ゲーム世界のチンピラと初バトです
俺たちはギルドカフェでクエスト受注する事にした。
既にゲームでアカウント登録の際、ここでのクエスト受注はできるようになってるそうだ。
俺たちはとりあえず簡単にレベルアップが出来るダンジョンクエを受ける事に…しかし。
「ない…かな?これ」
「ないな」
「あちゃー、タイミングミスったわね。これ」
どうやらこのゲーム、クエにランダム性があるらしい。
ゲームのシステムが自動的にクエを出す為、このようなことも多々あるらしい。運営曰く、リアルを追求するが為のとの事だそうだ。
しかし、初心者には少々キツいな、これは。
「仕方ないわね。少しの間街を歩いてから、また来ましょう。まだ時間はある事だし。せっかくVRMMOの世界なんだから、その間は各自、行動を自由とします」
「言うても、11時までだろ?」
「なに?まさか貴方たち。朝までコースなんて言わないよね?基本1時間コースにしなかっただけ有り難く思うように!じゃあ、ゲーム内時間で一時間後、ここに再集合ね」
「うう。わかったよ」
「俺も了解」
あはは。この光景は、なにやら懐かしい。なんて思いながら店を出て、3人別れた。
とは言っても俺、ここ完全素人だし…。放置されてもな。
『街を歩かれるのなら、私が案内しますが?』
「ナビ玉か。そうだな。折角だし、ネオトウキョーの街をもう少し探索しますかね」
『畏まりました。では、初心者の方におすすめのスポットをご案内します』
「…ところでさ?」
『はい?』
「俺、君を使うとき、ずっと君を手に持ってないといけないの?」
ナビ玉は割と大きめの玉。例えるなら占い師の人が持ってる水晶玉くらい。それをずっと手に持つのは、割と邪魔。
『これは失念してました。私は持ち主の思う通りに加工が可能です。指輪やネックレスなどアクセサリーなどに変わることができます』
「え?そうなの?じゃー、ブレスレットで」
『畏まりました』
そう言うとナビ玉は形を変えて、腕に巻きつき、ブレスレットへと変わった。
「いいね」
『ありがとうございます。では、街の探索に行きましょうか?オリーヴ様』
「うん」
それから暫く、ナビ玉の案内で様々な所へ行った。なんとかの街、遊園地や映画館、スパリゾートまである。しかも、しっかりとプレイヤーが利用できる。ゲーム内マネーが必要だけど、現実より明らかに安いし、こりゃ現実忘れて遊ぶには最高の世界だな。いつか俺も利用してみようかな。
「やめてください!」
「ん?」
路地裏の方から、何やら声が聞こえた。
「なんだ?」
と、声のする路地裏に入っていく。
すると、男3人が若い女性に無理やり言い寄っていた。
うえー!ゲーム内で、あんな事する奴いるの!?
『ゲリラクエストが発生しました』
「へ?」
『クエスト 悪漢退治 推薦レベル 20 クエスト報酬 100マニー』
ゲリラクエスト?って事はつまりこれ、イベントな訳?
あんまりいい趣味とは言えないな〜。
しかもレベル差が…俺、まだモンスターすら倒してない。報酬も安い。
「や、やめて!」
『受けますか?』
…なーんて、ヒーローに憧れる俺が、んな事こだわるものかよ!
「もち、受ける!」
『受注しました』
「おい!そこのお前ら!」
「あん?」
「その子を離せ!俺が相手してやる」
「なんだ?このガキ?ひ弱そうな奴」
チンピラの数は3人。お?何か出てきた。相手のステータスバーが表示されたのか。
レベルは2人が10レベルともう1人が…20!?レベル1の俺1人だと、かなりヤバイレベルだ。
まぁ、でもやるしか無いか。
「ガキは大人しく帰ってママのとこでベソかいて寝てな」
無防備に近づくチンピラ。
その隙を見逃さず俺は先手に顔面パンチをした。
ペチ。
「へ?ぺち?」
「あ?ってぇなコラ」
あ、あれぇぇぇ!?
嘘だろ?レベル差ってこんなにあるものなの!?
『あ、オリーヴ様。装備品を装着してください』
「え!?」
『プレイヤーのステータスは装備で変わります。何も装備がない状態で、攻撃してもレベル関係なく、ダメージ1程度しか与える事はできません』
「先に言ってよ!そう言う事は!」
えっと装備は…。
「舐めた事してんじゃねぇぞ!クソガキ!」
「うわっと!?タンマ、タンマ!」
『注意してください。今のオリーヴ様の防御力とHPでは一発でKOです』
ええ!?プレイヤーって装備ないとそんなに貧弱なの!?
てか、装備どこ!?
「死ね!」
あった!すぐに装備!
ガンッ!
チンピラの拳は俺に顔面に直撃する。
が、対して痛くなかった。
装備の装着にはラグは殆ど無いようで装備押した途端に、俺の体に装備された。
「ってぇ!」
防御が急に上がった俺を殴ったチンピラの手は赤く腫れ上がる。
「ふぅ、間に合った。出だしカッコ悪いとこ、見せちゃったな。名誉挽回と行きますか」
「こいつ、冒険者だったのか!?弱そうなガキに化けるとは卑怯なやつ!」
「お前らが言うか!?まぁいいや。反撃開始だ!行くぞ」
「びびる事はねぇ!あの装備は駆け出しの冒険者だ!3人がかりで攻めるぞ!」
「「おう!」」
「…」
さて、俺よりレベル上のチンピラ3人…まだ戦い方を知らない素人にどこまでできるか。
『オリーヴ様の使える技を表示します』
お!いいね。頼むよ!
現在、俺が使えるのは…ストレートパンチ、飛び蹴り、カウンターの3つか。あとは自身で駆使して戦うってわけね。
それにしても…カウンターか。よし!
俺はボクサーのような構えをとる。
「行くぞ!おらぁ!」
先ず突っ込んできたのは、10レベル1人。
漫画でみたっけな。こう言う時は、先ず相手の動きを見ること。
相手の動きに合わせて、かわせ!俺!
「んな!?」
相手のパンチを寸前のところでかわす。
二撃、三撃…かわしきる。
…こんな事もあろうかと、格闘漫画も読みあさっていてよかった。イメージが重要なVRMMO世界なら…動ける。実際の俺の体じゃこうはいかないだろうな。
よし、かわせるとわかれば…あとは相手のパンチに合わせて…っ!
「カウンター!!」
「ぶへらっ!?」
カウンターが相手の頬にクリーンヒット!
『カウンターが発動されました。相手の攻撃をジャストなタイミングで合わせ、攻撃を当てる技です』
その説明いる?まあ、いいや。
ん?
「へがべかが〜」
なんだ?一発しか当ててないのに。相手が…ピヨってる?
『カウンターが決まる際、確率発動のスタンが決まったようです』
お!?ラッキー!なら、畳み掛ける。
俺の技で一番攻撃力あるのは…
「飛び蹴りだ!」
「ごはぁぁっ!?」
俺の蹴りでチンピラが吹き飛んだ。
どうだ?
『相手、沈黙。戦闘不能と判断します』
「よしっ!」
「ちぃ!馬鹿が!」
「しゃぁー!」
1人倒されたのを見て、もう1人ががナイフを取り出す。
いい!?しまった!怒らせた!
『レベルアップしました。アタックモーション『手刀』を獲得』
手刀!?ナイフ相手に!?
でも、やるしか無いか。
「手刀」
というと手が光り出した。
え?手刀ってこんなんなの?
「○ねよや!」
残りのレベル10のチンピラがナイフを振り下ろす。なんだ?今のピー音は。
「ふん!」
俺は手刀で相手のナイフを受け止めた。
!?HPが1減った。
え?この程度?まさか、手刀状態の手はほぼナイフと同レベルってことか?ただやはり肉体だからか、ダメージはあると。
レベル1もとい、2なったとは言え、HPはまだ低いから受け続けるのはまずいな。
なら!さっきの要領で!相手のナイフを交わして手刀の手で!
「カウンター!」
カウンターで攻撃!
「ぐっ!」
相手はのけぞった。
「ふんっ!」
尽かさず、次は右ストレートで追撃!腹にヒット。
「グフっ」
『2人目も沈黙しました。オリーヴ様!後ろ』
「っ!?」
何かが飛んできた。見るとさっきのしたチンピラの1人だった。
どうやらレベル20のやつに投げ飛ばされたらしい。
「…仲間だろ?その扱いはないんじゃないか?」
「たかが下っ端が、この俺の役に立つためならなんでもするのさ!俺の為、ならばな?」
「……手刀!両手!」
「へっ!」
チンピラは近くにあった鉄パイプを取ると俺の手刀をそれで受けた。HPが結構持ってかれた。
「くっ!?」
レベル20と2の差…やはりこの差は痛いか。
『ストレートをチャージしてください。初期技ストレートには一定時間力を溜めることができ、それを解き放てば凄まじい力が解放されます』
「貯めるって…今絶賛一騎討ち中なんだけど」
けど、それしか勝率ないか。なら、カウンターの容量でかわして、拳に力を溜める。
「させねぇよ!ガキが!アクセルブースト!」
チンピラの鉄パイプの動きのスピードが増す。相手もなんかしらのスキルを使ったのだろう。
これだと結構避けるのが難しいな。
なんとか、形勢をこっちに。
相手が長物を使った際は…投げる!
技にそんな物ないけど、やってみるか!
相手の動きをよく見て…隙を逃すな。
「うらぁ!ちぃ!ちょこまかと!」
攻撃が当たらない苛立ちがチンピラに見え始める。
「いい加減にしろ!雑魚が!」
そう言うと、さっきより大振りで構える。
「今だ!」
先ずはけん制のための当身を喰らわす。
「!?」
相手が怯んだ隙に、襟と腕を掴む。そして相手が突っ込んできた勢いを利用して投げる。
え!?軽い?相手のガタイからは想像できないほど、チンピラは軽い。
相手はそのまま投げ飛ばされた。
…結果オーライ。
今このチャンスを逃さない!俺は再び拳に力を溜める。
「くっ!?なめるなぁ!」
起き上がり、そのまま攻めてくるチンピラ。先ほどの鉄パイプは投げた際に、何処かへ行ってしまったよう。
なら、あんまり怖くない!!
「ヒーローパーンチ!」
チャージされたストレートを相手の顔面に喰らわせた。
「ぶはぁぁ!?」
チンピラは後方へ、吹き飛んだ。
「はぁはぁはぁ」
初っ端の戦闘で…これか。レベル上げ…本気で取り組まないと割とやばい。
『あの…ヒーローパンチなんて、アタックモーションはありませんが』
「っ!つい、テンションが上がってしまって…技名を」
…さて、分かってますよ。相手はレベル20、対してこちらはレベル2。そんな相手の攻撃をくらって倒されるほど、ゲームは甘くないことくらい。
「いてて、やるじゃねぇか?」
「…そりゃ、余裕で起き上がってくるよね?やっぱり」
正直、この人の相手は、今もう勘弁してほしいな。
「ウォーターアロー!」
「!」
と後ろから声が。
すると、後方から複数の何かがチンピラ目掛けて放たれた。
「ぎゃあああ!?」
まともに食らったチンピラはそのまま倒れた。
『相手、行動不能になりました。これよりクエストの勝利となります』
「ふう。ありがとう。シャイニーさん」
振り返るとそこには、魔法を放ったシャイニーさんがいた。