異世界.1
ゆるくヤっていきたいです。
そこは、なにもない空間だった。そこへ現れたのは、モフモフしがいのある黒猫。
かっこいい。触らせてもらえないかな。
他人にあまり興味もない私だけど、モフモフの毛触りは別だからね。
しかし、なんでこんなとこに黒猫がいるのか。
「ようこそ、プレイヤー様。ワールドウォークオンラインにようこそ。このゲームは、プレイヤー様の自由気ままな異世界の冒険が出来ます」
ん?どこかで聞いた声だ。あの助けたお婆さんの声に似ているかも?いや、そんなことよりもだよ。
「待って。そこは、可愛くにゃ~でしょ?」
「それはそれ。これはこれとも言いますし」
流暢にしゃべる猫。ま、それもありか。では、早速と。近づいて触ろうとしたらすり抜けた!?
「私、ホログラムだから、触れませんよ」
「触れないなんて!」
思わず声を上げてしまうけど、猫は気にしないで説明を続ける。そうね。前しか見ない猫なのね。
私は、昔は平気だったけど、動物アレルギーで、触りたくても触れないのに。
「……と言う訳でして」
ああ。このゲームの世界では、モフモフ出来るのかな~。
うろ覚えで聞いていたからかな。ねこぱんちを食らった!
「……あなたは、触れるの?ずるい!」
頬にめり込んだねこぱんちをこちらが、触ろうとしてもスカスカ。
中身のスカスカな筋肉質の男か。あ、なんでもない。動揺して変なツッコミをしてしまった。
筋肉質のお兄さん、ごめんなさい。ムキムキは苦手だけど。
「だから、早くにゃまえを決めてくれにゃ!」
(……名前か)
入力画面を見て唸る。こう言うの別の名前にすると、違和感あって嫌だな。面白い名前で、『げれげれむ』とか入れようとしたら、黒猫の爪がキラリと光る。あ、肉球かわいい。
入力仕掛けた名前を変えて、マキでいいや。
続いて、容姿選択と。いくつものパーツ。めんどいなぁ。
「このランダムで選んでもいい?」
「いいですけど、今、キャンペーンでランダムはふんどし男になりますにゃ」
「どんな、キャンペーンよ、もう」
でも、猫かわいい。出来るだけ自分に近づけて……と。
決定して、次は種族ね。いや、ヒューマンでいいって。
他にも、エルフやドワーフ。亜人、獣人、妖精などなど。
「……このクネクネ族ってなに?」
「くねくねダンスが得意にゃ種族ですにゃ」
あ。私が猫なら、にゃ~とか言うもんでしょとか言ったの気にして語尾がにゃに変わった。
ともかく、良く分からない種族みたいだから、やっぱりヒューマンでいいかな。人間で決定。ポチポチ年齢とか決めていく。
「じゃあ、スタート地点に転送するにゃ!」
「ん。お願い」
「……あんた淡々としてるにゃ。あなたを選んで良かったにゃ。良い旅を」
「…………え?」
今、なにか気になることを言いませんでしたか?
一瞬、身体に変な感じになったと思ったら、どこかの街道にいた。
のどかな大自然。整備された街道の先に街が見える。いや、そんなことよりも。今、身体ごと移動しなかった?頭にヘッドギアみたいの着けてる感覚ないんですけど。
「……ま、いいか」
空気が上手いし。人混みもなくて良し。今のゲームは進歩してるな。ゲームの中に入れるなんて。
いや、VRMMOが初めてでも、さすがにこれはないだろう。
ともかく、運営を呼び出すと。メールが届いていた。
『マキさまへ。リアルな異世界を楽しんでね。ちなみに、吉田さまからプレゼントが届いています。運営より』
吉田!?あのおばあさん、何者なのだろう……まあいいか。
アイテム欄を表示すると、布地の良い服はともかく飛脚の靴はなんだか凄そうだ。
拳士の手甲―クリティカルが少し出やすい。技の出が少し速い。
布地の良い服―育ちのいい人が主に着る服装。ダメージ軽減。30歩歩くたびに銅貨一枚が自動で貯まる。あら凄い!
飛脚の靴―通常より早く歩ける、走れる。蹴り技が痛い。いくら歩いても疲れない。
うん。おばあちゃん、サービスしすぎだねー。
「あ、そうだ。ログアウトすればいいのか」
ウィンドウを開くと、ログアウトのとこをいくらクリックしても抜け出せない。でしょうね。
とにもかくにも、あの街で色々考えようかな?あ……うちの猫大丈夫かな?心配だ。
歩き出すと、スイスイ動ける。その時、横から来た狼?魔物かを裏拳で吹っ飛ばす。一撃!?
倒れた狼は消えて、石ころみたいのと銅貨が出たので、拾って皮袋に入れる。なるほど、いくらでも入るアイテム袋ね。
まあ、もろもろ後で確認しようかな。興味ないかと思っていたけど、自然の多い場所を歩けるのは良いことだから、無関心の心が少し疼いていた。街まで、狼を倒して進んだので、銅貨がそこそこ手に入った。
都会とは違う緑の平原と遠くに見える山々。
ただで旅行してる気分でちょっとラッキーかな。
つづく
真姫が最初に倒した狼の魔物は、メスにフラれたばかりで気が立っていたんだよね。
真姫が最初に倒した狼の魔物は、フラれたばかりで気が立っていたんだよね。