表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイヤモンドの女神  作者: 駿河ギン
1章 大嫌いな野球の神様は
7/67

委員長、田辺恵美

 駆け足でかけがって行く少女、凜子を歩いて追いかけていると怒鳴り声が突然聞こえた。

「廊下は走らない!」

 その声に俺と少女、有紗は目を合わせて小走りで階段を上がると少女、凜子がしょぼくれた表情で怒られていた。

 怒っているのは黒い三つ編みおさげに黒淵めがねにそばかすと如何にもまじめそうな委員長タイプの少女だ。大きな瞳に白い肌に華奢な腕。体育会系の凜子とは真逆の文化系だ。

「そんなに怒らなくてもいいじゃん!」

「声を上げない!廊下では静かにしなさい!」

 君も十分うるさいよ。

「大体、林田さんはいつもいつも廊下は走るし、授業中はうるさいし!落ち着きないのよ」

「別にいいじゃん」

「よくない!」

 すると委員長タイプの少女と俺の目が合った。

「あなた誰ですか?部外者は立ち入り禁止なんですよ!今すぐ出て行かないと先生を呼びますよ」

 え?いや、ちょっと待って。

「恵美ちゃん。大丈夫。この人はちゃんと許可貰ってるから」

 とフォローしてくれる有紗。ナイス。

「でも、来校者なら首からネームタグ下げていないといけませんわ!ルールはちゃんと守ってください!」

 めんどくさい少女だなって思うながらうっとうしくてポケットにしまっていたネームタグを再び首にかけると少女はよしと納得する。

「でも、ちょうど良かったよ!委員会終わったの?」

「終わりましたわ。なんですの?」

「野球部の話だよ!」

「ああ。そんな約束してましたね」

 ちょっとめんどくさそうに答える。めんどくさいならそんな話知らないと言い張ればいいのに。まじめなんだな。

「確か、コーチがいないから部活ができないって話でしたわね。ということはこの方がコーチなんですか?」

 俺の方に歩み寄ってくる。

「先ほどは申し訳ありません。我が高の生徒が来校者の対応を間違っていたために、あなたを不審者扱いしてしまって、改めて申し訳ありませんでした」

 と深々と頭を下げる。まじめすぎてめんどくさいが一番まともな子かもしれない。俺の名前を覚えないポンコツに、初対面の人に向かって下僕とか言うし、元気が一杯の双子だ。あれ?最後の双子はまだまともじゃね?

「あの!」

「は、はい」

「私は田辺恵美といいます。一応、この林田さんと綾元さんののクラスの学級委員長をしています」

 やっぱり。

「あなたは?」

 まともな自己紹介だ。

「松葉俊哉です」

「やっぱり。松葉さんなんですね」

 とうれしそうに笑みを浮かべる有紗。普通に気が抜けていた。

「どういうことですか?」

 え?なんでそんなに怖い目で俺を見るの?

「私たちが松岡さんだよねって確認してるのに違うって言い張って聞かないんだもん!」

 だって、名前間違えてるし。

「それは嘘をついているということですか?」

 なぜ、睨まれてるし。

「嘘は泥棒の始まりと言うことわざがありますが、実際に嘘をついて相手を騙すことは詐欺罪にあたりますよ!」

「え?さ、詐欺」

「まだ、あなたの嘘で金銭的な不正行為が行われていないみたいですが、もしも松葉さんの嘘で不正にお金を取るようでしたらあなたは犯罪者ですよ!」

「いや、大げさだろ」

「ならば、嘘をついていけません」

 少女、恵美は将来怖いお母さんになるな。これは予想ではなく、未来だ。

「悪かったよ。嘘ついてて」

「その謝り方は正しくありません。悪気があった。相手に許しを得て欲しいならば、その態度を松葉さんは態度で示すべきですよ!」

 こいつめんどくさい。

「ごめんなさい」

 と素直に頭を下げて謝る。

「よろしい」

 なんか上機嫌になったぞ。どうやら、この少女、恵美はすごくルールにうるさいようだ。まじめという面ではいいことなのかもしれないけど、融通が利かなくてめんどくさい。

「それじゃ!恵美!」

「廊下では静かに!」

 さっき言われただろ。

 元気がとりえの凜子は少ししょぼくれながらボソッと伝える。

「これから野球の練習するから」

「わかったわ。何時から?」

「え?…有紗!何時から!」

 すでに声が廊下中に響いてる。うるさいってまた怒られるのが目に見えてる。

 で、一方の有紗はあたふたと慌てている。

「えっと、松葉さん。何時から練習します?」

 なんで俺に振るんだよ。

「準備でき次第でいいんじゃね?」

「それではいけません!」

「はぁ?」

 なんで俺が怒られてるの?

「部活は決められた時間に行わないといけません!グラウンドの使用許可!道具の使用許可!部活の活動許可!顧問の許可!などなどをすべてきっちりしないと部活はできません!」

 この子。友達いないだろうな…。

 するとここでおどおどしているだけの有紗が。

「グランドは放課後から下校時間まで使えるように先生に頼んであるし、道具も倉庫の中に眠ってたものを使っていいって許可貰ってる。ただ、人がいないから始められていないだけで」

「それで今!集めてる途中!」

 一応、有紗は俺が来ることを見越していろいろ準備をしていてくれたようだ。気弱そうに見せて野球をしたいって言う情熱はあるようだ。

「わかりました。では、着替えてグラウンドに行きます」

「私たちもあらかじめ声掛けてる子たちに松葉さんを紹介したら行くよ」

「綾元さん」

「え?何?」

 ちょっと起こられた感覚になって怯える有紗。

「松葉さんはこれから野球を教えてくれる先生なんですよ。それらしい名で呼ぶのがふさわしいと思います」

 なんで俺のほうを見て恥ずかしそうに目を逸らす。

「先生。よろしくお願いします」

「…よろしく」

 先生って照れくさいな。

「では、私は先に向かってますわ。先生」

 お前まで俺のことをそう呼ぶんかい。

「あ!神野ツインズは先に向かってるよ!」

「…あのふたりがいるのね」

 とちょっと疲れた表情を見せた。まぁ、凜子以上にあのふたりは自由気ままな感じがする。ルールに厳しい少女、恵美とは相性が悪そうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ