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投げ捨て  作者: 仮:綴
2/2

早春

 三月末、温暖ながらもやや安定しない気候を思う。陽は暖かく、春の陽気を感じるが、それでもなお風は冷たく吹きつける。

 窓を開ければどこからか羽虫が飛来し、作業を妨害するものだ。しばらく周囲を調べた後、どこかへと去る。そんな普通の日常。

 食後しばらくは、と画面に向き合いゆったり過ごす。こんな日には外出したいものではあるが、遠出をするということもない。ただふらり、付近を巡ろうというのみだ。

 電線が揺れている。干した布団も揺れている。砂が舞うかな、そう思う。だが、ここ最近はだいぶ舗装が進み、舞おうにも土はほとんど露出していない。あるいは、学校周辺であれば校庭の砂がやってくるかもしれない。しかし、散歩コースから逸れている。

 服装を考える。なに、ただ歩くだけだ。洒落た格好も浮かばず、トレーナーとジーパンを取り出す。


 自転車にしてはやや近く、徒歩にしてはやや遠い。半端な位置のその店は、多様なものを扱っている。先日も訪れたというのに、買うものは決まっているというのに、つい巡りたく思ってしまう。しかしそうだらだらといても仕方ない。結局、目的のもののみを手に取り帰路につく。

 途中、この天気ならばとコンビニへと寄る。アイスを買う。ああ、久々だなと思う。ここ数年間はアイス、菓子といったものは口にしてこないでいた。意図的に、というよりも、おいしいと感じられないでいたからだ。それでも何故か、食べたいと感じた。

 見知ったものを選び、購入すると道に戻る。家まででは溶けてしまうだろう。歩きながら食べることにする。

 主婦、小学生、高校生。すれ違いながら道を歩く。冷えたアイスの程よい甘みが口に溶け、気分がいい。同時に、どう映るものかと妄想する。

 むき出しの品を抱え、歩きながらカップアイスを食べている。その恰好は奇怪であろう。それでもどうせ知らぬ者、近所という程近くもない。だが会わぬと言えるほどに遠くもない。あるいは、どこかで思い出されてしまうだろうか。この奇行を行った者と記憶されるだろうか。

 だいぶ他人を気にかけなくなったなと思う。このような大胆なことはまず一年前ではあり得なかった。その変化が成熟によるものなのか、環境の変化によるものなのかはわからない。恐らく両方だとは思うが、正確なことは言えないだろう。

 アイスは溶けていた。それが気候によるものなのか、体温によるものなのか、はたまた熟考によるものなのか。溶けたアイスを流し込むと、さすがに甘く茶を飲んだ。

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