懐かしむ
1
「Omni、今晩のメニューは?」
「歯磨き粉のソテー。歯ブラシのフリッター。」
「今度から歯磨きちゃんとするから許してくれ。」
2
「Omni、今どこ?」
「あなたの後ろ。」
「そうじゃない。」
3
「音楽をかけてくれ。」
「どんなのがお望み?」
「落ち着くやつ。」
ガシャーンガシャーンキィィィン
「できれば人間が落ち着くやつがいいな。」
「おっと。」
4
「Omni、ぼくがもし途中で死んだらこの船はどうなるの?」
「目的地まで自動操縦した後、研究員の1人をコールドスリープから覚醒させ状況判断を任せます。」
「ぼくってもしかして必要ない?」
「そんなことありません。」
5
「この船どうやって動いてるの?」
「すべて電力です。」
「どうやって発電してる?」
「あなたの知らないところで私が自転車を漕いでいます。」
「わお。」
6
「その見た目どうにかならなかったの?」
「あなたに言われたくない。」
7
「次に娘たちに会えるのはいつだろうな。」
「かの星でセーブゾーンを獲得できればステーションを設営し、すぐに地球へ帰れますよ。」
「本当にセーフな星なのかね。」
「さあ。」
8
「昔の人間って、月に行くくらいで騒いでたらしいよ。」
「当時はまだ宇宙革命の前ですからね。軌道エレベーターすらありませんし。」
「ぼくらにとってのなにくらい、すごいことだったのかな?」
「今で言えば、海を泳げるくらいでは?」
「レーズンパンを腹一杯食べるくらいかもね。」
「多分そのくらいでしょう。」
「大騒ぎするわけだ。」
9
「研究員に女性はいるの?」
「何か良からぬことを考えていますね?」
「もちろん。」