を終えた後に飲むコーヒーは最高に美味い。窓の外には、物干し竿とハンガーが寂しく雨空の下でぶら下がっている。

 風に煽られ、雨に打たれるハンガーにはかける服もない。

 白色ハンガーは、会社にしがみつく自分にやけに重なった。

 翌日、雨は小降りになっていた。

 仕事に行く準備をして、外に出る。何の役に立っているか分からない仕事のために。

 自分がしたいことは、本当にこれだったのだろうか。

 昨日、辞表を書いた。社会にぶら下がるのはやめよう、そう思って。

 今日で終わりだ。ドアを開けて歩き出した。その瞬間、猛烈な頭痛が押し寄せてきた。

 次第に意識が遠ざかっていった。

 今日も白色ハンガーはどこかのベランダで雨に打たれて、ぶら下がっている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ