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こんな話があったらいいなと思うものを書いてみました。

ある日、魔王の俺は思いつきで、人間が俺を倒す為に異世界から人間を呼び出すと言う召喚魔法を使うことにした。


人間どもができることが、魔王の俺に出来ないわけがなく、異世界からの召喚魔法は成功した。


召喚魔法をした理由?


そんなの暇だからだ。


人間どもが召喚した勇者とやらが我が城に攻めてくる。そして部下どもに力を抜くように指示したりして、やっとの事で俺の前にたどり着いた勇者だが、あまりにも弱すぎた。


まさか俺のデコピンだけで気絶するとは思いもしなかった。それも、直接当てたのではなく、かなりの距離を開けていたのにも関わらずだ。


俺は気絶した勇者をどうするか悩んだが、取り敢えず人間の国に送り返した。これを機にリベンジとばかりに力をつけてもっと俺を楽しませてくれることを期待して。


そこで気がついた。よくあるゲームの勇者が倒されても教会で「おお勇者よ!死んでしまうとは情けない!」とか言われながら復活するあれは、実は魔王と教会が組んでいて、倒れるたびに運ばれるようになってるだけではないかと。


魔王にまでなると世界全体に退屈を感じる。寿命も魔力が尽きるまで生きる。だからこそ退屈過ぎて遊ぶ思いで世界征服したりする。


そして出てきた宿敵と戦い楽しむのだ。それで死ぬのもまた一興だ。


戦いの結果、満足しなければ、俺のように鍛え直して出直してこいとばかりに送り返す。


きっとこれに違いない。


さて、そんなわけで勇者に期待して送り返したが、勇者はその期待を見事に裏切ってくれた。


俺との力の差を恐怖を考えたのか、自殺してしまったのだ。


だからこそ俺の楽しみが消えてしまった。


次の楽しみはどうするか。


次の勇者召喚を待つか。


だが、勇者召喚には人間どもにとっては多大な魔力を使うみたいで、あと50年は出来ないらしい。


それを待つのもいいが、その間はどうするか。


なら、俺が勇者召喚とやらをすればいいのではないだろうか。


それだ!


ということで、俺は異世界からの召喚魔法を発動した。


それは見事に成功して目の前に現れる筋肉質な男。


肌の色は黒く、身長が高めで、ゴリマッチョと言うのだろうか。


これは鍛えれば強くなりそうだ。


つまり、楽しませてくれそうだ。


では、おきまりのアレと行くか。


「異世界から召喚されし勇者よ!我は魔王!貴様は我に何を望む!世界の半分か!?それとも金銀財宝か!?多数の美女か!?さあ答えよ!」


俺は、声高らかに召喚した男に問う。


人間は初めは驚いたものの、状況を理解したのか、こちらを睨みつける。


おお!これはさらに期待出来そうだ。


そして、男は言葉を発した。その声は太くまさに男らしい。


因みに、異世界からの召喚魔法には、召喚されたものがこちらの言語が分かるようになるバフも付いている為、会話は問題なくできる。


「俺は、女の子になりたい!」


男は答えた。だが、しかし、俺にはその言葉が聞き取れなかった。


「は?」


だから、聞き直す。


「肌が白く可愛らしい女の子になりたいんだ!誰しもが見とれるような姿!聞き惚れる美しい声!そんな少女になりたい!」


男は再び答えてきた。それも細かく注文をつけて・・・


女の子になりたいだと?


こんな黒いゴリマッチョが・・・


「っく!!っくはははは!面白い!良いだろう!お前を女の好きな身体に変えてやる!目をつぶれ!」


期待していた言葉の斜め上。いや、下か。てっきり、俺の言葉通りの事か、お前を倒すだけの力をくれとか、元の世界に返せとか言ってくるもんだと思っていた。


まさか、女にしろといってくるとは思いもしなかった。


いやはや、面白い。


だからこそその願いを聞いてやろう。


そんなわけで男は目を瞑る。


「お前のなりたい姿を思い浮かべろ」


いくら、指定されたって思っていたとおりの姿にするのは難しい。ならば、そいつ自身に思い浮かべた姿に変身させた方が楽だ。


さて、やるか。


【リバース】【チェンジ】


対象物を反転させるリバースに、対象物を変化させるチェンジの魔法を発動した。


普通はそれだけでは性転換など出来ないが、多大な魔力さえあれば、あとは想像力さえあればなんでもできる。


まあ、魔王の俺だからこそできることだな。


そして、ゴリマッチョの黒男は変身した。


光に包まれて、まさに少女が魔法少女に変身するかの如く。


そして光が消えて、そこにいる可愛らしい少女。


誰もが先ほどのゴリマッチョとは思わないだろう可憐な少女。


誰もが見惚れるようなその姿。それが声を出す。


「これが俺・・・、いえ、私か」


ゴリマッチョな黒男だった少女は、自身の腕や身体を見てそう言った。


その声も先ほどのような太い声でなく、透き通るような、それでいて心に残るような声だった。


さて、こいつはこの後どうするかが楽しみだ。


そんな期待に応えてくれたのか、またこいつは面白いことをいってきた。


「次はヒーローね!」


俺の事を指差してそんな意味不明な事をいってくる。


「そうね。貴方は隠しキャラでいいわ!メインキャラはやっぱり将来王になるカッコよくみんなを纏められる王子様と、将来国軍の隊長になる戦闘力溢れる見習い騎士様と、国の未来を考える宰相になる・・・・ 」以下略。


俺の反応を無視して長々とよくわからない事をいってくるこいつ。長すぎて最後の方は聞き流してしまった。最後の方に、「いいわね!この方々といろいろなイベントを重ねて、ゆくゆくは結婚までしたいの!それが私の願いよ!」と纏めてきた。


まったく、こいつは俺の事をなんだと思ってるのか。というよりも先ほどまでゴリマッチョ黒男とは思えない発言に、俺はついつい呆れてしまう。


だが、その呆れも越して面白くなってきた。


なるほど・・・


「いいだろう!ただし誰と結婚するかはお前次第になるし、幸せになれるかもお前の努力次第だ!」


俺を楽しませてくれるなら、なんだって願いを叶えてやろう。ただ叶えるのは簡単だがつまらない。だからお前の行動で楽しませろということだ。


「いいわ。それでこそ、やりがいがあるもの!」


こいつは、俺の言葉に乗ってきた。


「よし、ならば結婚の条件を与えよう。それは、魔王である俺に、そのヒーローとやらと一緒に勝ってみせろ!」


つまりは俺を楽しませてみろということだ。


そして俺の言葉に、目を輝かせるこいつ。


「面白いわね。その条件受けたわ!」


そして、堂々と言い放つこいつの姿をみて、いい奴だなと思った。


そして、こいつは更に言葉を付け足してきた。


「一人称は我でなく俺が本当の貴方なのね。そして、面白い出来事を望んでいる。いいでしょう!私が貴方を楽しませてあげる!」


魔王である俺に向かって、手の平を向けてそう叫んでくる。


なんて奴だ。こいつこそ、俺の望んでいたものだ。


「っふはははは!最後に聞いておきたい。この世界でのお前の名前はなんだ」


俺は笑いが出てしまう。だが、そろそろ物語を始めようかと思い、名前を問う。


「この世界での私の名前は、リシン・グスターよ!そして、最後じゃないわ!始まりよ!」


最後まで声を張り上げてそういってくるこいつに、俺は期待する。


そうして、ゴリマッチョ黒男だった少女、リシン・グスターは俺の前から消えた。


そして物語が始まったのだった。


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