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星の森辺の妖精譚 ~廻る絆の物語~  作者: みたよーき


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十七、メルの冒険

 村に戻ったアミィは、一番近い知り合いである、サラ達の家に飛び込みました。

 まずはネリィに事情を話し、メリルを家まで運んでくれる人手を集めてもらいます。

 そして、サラには、フランとアイールを呼んできてもらうように頼みます。

 ネリィもサラも、メリルの一大事と聞いて、一も二もなく行動を起こしてくれました。


 ネリィやカリナから話を聞いて、メリルの役に立ちたいと立候補したリカードが、森を歩き慣れた人に先導されてメリルのいる星霊樹の元へ向かう頃、アミィは目の前に揃ったサラ、メル、フラン、アイールと、彼女たちに寄り添うユイル、ユスティ、ガーズ、ティネ、それに加えてヨナドに、改めて事情を話します。

「――だから、メリルを助ける為に、この珠へ精霊様に力を込めてもらう必要があるの。だけど、私が時間は稼いでいるけど、メリルがいつまで無事でいるかは分からないから、出来るだけ急いで、あなた達に一組ずつ、同時に聖地へ行って欲しいの。サラはユスティと水の聖地へ、フランはガーズと風の聖地へ、アイールはティネと火の聖地へ。ユスティ達は元々住んでいたところだし、サラ達もそれぞれ一度行ったことがあるし、実際に精霊にも会っているから適任だと思うの。そして……」

「土の聖地には私が行く!」

 アミィの言葉を遮るように力強い声を上げたのは、メルでした。

「メル、あなた一人じゃ……、でも、誰かがやらないとメリルが……」

 サラは反射的にメルを心配する声を上げますが、メリルの事を考えると反対することも出来ません。

 そんなサラに、声を掛けたのは、ユイルでした。

「大丈夫だ、メルにはオイラが付いていく。……オイラは土の聖地からこっちに戻って来た妖精だから、メルを案内できるし、絶対に危険な事は無いと約束する」

 ユイルにそう言われても、サラからメルを心配する表情は消えませんでしたが。

「お姉ちゃん、私を信じて欲しいの」

 メルが少し悲しそうにそう言うと、サラはハッとした表情を見せました。

「……そうだよね。メルはユスティのおかげで元気になったし、いつも頑張ってるもんね。いつまでも小さな子供扱いするのは、ダメだよね……」

 ちょっとだけ寂しそうにそう言ったサラは、だけど表情を切り替えると、改めてメルに、そしてみんなに語りかけます。

「分かった。メルを信じる。みんな、私達で、絶対にメリルを助けよう!」

「もちろん!」

「ありがとう、お姉ちゃん!」

「ああ、絶対だ!」

 口々に答えたそれぞれの表情には不安の色など最早無く、ただメリルを助けるという決意が強く滲んでいます。

「それでは、それぞれこの石を渡しておくぞ」

 ヨナドはそう言って、四人にかつてメリルに上げたものと同じ、ヨナドに念を届ける石を手渡します。

「無事に精霊珠に力を込めてもらえたら、聖地の出口でその石を持って、わっしに声を届けるように念じるのじゃ。……それでは、順番に聖地への扉を開くかの」

 そうして、四組はそれぞれヨナドからもらった石と透明な精霊珠をもって、聖地へと向かったのでした。


 空間の裂け目から外に出たメルの目の前には、両側を崖に挟まれた広い道が続いていましたが、その道は右へ曲がっていて、先は見通せませんでした。

 その道も、メルの膝より長い草がびっしりと生え放題で、道と呼んで良いものか悩むような有様です。

 だけどユイルは迷う事無くその先へ向かい始めます。

「さあ、メル、こっちだ」

 ユイルがそう言うと、メルの足元から前方へ土が盛り上がるように草をかき分け、平坦な道が現れました。

「ユイル、ありがとう!」

「……メルを危険な目に遭わせないって言ったのに、草で切り傷なんて作ったら怒られちまうからな」

 メルに御礼を言われたユイルは、照れた様子でそれだけ言って、ふわふわと先へ飛んで行ってしまいますが、メルを気遣ってかそのスピードはゆっくりです。

 メルも焦る気持ちを抑えながら、しっかりとした足取りでユイルの後を追っていくのでした。


 曲がり道をそう行かない内に、右手に何かが見えてきました。

 ゆっくりと近付くと、それは扉の外枠で、扉は内側に向かって開かれています。

「メル、ここが土の聖地の入り口だ。ここから地下へ道が続いてる。中はそんなに暗くないと思うけど、足元には気をつけてくれよ」

「うん、分かった。気をつけるの」

 そうして二人は扉の中へ足を踏み入れます。中の道はメルから見てもそれほど広くはなく、緩やかに下りながら少しずつ左へ曲がっていました。

 壁や天井にはぼんやりと光る石が露出していて、ユイルの言った通り、洞窟の中はあまり暗いとは感じない明るさでしたが、メルはそのこと以上に、その幻想的な光景の美しさに、どきどきしていました。

「メル?」

 だけどユイルに声を掛けられたメルは慌てて気を取り直します。

「うん、メリルさんの為に急がないと」

 そう言って、メルは前への歩みを再開したのでした。


 暫く進むと、天井が高くなっている広い空間に出ました。

 しかし、メルの足元の地面は少し前方で途切れていて、その先に、向こう岸まで点々と続く飛び石のような足場しか見当たりません。足場と足場の間は、メルが全力でジャンプしても届かないような距離で、メルは途方に暮れてしまいます。

 だけどそれは、ほんの僅かな間の事でした。

「おーい!」

 ユイルがそんな大声を上げると――、

『何だ何だ?』

『あれ? ユイル? ひっさしぶりだなぁ』

『お? 人間だ、人間だ!』

 思い思いの言葉を口に、妖精達がぞろぞろと集まってきました。

「お前ら! オイラはこの子を精霊様のところまで案内したいんだ。手伝ってくれ、頼む!」

 ユイルがそう言って、集まってくれた妖精達に頭を下げると。

『面白そうだな!』

『あのひねくれ者が頭を下げたんじゃ、断れないなぁ』

『そこの人間をびっくりさせてやろうぜ!』

 そんな風に、妖精達は銘々口にする理由は違いましたが、(こころよ)く応じてくれたのでした。


 妖精達の作ってくれた土の足場を渡り、更に行く手を遮った崖も妖精達の力で難なく上り、一同は先へと進みます。

 そして、メルが少し疲れを自覚し始めた頃、ようやく開けた場所に辿り着きました。

 そこは高い天井が何本もの岩の柱に支えられた広間で、正面の一番奥には一段も二段も高くなった祭壇のような場所が見えます。

 その手前に、リカードを二回りも大きくしたような立派な体つきの人影が見えました。

 その人影はメル達の姿を認めると、ゆっくりと歩き出す動作を見せましたが、動くスピード自体はとても速く、瞬きをする程の間で、もうメル達の目の前に立っていました。

「ほう。随分と懐かしい顔だな。それに、随分と珍しい客だ」

「お久しぶりです、土の精霊様」

「!! ……は、初めまして、精霊様。私は、メルといいます」

 メルは、あっという間に近付いてきた精霊の姿に驚いて声も出ませんでしたが、なんとか気を取り直して、挨拶をしました。

 そんなメルの様子を見た土の精霊は、満足そうに頷いています。

「うむ。……それで? わざわざここまで出向いたという事は、我に何か用があるということなのかな?」

「はい! メリルさんを助けたいんです! 私がユイルと仲良くなれたのも、こんなに歩いても大丈夫になったのも、全部メリルさんのおかげなんです! だから、だから、精霊様の力が必要なんです!」

「メ、メル、落ち着けって。オイラが説明してやるから」

「いや。確かに言っていることは整然とはしてないが、この娘の気持ちは伝わった。それで、具体的には我にどうして欲しいのかな?」

 見た目はちょっと恐い土の精霊が優しく語りかけてくれたことで、メルも少し落ち着く事が出来ました。そして深呼吸を一つすると、肩に掛けた鞄の中から慎重に精霊珠を取り出し、土の精霊に示します。

「これに、力を込めて下さい。お願いしますっ!」

「……なるほど、良い出来だ。これを作った者の真剣さが分かる。これなら我の力を漏らすことなく内に込めることが出来るだろう。だが……」

 土の精霊はそこで一旦言葉を句切り、ユイルをじっと見定めます。

「……精霊の力は、星霊樹に万が一が起こってしまった後、この星を護る新たな星霊樹を芽生えさせる為に、おいそれと消費できるものでは無いのだ。……とは言え、先ほど星霊樹が力を大きく取り戻した事とお主達がここを訪れた事は偶然ではないのだろう。ならば協力するのに(やぶさ)かではないが、それには必要な事がある。我が力を失う分を補う、次代の精霊になる者を誕生させなければならぬのだ。しかし、妖精と人とが交流を失った今の世界で、それだけの力を持つ妖精は、ごく(まれ)であろう」

「そんな……」

 土の精霊の言葉に、メルはとても辛い気持ちになってしまいますが。

「そんな顔をするな、メルよ。そもそも、お主が妖精と交流を持つ稀な存在であろう?」

「えっと……。あっ! それじゃあ……」

「後はこのユイル次第、と言う事だ」

 そう言って、土の精霊はユイルに向き直ります。

「オイラが……?」

「そうだ、ユイル。精霊になるという事は、星霊樹に還ることも許されず、この聖地で妖精達を見守りながら、決して来ないかも知れない終わりの時を待ち続けるという事だ。長く生きるとなれば、親しい人間の最期を看取ることにもなるだろう。それでもお主は、いつかこの聖地へと戻り、精霊としての役割を果たす覚悟はあるか?」

 土の精霊の言葉に、だけどユイルの表情に迷いはありませんでした。

「先の事なんて分からない……。だけど、今メリルを見捨てたら、メルを悲しませたら、絶対に後悔するって分かる。だから、今その役割をオイラにしか務められないっていうなら、やってやる! やると決めたら、絶対にやり遂げてやる!! ……それに、あいつらだって絶対同じ様なこと言うに決まってる。オイラだけかっこ悪い真似なんて出来るもんか」

 そのユイルの言葉に、土の精霊は満足そうに優しく微笑んで、そして真剣な顔になって、ユイルに言います。

「それでは、やがて土の精霊を継ぐものに命じる。……引き続き人間との交流を重ね、精霊となるにふさわしい力をその身の内に宿すよう励め」

「……え? それって、まだ暫くはメル達と一緒に過ごせるってことか?」

「言っただろう? 親しい人の最期を看取る事になる、と。暫くと言わず、あと百年は人と交流を重ねなければ、精霊として十分な力を蓄える事など難しいだろうよ。……それで? 返事は?」

「あ……、ハイ! 頑張ります!!」

(よろ)しい。……それではメル、その珠をこちらへ」

 土の精霊がメルから受け取った珠を手のひらの上に乗せて少しすると、透明だった珠が様々な色合いに揺らめくようになりました。

 こうして、ユイルは土の精霊の後継者になり、メルは無事に精霊珠に力を込めてもらうことが出来たのでした。



残り二部は予約投稿時間をこれまでの22時から20時に変更してあるので、リアルタイムでチェックして下さっている方はご注意下さい。

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