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第6話

お久しぶりです。遅い報告ではありますが、女子高校生になりました。相変わらずの亀更新になると思いますが、どうぞ長い目で見てください。5か月置いてすみませんでした。






うっそうと生い茂る木々。空からは色とりどりの球体。ここは本当に日本なんだろうか。






「すみません。ここは異世界ですか?」


「いいえ、異世界ではありません。先ほどから何度も言っていますが、ここはルートの中間地点、現世から来世への橋渡しのような場所です」

長いタイトルのラノベっぽく言ってみたが、冷静な回答が返ってきた。

「ここはどこですか?」

「ルート課の社員寮です。家がある者以外はここに住んでいます」


生産性のない話を繰り返しながら、1つの青い球体を見つめる。


球体が地面に着いた瞬間、球体の青色より少し暗い色の煙が出てきた。煙が消え去ると白装束に身を包んだ人が倒れている。きっとあの人は数分もしないうちに起きるだろう。


さきほどからそんな光景や、ゾンビのように歩く姿を何度も見てしまった。その中には人ならざる者も確かにいた。全員、白装束だが。

「聞いていますか、大和君?」



えぇえぇ、聞いてますよ。半分、現実とおさらばしているだけです。



なんて言えないので前を歩く琴葉さんに生返事をしつつ、自分のいる場所にまた視線を戻す。

ここは地面の下である。正確には地下1階だ。大きなエントランスから四方に伸びた廊下。その先は多分、部屋があるのだろう。

天井はマジックミラーらしく、誰もこちらに目をやる者はいない。雑草も生えているようだが、ほとんどが砂利だ。ふむ……




俺の理解をはるかに超えていて卒倒しそうだ。誰か助けて!




と思っても、いるのは琴葉さんだけなので思考を別のことに無理矢理切り替え歩く。


「どうして砂利があるのに死亡者が歩いているのが見えるんですか?」


全然、切り替えられなかった。気になりすぎて、ぜんっぜん!切り替えられなかった。


「それは……企業秘密です」


「俺、企業側なんですけど」

振り返って少しドヤッた琴葉さんに震えながら言った。もちろん、泣きそうだ。

「私もよく分かってないんです。昔からこうだったので慣れれば気になりませんよ。

あと、喋りにくいので隣に来てください」

「あっはい」

さっと隣に並んで歩く。俺よりかは頭1つ分くらい低い琴葉さん。黒髪が歩くたびに揺れて少しいい匂いがした。なんていうか、せっけん?

「せっけんで髪を洗っているんですか?」


「大和君て意外とアホなんですね」


バカにされた。「アホ」って真顔で言われた。美人な人に「アホ」って真顔で言われるの怖いな。


「何度も言わないでください。なんだか罪悪感が芽生えます」

「…心読みました?」

「声に出ています」

「せっけんの匂いがしたのでせっけんでも使ってるのかなって思ったんです」

「会話が成り立っていませんよ」

「わざとです」


「……」

「……」


「……せっけんの匂いのシャンプーかは分かりませんが身体を洗っているのはせっけんです。たまに服もせっけんで洗っています」

これでいいいですか?と呆れた顔で言われて、丁寧に教えていただきありがとうございます、と返そうと思ったが


「洗濯機ってないんですか?」

疑問に思ったことはすぐに聞いてしまう俺、多分アホだ。


「ありますよ。なんなら、小型冷蔵庫もあります。それに何か欲しいものがありましたら大和君の給料で買っていただいて部屋に運んでもらっても構いません」

「給料が出るんですか?」

「仕事なので。通貨は日本円。給料は、その月に対応した死亡者の数なので変わっていきますが、大体月収30万くらいと言ったところですね」

「言われると高く感じますが、実際に働くとそのくらいですかね」

「先ほども言いましたが対応した死亡者の数でその月にもらえる給料は異なります。ですから、あくまで平均です。そして、大和君に悲報です」

「なっ何でしょうか?」

悲報ってなんだろう?まさか、家賃を今すぐ払えとかかな。



「お弁当のお金、500円を支払っていただきます。もちろん、税込みで!」

本日2回目のドヤ顔です。さらに親指まで立ててます。



「俺は今、借金をしているってことですね」

「はい。まぁ、働いた分の給料から差し引いておくだけなので気にしないでください。一応、伝えておこうと思って」

「分かりました。あの…どこまで歩くんですか?相当歩いてると思うんですけど」


そう、さすがに歩きすぎだと思うのだ。壁際には色とりどりのドアが規則正しく並んでいるがなぜか歩き続けている。行き止まりになって、もと来た道を戻ったのはつい先ほどだ。

「こんなに遠いとすぐに仕事にいけないんじゃないですか?」

「心配しないでください。すぐに着きます」

そう言ってごまかした琴葉さん。


そろそろ疲れてきたなぁと思っていると突然、1つのドアに意識がもっていかれる。


何の変哲もないドア――マンションにあるような茶色っぽいドアである――に思わず、立ち止まってしまった。まだ、部屋も見ていないのに…

「俺、この部屋に住みたいんですが…もう誰か入居していますか?」

住みたいという欲求が出てくる。


俺の問いかけに一瞬驚いた琴葉さんだが、すぐに笑って「誰も住んでいませんよ」と言った。

「部屋の中はさほど変わりませんがその人の性格によって選ぶドアは違います。大和君は意外と凡人寄りでしたね」

そう言いながらポケットから鍵の束を取り出した。


……今、さりげなく貶されたような気がする。


「あっ、そうそう。ここの通路はこの白い床です。他の通路はそれぞれ色の違う床なので間違えないように。それとこの部屋は413号室です」

「分かりました。白い床で413号室ですね。……あのなんでさっきから笑ってるんですか?」

先程から小刻みに震えて笑いを堪えている琴葉さんは鍵を差し込めないでいた。

「いや…こんな偶然あるんだと思いまして。4は日本では不吉な数字、13は外国では不吉な数字で有名です。大和君は幸運なのか不幸なのか分かりませんね」

と大体こんなことを言っていた。ただ、途中で笑ったり吹いたりしていたので俺は複雑な気持ちだ。


ひとしきり笑った琴葉さんは鍵穴にどこにでもありそうな鍵を差した。ガチャッと音がしてドアが開かれる。



「普通ですね」

最初の感想はこれだった。



通路に2つの扉―――多分、お風呂とトイレ―――があり、床はフローリング。玄関も狭すぎず広すぎない靴箱付き。通路の奥は広そうだからリビングかな?

「入らないんですか?」

「あっ入ります。失礼しま~す」

まるで他人の部屋に入るような感覚で靴を並べる。琴葉さんもあとに続いて靴を並べた。


右側の扉を開けると洗面台とお風呂の扉らしい引き戸。左側の扉は洋式トイレで機能付きだ。

奥に行ってみると大体9帖ほどの部屋に壁付け型キッチンがポツンと置かれていた。あとは何もない。

そう、何もない・・・・のだ。



「専務、どうして窓がないんですか?」

「先ほども言いましたが、ここは地下です。光が入ってくるわけないでしょう」

「わぁ、ホントですねぇ!忘れてましたぁ…って洗濯物はどうするんですか!」

「洗濯機の機能に乾燥機能がついています」

親指を立てて「問題ないでしょ」と断言してくる琴葉さん。

「……それならいいです」

そして、納得する俺。部屋に入ってまだ5分程度の出来事である。


「それで…お気に召されましたか」

「まぁ、住んでいいのならここがいいです。ちょっと贅沢な広さですけど」

まだ、キッチンくらいしか置かれていないせいかすごく広く感じる。

「あぁ。そのことでしたらもうすぐ」

ピンポーン、と琴葉さんの言葉を遮るようにチャイムが鳴らされた。ってチャイムあったのか。

「来ましたね」

琴葉さんがドアの方に視線を向けながら言った。俺も同じようにドアのある廊下を見た。


「引っ越し業者ザシキワラシでーす」

女の子特有の高い声がドア越しから聞こえてきた。妖怪の名前の業者が来ましたようです。


俺はただいま、混乱中。


「鍵は開いているのでどうぞー」

俺が黙ったままなので琴葉さんが代わりに言ってくれました。ありがたいのか、俺が言うべきだったのか。

その声を合図にドアの開く音が聞こえると「じゃぁそれはあっちでこれは奥…とちょっと待ってて」と先ほどの声と足音が部屋に入ってきた。

そして、琴葉さんの顔を見て


「あっ!やっぱり琴葉さんだったんですね!お久しぶりです」

「幸子さん、お久しぶりです。お元気にされていましたか」

「はい!琴葉さんもお元気そうで何よりです。あの…妹はきちんと仕事していますか?」

「えぇ、最初のころよりはスムーズに受け答えも出来ています」

「それはよかった。ちゃんとしているか気になってたんですよ。あんまりあの子、話したがらないので」

「良いお姉さんを持っていて私は羨ましいですよ」

「そっそんな!滅相もありませんっ!」


どうやら、2人は知り合いのようだ。それも、幸子さんと呼ばれる方の妹さんがここで働いているという。それにしても、だ。

俺は幸子さんを観察する。黒髪のおかっぱ頭に帽子を被り、「ザシキワラシ」と右胸に書かれたつなぎを着ている。綺麗、というよりは可愛いが似合う顔立ち。背は小学生くらいだろうか。しかし、小学生でないことはすぐに分かる。


「座敷童子って引っ越しの妖怪でしたっけ?俺の知識が確かなら、座敷童子は幸せをもたらす妖怪ですよね」

話にひと段落がついたようなので質問を投げかける。2人は顔を見合わせた。

「この方は?」

「新しい新入社員の大和君です。この部屋は彼が住むことになっていて」


「あぁ、だからか」と腕を組んだ幸子さんは少し考えて俺に視線を向けた。ただ、背が小さいので上を向く形になっている。

「あなたの考え通りに言えば、家にいる間は幸福を与え、家を去ればその家は衰退するという風な話ですね。まぁ、いろいろな座敷童子がいるので一概には言えませんけど」


どうやら少し違っていたようだが、とても丁寧に教えてくれた。

「ありがとうございます。ちょっと勉強になりました」

「いっいえ!私はただの引っ越し業者ですから」

帽子を深く被った幸子さんは「しっ仕事に戻ります」と言って廊下の方に消えていった。


「タラシですか?」

「誰がですか?」

琴葉さんはときどき分からない。



「また、ザシキワラシをご利用ください。失礼しました!」

引っ越し作業が終わり、5,6人はいた部屋がシーンと静まり返っている。しかし最初のだだっ広い部屋に洗濯機や小型冷蔵庫、ベッドなどが運び込まれ、部屋らしい部屋にはなった。

「その他の生活用品はまた明日、ということで構いませんか?」

「はい。でも、この近くにありましたっけ?お店」

俺が屋上で見た限り、そんな建物はなかったような。

「それはまた、明日にでも。では、そんな大和君に良いお知らせと悪いお知らせがあります。どちらを先に聞きますか?」

にっこりと笑った琴葉さんは少しウキウキしているように見える。

「良いほうを先に聞きます」

「……分かりました」

少ししょんぼりしているのはなぜだろう。


「では良いお知らせ。明日はまだ仕事を始めません。生活用品や大和君の欲しいものを買いに行ったり、少し仕事場を見たりなどが明日の主な予定です。

そこで大和君の教育係にすべて丸投げします。その方に明日の付き添いやこれからの仕事を教えてもらってください」


「専務が教えてくれるんじゃないんですね」

とっさに出た言葉に琴葉さんも俺も驚く。

「…私も仕事がありますので」

「すっすみません、図々しくて」

「いえ。今は私としか話していないのでそう言うのも分かります」

そう言いながら、ポケットから紙を取り出した琴葉さん。

「なので、教育係はあみだくじで決めましょう!」

見せられた紙には線がたくさん書かれており、下は折り曲げられている。


なんかそういう事じゃない気がする。そう思う俺はおかしいでしょうか。


結局、あみだくじを引き「誰になるかは明日のお楽しみです」と言われた。

「さて、あみだくじも引いたことですし、次は悪いお知らせですね」

またもウキウキし出した琴葉さんに何を言われるのか不安になる。




「悪い知らせというのは大和君の借金が100万を越したことです。もちろん税込みで!」

本日3回目のドヤ顔と2回目の親指を立てられた。




頑張って働こう。そう決めた瞬間だった。




あのあと、大和君はお風呂に入ってベッドにダイブした瞬間にぐっすり寝ました。

幸子さんの妹さんは多分、今後登場しますが予定は未定です。

また、更新が遅くなると思いますが、どうぞ長い目で見てください。あれ?これさっきも言ったな。

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