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第4話

今回から研修編に突入。まぁでも、3,4話くらいで終わる。

「準備をしてくるのでここに座っていてください」

そこは最初に俺がいた取調室だった。俺を部屋に入れると足早にどこかに行った琴葉さん。お茶でも用意していよう。


突然だがこの取調室、飲み物やお菓子、雑誌などが揃っている。試しに雑誌を開けると「突撃!?アマテラスのひきこもり生活を追う」という見出しが目に付く。めっちゃ可哀想なんだけど。これ以上触れてはいけないと判断し、雑誌を戻す。


そして、当初の目的を果たそうとコップにお茶を入れているとガチャッと後ろで音がした。

「何をなさっているんですか?」

「あの…えっと…お茶を出そうと思って」

まずかったかな。図々しかったかな。うわ…どうしよう。

「いえ…お心遣い感謝します。ちょうど、お弁当を食べようと思っていたので」

そう言って、ピンクの包みに入ったお弁当とコンビニ弁当を机に置く。

「あっお金…」

「今は無一文でしょう。別に返さなくてもいいです。社員になってくれただけでもありがたいので」


琴葉さんが可愛い包みを開けるとこれまた可愛いピンクのお弁当。柴犬が所々にプリントされている。


まさか…な。

「そのお弁当はどこで売られているんですか?」

「売られてませんよ。このお弁当を届けてくれた狛が作ったそうです。世界に1つだけのお弁当箱です」

愛されている。いや…それだけでは表現しづらい。あぁ…良い表現があった。


重っ!愛が重すぎてひくわ!!てか、あの巨体でこのお弁当箱を作ることにも若干ひくわ!!何!?器用なの!?


「大和君、どうなされたんですか?顔が引きつってますよ」

「おっお気になさらず、どうぞ食べてください」

「……?それでは、いただきます」

そう言って、箸を進める琴葉さん。というか、お弁当の中身が定番過ぎて笑える。卵焼きにグラタン、白米の上にふりかけなどなど。

対する俺のお弁当は、生姜焼き弁当。まぁ…見た目は普通だな。ただ、偏りがあるからそこが問題だな。もう少し野菜を多く入れた方がいいだろう。


「…くん、大和君?」

「あぁ!はい!すっすみません。また考え事をしてました」

やっちまったぁ。さっき、気をつけるって言ったのに。

「その癖は治したほうがいいけれど、今はそこじゃないの。さっきブツブツ言ってたお弁当のことなんだけれど」

えっ…抑えきれずに声に出してた?やばい…この癖はマジで治そう。

「おっお弁当ってこの生姜焼きですか?」

「えぇ。偏りがあるって聞こえてきたから」

「あぁ、そのことですか。その…野菜がたまねぎしか入ってないのでもう少し健康的にしたほうがいいと思いまして。例えば、野菜じゃなくても果物とか入れたり、肉を減らしたりしたらいいんじゃないかなぁって…思ったんです」

やばい…俺、何言ってんだ。ダメだ。もう、心が折れる音がする。ポキポキッと。弁当食べよう。

小さく「いただきます」と言って生姜焼きを食べ始める。


「食堂のおばさんに言っておきます」

唐突に告げられた食堂ある宣言。おばさんというオプション付きで。

「私たち社員はいつもハードな仕事をしているのでおばさんもスタミナのつく料理を出してくれていたんですが…やはりスタミナだけではダメですね」

メモのようなものを取り出し、書き留めている。専務ってこういうこともしなきゃいけないのか。

「…大変ですね」

今日はボロが出る日のようだ。余計なことを口走る癖も治そう。

「楽しいから別にいいんです」

ふと琴葉さんを見ると―――――嬉しそうに笑っていた。そのとき食べていたミートボールが美味しかったからなのか、この仕事のことを考えていたのか……。俺的には後者であってほしいなぁと思う。


「どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ?」

「きっ気にしないで…ください!」

そして、慣れないものを目にするんじゃなかった。正直に言うと笑ったらめっちゃ綺麗だった。

なんで、今まで笑わなかったんだろう。なんで、無表情なんだろう。たくさんの疑問がグルグルと頭の中で回り続ける。それに伴い、箸が進む進む。


気付いたときには手を合わせて「ごちそうさま」のポーズ。人間の無意識って怖ぇ。


「ごちそうさまでした」

いつも通り無表情の琴葉さん。お弁当箱を包みに仕舞うと椅子から立ち部屋から出て行った。

慌ててお弁当を片付けると案外、すぐに戻ってきた琴葉さん。ホワイトボードをちゃっかり連れてきて。


「それでは、これから研修を始めます」

どこからか指差し棒を取り出した琴葉さん。

しかし、人差し指に「閻魔ちゃん」と書かれている。きっとプレゼントされたんだろう。誰とは言わないが。


「まず、なぜこのルート課が出来たかと申しますと……閻魔様が1人でするのがめんどくさくなったからです」


「ちょっ!?そんな理由でいいの!?そんな理由で働かされんの!あっ…」

やべっ、琴葉さんにタメ口で話しちまった。

「すっすみません、つい」

「いえ、あなたのような反応をされた社員は少なくありません。では、続けます。先ほど言ったとおり、閻魔様がめんどくさくなってこの課はできました。そして、世界各国がこの課を真似して今では約180カ国が導入しています」

あとの16カ国はきっと、原始的な方法とか使ってんだろうな。ご苦労様です。


「そして、この建物。形はドーナツ形になっています。中は森になっていて絶対に建物にたどり着くようにしています。逃げようとしても……無駄です」

あれ?最後、なんか引っかかるなぁ。何でかな~?知ったらまずいことだよね~。よし…諦めよう!


「あの…この建物からどうやって天界とか地獄とか行くんですか?」

「簡単です。ゲートをくぐるだけですから。その時に記憶もなくします」

どうしよう……。国民的アニメのドアを思い浮かべてしまった。さすがに記憶をなくす装置まではなかったと思うけど。

「移動時は私たちとはほぼ関係ありませんから安心してください。関係してくるのはその前のルート通告です。どこに行くのか何をすべきなのか死亡者には知ってもらわなければいけません」


なるほどって言いたいところだけど……やっぱりおかしい。

「じゃぁなんで、記憶を消すんですか?記憶を消すくらいなら教えなくてもいいじゃないですか」

「ごもっともです、大和君。しかし、いくら記憶を消すと言ってもただ単にすべてを消すわけではないんです。例えば、間違って事故らせた天使であったり異世界を救ってほしいという神様だったり。私たちは死亡者の中で美化されるのです」


……はっ話についていけねぇっす。


「分かっていないようですね。私たちはどこかの天使であったり神様であったり……死亡者には違う何か・・に見えているのです。大和君が言っていた漫画や小説とほぼ同じといっても過言ではありませんね。これはまぁ…閻魔様の暇つぶしです」

閻魔様はどうやら、この課を趣味にしているようだ。子どものいたずらみたいだ。


「細かいところは仕事をしていくうちに聞いてください。私たちの仕事は死亡者にルートを伝えること、暴れているのを止めることです。ときどき、視察や国際会議などにも行くので知っておいてください」

「はい、分かりました」

意外に仕事が多い。特にハードなのはやっぱり暴力沙汰になることか。筋肉とかつけねぇと。

「これから、建物内の案内をします。社員の仕事の様子も見ていてください」

そう言って椅子から立つと、ホワイトボードに紙を貼る琴葉さん。建物の見取り図のようだ。


「それでは、行きましょう」

「はい」

そうして取調室をあとにした。


きっと私はオチの付け方が上手くないと思うんだ。

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