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ダイヤモンドの女神  作者: 駿河ギン
1章 大嫌いな野球の神様は
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モデル、高山桃香と中二病、なっちゃん

 少女、恵美と一旦別れてから今度は3人で階段を上ること4階に到達する。突き当たりの教室は美術室と書かれていた。次に野球部員はここにふたりいるようだ。なっちゃんと桃香という少女のようだ。美術室の戸を少女、凜子が勢い良く開く。

「どもー!」

 美術室の中央にいたひとりの少女が驚いて声を上げる。普通の教室の作りに美術の授業に使うであろう絵の具やバケツ。そして、教室後方に飾られているのは授業で描いたであろう生徒の作品。教室両サイドに見慣れた名画家の作品のレプリカ。絵に描いたような美術室中央に目的の少女はいた。

「も、もぉ、急に大きな声出さないでよぉ」

 と笑顔を浮かべながら絵の具とパレットを置いて振り返る。おしとやかで落ち着いた物腰に透き通るような声。ほのかに赤みがかかったセミロングの髪に整った大人の顔立ち。だが、ひとつ衝撃的だったのが。

「よっこらしょっと」

 立ち上がった少女はすごく育ちが良く、おっぱいもでかいがそれ以上に背も高かった。

「え?」

「えっと、高山桃香ですぅ。美術部に所属していますぅ。運動はあんまり得意じゃないけど、有紗ちゃんのためにがんばりますぅ。よろしくですぅ」

 と手を差し伸べてくる。

「よ、よろしく」

 と手をとって握手を交わす。

「あの、身長はいくつなんですか?」

 思わず敬語になってしまう。俺の身長は177cm。野球選手の中では小柄だが、一般人からすれば背の高いほうに属するが、目の前の少女、桃香は俺と目線がほぼいっしょどころか高くね?

「え、っとですねぇ。180くらいです」

 でかいな。いろんなところが。他の少女たちと違って。

「松本さん!今エロいこと考えたでしょ!」

「考えてないし、松本さんじゃないし」

 何?人の名前は二文字までしか覚えられないの?

「松本さんっていうんですかぁ?」

「いや、違うから」

 このままだと俺は松葉さんと松野さんと松本さんって呼ばれたときに反応しないといけなくなるだろ。いい加減にしてくれよ。

「松葉さんだよ。ほら、凜子ちゃんだから」

「わかってますよぉ」

 笑顔で納得する。どうやら、凜子の物忘れの速さを周りは周知しているようだ。

「それよりも桃香!なっちゃんは?」

「準備室にいると思いますぅ」

 と少女、桃香の後を付いていく。なんだろう。でかいな。背も胸も尻も。体系はモデルさんだな。グラビアの。

「なっちゃん」

 準備室をノックするとノックが返って来る。

「合言葉を述べよ」

 え?

 困った笑顔を浮かべて少女、桃香は準備室に向かって言う。

「暗黒帝国、イスカーン将軍の側近の秘書のビアンカですぅ」

 ………はぁ?

 準備室の鍵が開いて、ゆっくりと開く。中から出てきたのはさっき出会った神野ツインズと同じくらいに低身長の少女だが、その全貌は黒いフード付きのコートで全身を覆われているせいでわからない。

「なんのようだ?ビアンカよ。我輩はかの異世界で不穏な動きを見せるアンビラン帝国軍の監視を界王様から命ぜられている。この世界の裏で支配するデストロ帝国のイスカーン将軍の秘書が今更なんのようだ?まさかようやく、腰の重いイスカーン将軍がついに武器の支援にようやく動いたのか!」

 言動からわかった。重度の中二病なんですね。

 中二病少女、なっちゃんが出てきた美術準備室であろう部屋は遮光カーテンで暗く、なんか青白い光が見えて、なんか木刀とかが転がっているのが見えた。こういうタイプは苦手だ。このなっちゃんがどういう設定なのか知らないが、設定の中でしか会話ができないからだ。伝えたいことが伝えたいことがまったくわからないから、すごく…めんどくさい。

 しかし、それをものともしないのが扱いに手馴れている感じがある少女、桃香だ。

「なっちゃん。有紗ちゃんたちと約束した野球のお話が来てるよぉ」

 少女、なっちゃんの設定をがん無視した。

「え?だから!あたし、じゃなくて、我輩は」

「前に野球やってみたいって言ってたよねぇ?」

 笑顔で少女、なっちゃんの話を無視して話を推し進める。

「い、いや、だから、あたしはね。なっちゃんじゃなくて」

「あ?そうだ。自己紹介がまだでしたねぇ」

 なっちゃんの背後に回って背中を押して美術準備室から押し出す。

「ちょっと。やめてよ」

 と抵抗はするものの体格が違いすぎて簡単に美術室に押し出される。そして、少女、桃香は躊躇せずなっちゃんのフードをはがした。

「わ!」

 驚いてすぐにフードをかぶろうとしたが、それを少女、桃香が阻止する。

色白の肌にくりっとした大きな瞳に低い鼻に艶のある藍色のツインテール。まだ、あどけなさを感じる幼い容姿には美人になる兆候がある。今まであったこの中でダントツにかわいかった。

 涙目になりながら上目使いで俺の方を見る。そんな目で見るな。かわいいだろ。

「かわいいですよねぇ」

 少女、桃香は抱きつくのをなっちゃんは嫌がる。いじめたくなる気持ちはわかる気がする。

「この子は黒根七海ちゃんですぅ。みんなからはなっちゃんって呼ばれてますぅ」

 なっちゃんに頬ずりしながら教えてくれた。

「なっちゃんじゃないし!」

 嫌がる姿に愛嬌を感じる。かわいい。

「かわいすぎる!」

「本当にかわいいよね」

 女子すらも認めるかわいさか。だが、残念ながら中二病を抱えているせいでそのかわいさが台無しになっている。

「なっちゃんは見た目どおりでアニメとかゲームとかが好きで、野球のルールを知っています」

「え?今まで会った子達は野球のルール知らないの?」

 深刻そうに無言でうなずく有紗。

 マジか。一から教えるとなると普通に大変だぞ。

「っふ!野球など我輩の闇の力を使えば他愛もない」

 と手で顔を覆いながら教えてくれたが、その華奢な腕を見て本当に野球ができるのか怪しい。

「それで!これから練習するからグランドに来てね!」

「わかりましたぁ」

「我輩は帝国軍の動きを」

「さ!お着替えしましょうねぇ」

「ま、待つのだ。いや!待って自分で着替えるから!」

 嫌がる姿を見て誰も助けない。だって、嫌がる姿を見ているともっと見たくなってしまう衝動に駆られたからだ。

「…私たちも着替えてグラウンドに行きますから」

「りょ、了解」

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