表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイヤモンドの女神  作者: 駿河ギン
1章 大嫌いな野球の神様は
1/67

大嫌いな野球の神様へ

どうも始めましての始めまして。―――というかたぶん始めましてですね。

最後に投稿したのは2016年8月ということで2年近く小説を投稿していませんでしたが、

久々の投稿です。最後まで読んでくれるとうれしいです。

 真夏の炎天下、人の熱気と声援。吹奏楽でリズム良く流れる応援歌で応援される者は鼓舞され力をみなぎらせる。しかし、それは俺の前では無力だ。

 阪神甲子園球場。通称甲子園。兵庫県の西宮市にあり、歴史は古く大正時代からこの場所に鎮座している野球の聖地。野球少年なら誰でもあこがれる夢の舞台。その夢の舞台の中心のマウンドに俺は立っている。夏の日差しは俺の体力を奪っていくが、俺の闘志はみなぎってくる一方だ。夏の全国高等学校野球選手権大会。3年生の先輩方には最後の夏だ。3年間野球だけをやってきた人たちも多い。そのがんばりはすべてこの地での勝利のためである。俺はまだ2年生だが、3年生の先輩ともっと野球をしていたい。ピッチャーとしてまだまだ挑戦したい。また、この夢のマウンドに立ち続けたい。強者をねじ伏せたい。それから湧き上がる闘志の篭もった白球を投げ込む。

 ボールを投げるときは通常上から投げる。そのほうがボールに力が加わりやすく速度も出るし、コントロールもしやすい。その名前をオーバースローやスリークォーターとも言う。それとは違う俺の投法。俗に言う変則的な投げ方のひとつにサイドスローというものがある。簡単に言えば横投げだ。打者に対してオーバースローは上から投げ込むから落差のある投球が主だが、サイドスローは違う。俺は右利きだから左打者に対するとボールが向かってくるように見える。ぶつかるんじゃないかと思って打者は腰が引ける。右打者だと逃げるように見える。だから、ストライクだと思ってバットを振ってもボール球だったりする。そこに横移動のする変化球が非常に有効的なのだ。俺は横に移動しながら沈む変化球を得意とする。さらにサイドスローでは考えられない特徴を俺は持っている。それは球速だ。

 振りかぶって沈むような態勢になって勢い良く腕を横に振って投げ込まれたボールはすさまじいスピードでキャッチャーのミットに突き刺さる。応援歌で鼓舞される打者も手が出なかった。球速は150キロ。それは球速早い球が投げやすいオーバースローでもなかなかでない速度を俺はサイドスローで繰り出す。変則的な投法、横移動しながら沈む変化球、驚異的な球速。そこに細かいコントロールが加わって超高校級の投手と俺は呼ばれてメディアに注目されていた。ここまで取られた点数は一ケタ台。三振の数も記録に迫っているという。プロスカウトも釘付けのエースピッチャー。俺は今人生最大に楽しい。この夏の暑ささえも心地よく感じてしまう。

 この時間がずっと続けばいいのにと俺は思っていた。

 しかし、野球の神様が突然俺を見捨てた。

 夏の甲子園、準決勝。これと次を勝てば全国制覇の6回裏の俺が投じた一球に俺は違和感を覚えた。その違和感のせいで長打を打たれてしまった。何か肩に抵抗があった。今まで感じたことのない抵抗。腕がうまく回らなかった。投げミスったんだろうと思って次に切り替えた。だが、違和感が取れるどころかどんどん大きくなっていった。しかし、投げることに支障はなかった。最初だけは―――。

 投じた球数が100球を越えた頃、それは突然来た。ランナーを二塁に置いたピンチに気合を入れてボールを投げようとした。渾身のストレートを投じようとした瞬間、腕が肩が切れるような感覚に襲われた。腕が、このまま腕を振りぬいてボールを投げれば腕が千切れそうな痛みに突然襲われて俺が投げたボールは目の前でバウンドしてキャッチャーまで届かなかった。俺はその場で崩れ落ちた。突然、襲われた激しい肩の痛みに気を失った。

 俺は今でも忘れない。心地いい夏の暑さと人の熱気と、俺の人生を壊した肩の痛みを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ