異世界.2
初めての街。看板にはオイルトテスと書かれている。異世界とはいえ、ゲームの中なので、文字も分かるみたい。読めなかったらジェスチャーでどうにかなる?
まあともかく入ってみよう。
入り口にはそれなりに行列が出来ている。並ぶのって苦手かな。組手でもして暇潰したいけど人目を引くのもなんだ照れる。
まあともかく門の前で取り敢えず列に並んで見る。旅人や行商人らしき人がいる。そして驚くべきは人間以外に亜人や獣人と呼ばれる人々かな?
もふもふしそうな耳や尻尾が気になってしまうよ。
でも触ったらセクハラになるよね。しないよ?
他にも耳の尖ったのがエルフって奴かな。
他にも戦士風の人もいるし正にファンタジーと言う奴か。男子好きそう。
まあ、強い人と試合出来るかも。それはそれでわくわくする。
「んー?」
列の隙間から顔を出して、覗いて見る。なんか身分証みたいなものを見せているよ。
四角いカードみたいなの。どうしよ。学生証でも見せて見ようかな。駄目だったらどうしよう?まあいいか。なんとかなるよね。
そうこう考えている内に順番が来た。優しそうな風体をしている兵士だ。
「お。学生さんか。旅行かい?」
「え?ええまあね。そんな所です」
取り敢えず話しを合わせよう。ま、なんとかなるかな。
「……所で、君一人で来たの?」
「ええ、ひと………」
ちょっと不思議な感じで見てるよ。Jk一人で来たなんて言ったら怪しまれるかな?いや、でも一人だしね。一人で行こう。
「まあ、一人です。私、強いんです」
「へぇ。そうか、そうは見えないけれどあんた強いのか」
「まあ、そこそこ」
交流試合では負けたことない。でも大きい大会とかは出なかったな。
そんなに注目されてもめんどくさそうだし。
「貴族の……いや、まあいい。じゃあ、身分証見せて」
手を差し出される。見せてと言われましてもね。学生証を出すか。
いや、でも、逆に怪しまれたらどうしよ。
「……あの」
「どうした?失くしたのか?」
「え、ええまあ」
「貴族様が大胆に一人で来ているのに、身分証失くしちゃうなんてな。あんた、ドジっ娘だなー」
ちよっと皮肉ってる?貴族とかと思ってるのは何故かな?まあいいか。
「あはは~」
笑いかけて来たので、愛想笑いで返す。上手く笑えてるかな。
無愛想なので笑顔は苦手です。
「ま、俺も鬼じゃないからな。再発行に銀貨1枚だ。あるな?」
お金あるのかな?銀貨って。円じゃないとこが異世界感だね。ゲームだけど。
アイテム袋の中には、いくらかありました。文無しじゃなかったの。
それを取り出して払う。銀貨って百円玉より大きいよ。
「じゃあこっちへ来て」
お金を受け取ると、建物内に案内された。テーブルとイスだけのある簡単な部屋に入るとすぐに門番が戻って来る。
「これに記載してもらえる」
羽根ペンとカードを持って来て渡される。
それにさらさらと自分の名前を書く。日本語でいいのかな。
あ、書いた字のインクが光り輝いた。
これが、ファンタジーと言う世界なのかな。
兵士のおじさんはそれを見て、特になにも言わない。平気かな。
「名前からして東方之国の出身かい?そんなとこの貴族様がこんなとこまで……まあいい。よし。行っていいぞ。気をつけてな。オイルトテスへようこそ」
扉の外まで案内されて、笑顔で言われたので、こちらも笑顔で返す。
「ども」
それは、歴史や物語に出て来るような中世の場所で、普段の散歩より刺激的でわくわくしてきている私がいる。いや、旅行か。まずはその辺のご飯……はないのかな?
うろうろしている獣人や亜人に話しかけるのはなんか、勇気がいるな。でもえい。
「この辺に美味しいご飯のお店知ってます?」
「美味しいとこならよくもっていかれる」
「は?」
「いや、こっちの話しさ。あそこがいいかな」
街の人らしき人は前髪をかきあげるとお店の場所を教えてくれた。
「ありがとうございます」
「君は、貴族なのに偉そうじゃないんだね」
「はい?私は普通のJKだよ」
「……じぇい?ともかくそんな身なりのよい服着てるだろ?育ちのよいお嬢さんなんじゃないかい?」
前髪をかきあげるお兄さんは(かきあげと呼ぼう)私の服装をじろじろと眺める。JK好きな人じゃないよね?警戒する?
でもよく見たら周りの人の服装ってなんて言っていいか貧相?いや失礼か。
量販店の服よりも生地が薄いような。人にもよるけど。
相手からすればこの制服は高くて生地もいいのかな?ありがとうお母さん。
「……それほどでも?」
適当に誤魔化して礼を言う。
しばらく行くと、宿屋らしき建物があったのでそこに入ってみる。
「あ、いらっしゃいませ~」
にこにこと愛想良く話しかけてきた金髪の女の子は、NPCなんだよね。良くできてる。ぱっちりおめめの可愛い。雑誌にとか取り上げられてそう。
「あ、あのお客様?」
女の子は瞳をぱちくりさせてるね。
は。いかんいかん。かわいいのでつい頬をぷにぷにしていた。私は、変態に思われてしまうじゃないか。ロリではない。
「ごめんね。一晩泊まりたいんだけど」
「い、いいですよ。一晩二食つきで、銅貨3枚です」
「えーと」
ウインドウを開いて見て、ちょっとびっくり。さっきの倒した狼の銅貨プラス歩きで、銅貨1枚。どんどん貯まってるよ。
なんか、歩いてれば億万長者も夢ではないのかな?
取り敢えず銅貨を3枚払い、部屋に案内してもらう。一泊だけだけど、稼いだらまたここに泊まりに来ようかな。
「ここです!」
部屋は質素だけど、掃除が行き届いていて良い。
「質素だけどいつも掃除してま~す。えへへ。シャワーは、羊さんが眠るまでですからね」
羊さんが眠るまで?時間的なことかな?曖昧な感じかする。
鍵を渡されて、ベッドにごろん。固いベッドだけど寝れるだけでもよし。身体をうーんと伸ばしてまったり出来る。でも固い。
なんでこうなってしまったのか。みんな心配してるよね。夕食まで、説明書を見てみよう。
なになに。ワールドウォークオンラインは、いくつかの国で分かれています。
ネーミングはアレだけど、色んな場所を歩けるのはいいかもしれない。種族は、人間、エルフ、ドワーフ。亜人に獣人。
その他にもいくつものレアな種族がありますか。
基本的には、魔族……悪そうな感じ。絡んでくる不良とか相手にしていた方がマシか。
ともかく魔族は、漫画に出てきたな。その魔族がこの世界を狙っていると。
まあ、そう言うのは英雄とかに任せて、私は散歩しようっと。後は、職業の欄もある。ハロワにでも行くのかな?
なんでもありだから、路銀が尽きたら、バイトさせてもらって稼ぐのもありか。いや、転職所でジョブを選べるみたい。明日にでも行って見るかな?
後は、冒険者ギルドで依頼を受けられたり、魔石は換金出来たり、武器や防具に合成出来るみたい。琴美ならもっと詳しく分かるだろうけれど。連絡取る術がないか。
スマホがあっても県外だろうな。しばらく、うんうん唸っていると、さっきの女の子が呼びに来た。
「夕食出来ましたよ~」
「うん、ありがとう」
一階にあるテーブルに着くと運ばれてくる。パンとサラダにスープ。お肉食べたい。しかし贅沢は的だ。
「いただきます」
ちゃんと手を合わせてると、女の子に首をかしげられる。
「いただきます?」
「あ、うん。うちの方の作法みたいなものかな」
そうか。この世界にはそう言うのないのかな。でも、NPCの動きが細かいな。感心しちゃうよ。
とにかくスープはしっかり味がついててパンも固いかと思いきや柔らかい。サラダもしゃきしゃき。見た目の貧相さとは関係なし。
「美味しいよ、うん」
「えへへ。そか、そか、嬉しいな。お父さんの料理は、そこそこ評判なのだよ」
「誰の料理が、そこそこだ」
娘の父親かな。目元が似ている、背の高い銀髪のおじさまだ。琴美なら喜びそうだ。パパ活いいなとか危ないことを言っていたので止めておいた。
「えへへ」
ぺろっと舌を出していたずらっぽく笑う女の子はかわいいな。働き者だし。こんなかわいい妹なら欲しかったな。
生意気な弟はいるけど。ま、心配もしてないんだろうけどね。
たとえ、NPCとは言え暖かいなこの親子と思う。
「お客様は、冒険者なんですか?」
おじさんが話しかけてくる。どこかその視線は鋭い。
「マキでいいよ。いや、私はさん……旅人かな?」
この世界ではプー、もしくはニートなのでどう答えればいいのかな。散歩には長すぎるから、旅人でよいのです。
「マキさん。私は、サーナです。よろしくお願いします♪」
「よろしくね、橋本真姫だよ」
「俺は、ロッカーだ。よければ、娘の遊び相手をしてくれ」
「はあ」
えと。ミュージシャンではなく名前らしい。
ニヤリと笑うとサーナちゃんの頭を撫でる。
「もう。仕事中は恥ずかしいから止めてよ~」
照れながらも嬉しそうだ。子役のファンの人の気持ちが分かった気がする。
「マキさんは、冒険者ギルドに行かれるのですか?」
あ、この子。気分がいいと思っていたら、礼儀正しいんだ。まだ、小学生っぽいのに。今の子供たちに見習わせたいくらい。そして可愛い。
「……うーん?どうだろ。この石ころを換金とかしたいんだけど?」
さっきの狼の石ころ。名称は魔石とウインドウが出た。
「ああ、はい。冒険者ギルドで買い取ってもらえますよ」
にこりと笑われる。かわいい子だな。やっばりうちの妹にほしいくらい。
魔物の中にある魔石はこの世界のお金に換金してくれると。
結構ヘビーな感じなのかな、冒険者って。
冒険者ギルドの居場所を聞いて、微笑ましく思いながら部屋に戻る。仲の良い家族だ。
一階でシャワーを浴びて来て一息。ホントにここは、ゲームの中なのかってくらい、味覚も嗅覚もリアルだ。シャワーの水の感じもそうだし。
てか、眠気もそうみたい。色々確認したいけど、眠いから明日の朝でいいや。
私がいなくても、誰も心配……琴美は心配するかな。眠気には抗えずすぐに寝ていた。
つづく
サーナは、働き者で優しい女の子だから、街の男たちに人気だよ。
ロッカーは、サーナに近寄る悪い虫をガン飛ばすんだよ。
サーナは、働き者で優しい女の子だから、街の男たちに人気だよ。
ロッカーは、奥さんの命日にお墓の前で、アコギを奏でているんだって。奥さんに捧げてるんだ。