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ダイヤモンドの女神  作者: 駿河ギン
2章 少女は野球を始める
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観月ミキとの出会い

 観月ミキ。この子が昨日練習に参加していなかった。ふたつ隣のクラスだ。だから、聞いてもピンとこないわけだ。接点がない。写真を見せてもらったけど、それをみて少し腰が引けた。でも、凜子ちゃんいわく集めたメンバーの中で一番戦力になる子だと教えてくれた。なぜなら―――。

 いつでも練習にジャージ姿になって通学用のリュックを背負ったまま校門で待つ。

「あれ?有紗?」

 聞き覚えのある男の人の声に振り返る。松葉先生だ。今日は昨日と違って動きやすいジャージ姿だ。ちなみに着ているジャージも昨日私といっしょに買ったものだ。小さな袋には買ったばかりのグローブが入っている。まるでデートみたいだった……。考えるだけで顔が熱くなる。

「なんでこんなところにいるんだ?練習は?」

「ちょっと、人を待ってます」

「人?」

「昨日言ってた。9人目の部員です」

 あ~。と思い出したようだ。指定された場所に原付を置いてくると私のところに戻ってくる。

「あの、別に私の構わなくてもいいんですよ」

「有紗ひとりだと心配だ。言いたいことを言い出せなくてそのまま見過ごすって考えられる」

 凜子ちゃんと同じことを言ってる。ひとりでがんばるって宣言してここにいるのに、結局ひとりじゃなくなった。私はいつも誰かの力に頼って生きている。

「来た」

 校則違反の金髪ポニーテール。ワイシャツのボタンを大きく開けて短いスカート。ブレザーを腰に巻いてバックを肩にかけて猫背に歩く。そう風貌は誰が見たって不良だ。私の姿を見るとぎっと刺すように睨む。それに後ずさりしてしまう。

「大丈夫かよ」

「だだ、大丈夫ですよ。余裕ですよ」

「声が引きずってるぞ」

 きききき、気のせいですよ。

「あ、ああ、あの、観月さん」

「なに?」

 きつく睨まれた。このままナイフで刺されて殺されるんじゃないかって思った。

「なんであんた泣いてるわけ?」

「わかりません」

 舌打ちされた。怖いよ~。

「あれ?君は昨日も見たな」

「……ども」

 小さく会釈を私たちの横を通ろうとするときに先生が止める。

「フェンス越しに練習見てたよな」

 観月さんは足を止める。

「はぁ?何言ってるの?あんた?」

 けんか腰だよ!先生!大丈夫なの!私は大丈夫じゃないよ!

「やりたいなら混ざればいいだろ。野球部に所属してるんだから恥ずかしいことじゃないぞ」

 先生がいてくれて助かった。ひとりでやるとか意地張ってごめんなさい。凜子ちゃん。

「別にやりたいとか思ってないし。つか、いつからあたしが野球部の部員になったのよ?」

「え?だって、有紗が部員だって」

 なんで私に振るの!

「え、凜子ちゃんが観月さんを誘ったって言ってたから」

「あたしは断ったはずなんだけど」

「はぁ?」

「え?」

 初めて聞いたんだけど。

「その凜子って奴に聞いてみな。あたしは部活なんてやってる余裕はないのよ。二度とあたしに話しかけるな。部活なんて、野球なんて時間の無駄よ」

 何も言えず観月さんは帰っていった。

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