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ダイヤモンドの女神  作者: 駿河ギン
3章 敗者が学ぶこと
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攻守交替

 有紗は四之宮さんが投じた大きく曲がるカーブにあっけなく三振に終わった。長身を生かした早いストレートと遅いカーブ。緩急を使うのが非常にうまいピッチャーのようだ。それにストレートも男顔負けの早さだ。初めてでいきなり打っていうほうが難しい。だが、どんな好投手でも弱点はある。超高校級のピッチャーといわれていた俺でもランナーがたまるとコントロールが乱れていた。あの速い速球は無理でも遅いカーブならあわせることが出来るかもしれないが、打撃練習をまともにやっていないメンバーにそんなことが出来るはずないんだけど。だが、今はそんな前からある心配事よりももっと心配なことがある。

「無理じゃん。打つの」

 打席に向かうときは野球をするのが楽しいって清々しい顔をしていたのに、戻ってくるとまったく正反対になっている。あんな球打てるはずがない。という弱気の考えが有紗自身を追い込んで行く。

「無理じゃない、有紗」

「無理ですよ。先生にはわからないんですよ。私ですら打てなかったのに他に誰が打てるんですか?」

「そ、それは」

 答えを返す前に。

「ストラーク!バッターアウト!」

 ミキもバットに当てることなく戻ってきた。

「速いわね」

 次のバッターの雪音は四之宮さんの速いストレートにビビッてしまって腰が引けてしまってバットを振ることなく三振に終わる。

 あっという間に裏の攻撃が終わり表の守備に向かう。

「おい。凜子。何バット持ってるんだ?」

「え?だって、雪音ちゃんの次は私でしょ!」

「スリーアウトになったら攻守交替だって教えただろ!」

「聞いてない!」

 堂々と嘘をつくな。

「よし!守備だ!」

「守備だー!」

「おい、待て。神野ツインズ」

 呼び止められる双子の姉妹。

「なんで左樹がファーストミット持ってるんだ?俺は騙されないぞ」

 ファーストは右樹だろ。

「ばれちゃったよ、右樹」

「ようやく私たちを見分けられるようになったね!松葉先生!」

「おお!確かにすごいよ!1週間でよくわかったね!」

「すごい!すごい!」

「遊んでないでグローブ交換して守備にいけ!」

 ふざけながら神野ツインズはそれぞれの守備位置に。

「ベンチの裏から邪悪な気配が!まさか帝国軍が進撃を!」

「帝国軍の進撃は俺が阻止しとくから守備しに行け!」

「いきますよぉ。なっちゃん」

「やめろ~。ボール飛んでくるの怖いんだよ~」

 意外と素直だな。そんな素直ななっちゃんをいじめて楽しそうな桃香は止められないな。

「っち。どういうことよ、下僕?初心者に手加減とかないわけ?」

「俺に文句を言うな」

「早く守備に行きますよ!」

 なんで恵美はそんなに張り切れてるんだよ。

「有紗。無駄に落ち込んでないで行くわよ」

 下を向いたままの有紗は立ち上がってマウンドに向かう。

「有紗!」

 足を止めてくれるけど、振り返ってくれない。

「野球を楽しめよ」

 俺が言える精一杯の一言だ。

 有紗は一瞬上を見上げてから。

「はい!」

 と元気欲返事を返したが、俺には空元気に聞こえた。

 二回表の攻撃。最初のバッターは四之宮さんだ。

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