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Red Eyes  作者: 邪夢
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005 - 決意×修行×訪問者

 仲間


 護りたい、それだけの事だけれど果てなく遠い

 強く在りたい。心も、身体も

 戦わなければいけない。声と、そして、自分と


 もう、オレの前では誰も傷つかせない為に――






 小鳥の囀りが耳朶を撫で、朝陽が瞼を通して瞳に染み、開いた窓からは街を見下ろす様に巨大な塔が聳えているのが見える。時折、時計の針が永遠の時を刻むようにゆっくりと廻っていた。

 空気は何時もより冷たく、吸い込むことでさえ清々しさを覚える程に澄んでいて、青空を模したかのような青い屋根の軒並みに独特の雰囲気を醸し出す町並みは、此処が自分の暴れたあの場所でないことを知らせていた。


 見慣れぬ風景に、思わずベッドから体を起そうとするものの、身体全体が軋むように悲鳴を上げてそれを許さない。その強烈過ぎる痛みを感じると同時、脳裏に過ぎるあの陰惨な光景が夢ではないことを悟った。

 身を焼くほどの過ぎた力、悪意に満ちる甘い囁き声。逃げ惑う人々に骸に悲鳴、血飛沫に燃え盛る炎、黒々と立ち昇る黒煙。鮮やかに甦るその光景に一瞬だけ瞼を閉じてはまた開くけれど、謎は全て謎のままで。


 ドアの開く音が室内に転がり込み、ひょいっとルシリアが顔を出す。

 軋む音に何故身体がびくついたのかは判らない。判りたくも無かったけれど、後ろめたさが何よりも先走る。何でああなったのかという事よりも、何で如何にか出来なかったのかという自問自答が頭蓋を伝い木霊した。


 「シエルは……」


 先日の瞳に映った最後の光景。悲劇のような惨劇が脳裏に克明に蘇り、烙印のように焼き付いていく。

 命懸けで闇から引き摺り出してくれたシエルを、この掌に掛けてしまった。血塗れた景色の中に見た暖かい抱擁は確かにシエル

のもの。出会った頃から助けられ、肌で感じたその優しさを違えることは決して無い。


 「大丈夫ですよ。私が治癒魔法を施したので命に別状はありません。ですが、流石に傷が深かったため少しの間は動けないでしょう。まぁ、療養と思えば何て事はないですよ」


 何でもないと言うように首を傾げながら微笑むルシリアの言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろす。もし、あの場に彼がいなかったらどうなっていたかと不安が過ぎる。

 今でさえ深手だというのに、下手をしていたらまた大切な人を失くすところだった。遣る瀬無さが何時の間にかベッドのシーツを鷲掴みにしていたけれど、今は無事であったことを喜ぼう。


 「ありがとう……ルシリア」


 「いえいえ、聖職者として当たり前の事をしたまでですのでお気にせずに」


 軋みを上げるベッドの上で頭を垂らして礼をしても、ルシリアは気にするなと同じ様に返事を繰り返した。

 信頼されてないのか、それともただ単に気を重くして欲しくないだけか。だからなのか、力になりたい、心の底でそう思った。結果として、それが自分の為なんだと判っていても今は割り切るしかないと、もう一度拳を握り締めた。


「ところで、此処はどこだ……それにその子は……?」


 話ながらも窓の外を見渡すが、何処も彼処も見覚えのない建物と風景ばかり。一際目立つ塔はどうやら大きな時計塔の様にも見える。唯々、時を刻み続け街を見守るシンボルの時計塔には、見たことはなくても聞き覚えくらいならあった。

 そしてもう一つ、同じ部屋の反対側のベッドで眠る少女が一人。静かな寝息とは裏腹に、額が汗ばみ、眉間が歪んでいるように見えるのは間違いではないだろう。


 「此処は国境都市デルタ・ベルタです。近くの町に運ぼうとしたのですが、何せ貴方は賞金首ですから遠い方が良いかと思ったのですよ」


 デリスからはフォールは勿論、ローエン王国と隣接する帝国領に位置する砂漠の都市デザリアス、そして船を使ってはローエンの首都アイゼン付近の衛星都市アリウス、果てにはリヒテバルトとは異なる他の大陸にも足を運ぶことができる。が、生憎と船を待つ余裕は無く、近くに逃げ込んでは追っ手に捕まるであろうとの事だ。


 「それと、この子は先日の件で怪我をしていたので一緒に連れて来ました。二人と比べたら重傷ではないので心配はありません」


 未だ眠りに着く少女に視線を移しながらルシリアは呟いた。

 くしゃくしゃにされるシーツに、苦悶に歪む声。何かから逃れようとしているのか布団の中で身動ぎする少女を、オレには見ていることすら苦しい。


 「オレが、やったのか……?」


 あの夜起こった件については、ある程度の経緯は記憶とルシリアの話もあって凡そは理解している。だとすれば、彼女に怪我をさせたのはオレかもしれないし、或いは両親共に。


 「それは彼女自身が知っていることでしょうね。それに、貴方の所為ではないのですから、貴方は唯前を向いていればいいと思いますよ」


 彼女の額の汗を拭い、濡れたタオルを交換しながら言う。

 ルシリアは人を導く(たすける)のが上手だ。聖職者という役柄ではなく、純粋に人を助けたいという気持ちが言葉やその風貌に体現されているようで、そんな感じがするのはその聖職者たる衣が助長させているのだろうか。


 「そう、するよ……」


 これから自分が死んでしまうまでに何度同じ体験をするか判らないし、そう何度も同じことで挫けてはいられない。だから、今はルシリアが言うように前を向くことだけに専念しよう。


 「――……此処が三カ国の境目にあるデルタ・ベルタかぁ」


 その名の通り国境の境目に造られたことからその名が付いたとされている街。歴史何かの話では何度も聞いた事があるけれど、来るのには遠く険しい為これが初めてになる。

 北に行けばシュバルバルトへ、南に行けばローエンへ行くことができ、西に行けばハイゲルへと足を運ぶことが出来るこの街はその性質上、行商人やらが多く訪れる交易地点でもあり、この街にいながらにして三国の食べ物などを楽しむことが出来る。今すぐにでも綺麗な街を散策したいところだが、オレにはやらなきゃいけないことがある。いや、出来たと云うべきか。


 「シエルが動けるまでどんくらい掛かる?」


 背景を切り取って額に納めたかのように鮮やかな窓を背に、ルシリアに尋ねる。


 「そうですね……目が覚めるだけならば時間は掛からないと思いますが、動けるまでとなると……彼女ならば一週間程ですね」


 組んだ掌に顎を乗せて考え込んでは数秒、そう言葉を紡いだルシリア。

 安心する反面、あの傷で動けるようになる時間が一週間というのはまともな人間では無いのではないだろうかと疑ってしまう。何せ、巨大で肉厚な刀身の一撃をその身一つで真正面から受け止めたのだから、常人であれば全治数か月かあるいは死んでしまったとしてもおかしくはない。

 少しばかりそんなことを考えていると、ルシリアが覗き込むようにしてこちらを見ていた。


 「じゃあその間、そこらでちょっと身体動かしてくるけどいい?」


 言いながらベッドの横に立て掛けられているツヴァイハンダーを手に取って背負い込む。今までは唯の武器であったけれど、何故か重く感じるのは今までこの刀身が無慈悲に屠ってきた命が重く圧し掛かっているからか。

 これからの事を考えれば。暴走しなくてもあれくらいの事は出来る様にはなりたい。そして、あの《力》を制御出来るようになれれば、皆の力にもなれる。


 「それは構わないですがその前にひとつだけ、アイルに言っておかなければならない事があります」


 ルシリアの表情が少しだけ硬く、陰ではない影が差すのを感じた。暗く、重くなるのを感じ取らされたとでも言うべき問い掛け。それ程に彼の表情や感情には訴えかける何かがあった。

 オレは唯、それを受け入れることしか出来ずに頷いて見せるだけだった。


 「あの夜、黒い騎士が現れ、アイル、貴方を連れ戻しに来たと言っていました」


 それまでの場の雰囲気を攫って行くかのように、風が窓を通り抜けては廊下へと流れ、行き場の無い気持ちのように吹き荒れた。木々を揺らし、擦れる木の葉の音と風の音だけが耳朶を叩く。


 「そして、貴方の名前は《アイル》では無い、と」


 続け様に言われた事実に頭が着いて行かない――のではなく、思考がそれを受け入れまいと拒絶する。いきなり言われたそれは、自分の存在を否定する話。

 突き付けられた事実を容易に受け入れられる訳もないのだから普通なのかも知れないけれど、何も知らないあの時とは違う。だからなのか、葛藤やそれに似た感情が沸き上がり、心の中で弱弱しくも火を灯した。

 こんな状況の中ですら身体中の全神経がその謎に向かってフル稼働しているのが、何故だか自分でも判らない。熱くなっているというのにも関わらず、もうひとり冷めた自分がいるかのような不思議な感覚。


 「だけど、今のオレはアイルだ。そうだろ?」


 そいつが何を目的としているのか判らないけれど、オレを如何にかして操っているのは間違いない

 だからといって、今のオレが存在しない訳でもない


 「オレは………そいつ等をぶっ潰して、オレの存在を証明してやる」


 縦一文字に構えたツヴァイハンダーに向けて誓い、ルシリアの横を通り抜ける。


 「それに……人間じゃなくても、オレは人間の味方でそいつ等の敵。でもってそいつ等を倒して、今まで亡くなった皆への償いをするって決めたから」


 ピタりと足を止め、背中合わせのルシリアに聞いて貰うようにもうひとつを誓う。

 孤児である自分の存在とその意義は判らない。だけど少しだけ霧が晴れたとすれば、それは黒幕がいるということ。それが判っただけでも十分、オレはそれを倒す為に生きて強くなる目的が出来たから。


 「そうですか。では、私は少し調べる事があるので。あ、夜には戻るので心配はしないでください」


 先とは違って安堵して納得したような表情を浮かべてそう言い残すと、ルシリアは空間転移(テレポート)を唱えて音も無く消える。音と共に余計な感情さえも攫って行ってくれたのか、その場には数秒前まで漂っていた湿った空気は無かった。


 「さてと、行くかな」


 丸型の小さな机に置かれた手持のポーションを、腰に携えたポシェットへ適当に詰め込んで部屋を後にする。少し冷たい爽やかな風が窓から吹き抜ければ、そこにはたった一つの感情だけが残された。


 剣士として、戦うことを決意したオレの第一歩だった。未だベッドで眠るシエルと少女に振り返ることなく部屋を出た。


 「……」


 ふと、見られているような何かの気配を感じたが、アイルは気にも留めずにその場を後にした。






 地を這う音が耳朶を叩き、連続して草木の間を駆け巡り、背筋に気味の悪い寒気を植えつけて行く。その身体に纏わり付くような音はどんな遠くに在って微かな羽音や足音だとしても、蟲というだけで嫌悪感を産む。ましてや、鬱蒼と生い茂る森林の中なら尚のこと。

 此処《巨虫の台地》はデルタ・ベルタの南に位置するローエン王国から来る街道だが、道と呼べる様な道は無い。掻き分けられたような獣道が存在するだけで其処は蟲や植物たちの棲家となっている。


 「おッそいんだよおおおおぉぉぉーーー!!」


 草木に模していた植物に切れ目が入ればその中からは鋭い牙がずらりと現れ、獣が如く襲い掛かって来る。屈んでその一撃を避け、そのまま半回転してツヴァイハンダーを横に薙ぐと、両断されたその植物は茎から上が徐々に枯れていく。

 マンドラゴラと呼ばれるこのモンスターは、そこらに自生している草花に擬態し、不意に相手を攻撃するモンスターで見つけることが厄介極まりないがそれだけ。根っこごと動けるものもいるがしかし、その動作は緩慢で容易く避けて斬ることが出来る。


 倒した直後の気の緩み。野生はそれを見逃さない。

 何かが射出されたような音が鼓膜を揺らした時には既にそれが絡みつき、身動きすら取り辛い状況になっていた。


 「こんの……ッ……!」


 蜘蛛の糸は粘着力が強く、捻じ切ったり振り解くことは容易ではない。加えて、解こうと動けば動く程に絡みつく性質上、少しずつ慎重に成らざるをを得ない。

 だが、粘っこく絡みついた糸を取っている間にも鈍足だが着実に、その八本の脚を動かして歩き近付いているのが視界の端に入ってくる。


 「ギギギギ……ギイイィィーー!!」


 射程距離まで詰めてきたのか蜘蛛はそのまま勢い良く地面を叩き、その鈍重な見た目とは裏腹に跳躍して飛び掛って来た。

 黄緑色の体躯にそれから生える嫌悪感を覚える気味の悪い蜘蛛独特の体毛、そして強固な糸を吐き出す蜘蛛の姿をした昆虫モンスターは此処、巨虫の台地で一番生息数が多いグリューン。


 「おめーなんかに食われてやる理由は……ッねーよ!」


 人間の肉くらいなら楽に抉れそうな醜悪な顎に生え並ぶ鋭い歯の一撃をツヴァイハンダーの刀身で防ぐ。が、グリューンは離そうとせずにそのまま刃に喰らい続ける。

 流石に、この人間大の蜘蛛を直接徒手空拳で相手にするには危険が過ぎる。

 背中を仰け反らせ、未だ蜘蛛が獅噛み付いているツヴァイハンダーを背後から眼前へ半円を描くようにして振り下ろしてそのまま地面に叩き付ける。グシャッと音を鳴らし、その二メートルにも及ぶ体躯から紫色の体液を飛び散らせて断末魔を揚げる間もなく絶命した。


 「やっと本命が来たか」


 この台地を踏み入れてから鳴り響き続けている地を這う音。それを発するこの地の主が、生い茂る緑葉の合間からずるりとその巨体を現した。


 「初めて見るけど気色悪い……」


 何枚もの赤い甲羅がうねることから赤芋虫と呼ばれているシルトセンチだが、本来は巨大な百足。

 甲羅を盾とした百足。盾百足だからシルトセンチという名前が付けられた事から、その甲羅の堅固さが窺われる。その巨躯に似合わないスピードで地を這い、強靭な顎に凶刃な牙で裂き、毒を吐く。この台地の食物連射の頂点に立つ強敵だ。


 オレを前に身体をうねらせるだけで襲ってくる動作は無いものの先端部分、甲羅の下に覗く三つの複眼がオレを捉えて離さないところを見ると、様子見をしているのだろう。


 「さてと……ま、こっちから行くぜ」


 シルトセンチの周りをゆっくりと歩き、徐々にその距離を詰める。

 巨大に見える風貌からは想像もつかないけれど、赤い甲殻の中で伸縮する筋肉の塊が獲物を捉える速度は蛇のそれにも似た速さを持っていると聞く。


 ブーツの底が大地を躙る。その微かな音に殺気を感じたのか、赤芋虫がピクりと動いた。

 地を強く蹴り、埋まりつつある間合いを一気に詰め、そのままツヴァイハンダーを一刀両断に振り下ろす。それでも眼前の甲虫は微動だにせず、その体躯を小さく丸めるだけ。


 「硬い…ッ……」


 構わず振り下ろしたツヴァイハンダーの無骨な刃は、その甲羅に傷ひとつ付ける事も敵わず手元に弾き返されて。僅かに衝撃の残る掌を見詰めながらも前方の獲物へと視線を向ける。

 何もせずに身体を丸めたのは、甲羅と甲羅の間に生じる本体への隙間を無くす為のものか。野生の生物なりの本能とでも言うのか、目の前のそれに知識なるものがあるようには見えない。


 腕に残る痺れに舌打ちしながら、正面に赤芋虫を捉え正眼に構える。

 オレの一動作が終わり、次に移る僅かな瞬間を狙ってシルトセンチの赤い身体が瞬間的に伸びる。それはまるで、蜷局を巻いた蛇が獲物を捕食する際の様に眼にも止まらぬ速さ。

 寸での所で刀身を盾にして一撃を防いだものの、刀身伝いに奔る衝撃で後ろに弾き飛ばされそうになる。両足で踏ん張ることで転倒だけは免れるがしかし、その焦りを無にするかのようにシルトセンチはカウンター狙いか、再びその体躯を丸めてじっと動かない。


 「っこの、なめんなぁぁぁぁーーーー!!」


 丸まったまま動かないシルトセンチに向かって大地を弾き跳び、大上段からの一刀両断を振り下ろすが雄叫びも虚しく弾き返される。上体が逸れるのを確認してか、再びヤツの身体が蜷局を巻き始め、そして伸びた。

 その刹那、甲羅の間に僅かだが、堅固に覆われていた本体の肉が見え隠れする。

 泳ぐ上体に身を任せそのまま背後へ流れるように落ちシルトセンチの攻撃を避け、わしゃわしゃと気味が悪い多脚のついたドテっ腹を蹴り上げ、後ろへと投げ飛ばす。


 ダメージに奇声を発すものの、土煙から出てくるヤツに外傷は見られない。

 蟲とて知能はあるだろうが、コイツにはそれを認識するまでの知能は無い。丸まってのカウンター攻撃というのはどのシルトセンチにもある所謂本能というものであり、知能ではないはず。


 「ならッ……」


 そうであるならば、容易い。

 バカの一つ覚えみたいに丸まる赤芋虫へ今一度斬り下ろす。が、やはり赤い甲殻にその一撃は弾かれ、両腕に痺れを奔らせる。それを見てほくそ笑んだだろうシルトセンチが大口を開けて肉迫する。

 伸縮からの咬みつきを身体判個分ほど逸らす事でギリギリのところで躱し、横をすり抜ける甲羅の間にツヴァイハンダーを刺し込み捲るようにして深く突き刺す。


 「ギギギ…ッ…ギイィィーー!!」


 体内から毒液が噴出すと同時にツヴァイハンダーを捻る様に抜き取り後ろに飛び退ける。威嚇か激昂か、兎に角雄叫びを揚げているがしかし、甲羅が一部剥がれたシルトセンチなど最早敵ではない。

 痛みに身体を強張らせ、本能とでも云うように甲虫は気を逆立てて此方を睨んで離さないけれど、穴が開いた盾が幾ら強がったところで意味は無い。


 「これで……終わりだッ!」


 周りの木々を死角にして近付きながら、威嚇としてツヴァイハンダーの鞘を奴の眼前に投げつける。直後、怯んだ一瞬を見て鉄塊の刃を振り翳し飛び掛かる。串刺しにする形で刃を突き立て、そのまま引き裂くように横薙ぎ一閃。

 耳を劈くような断末魔を鳴り響かせながら、毒々しい血を流し、赤い体躯は物言わぬ亡骸と成り果てた。

 最後の一撃によって飛び散った毒液が付着した部位の服を引き剥がす。奴の毒は強力な酸性、皮膚に喰らったらたちまち溶けてしまう程らしく、焼けるような音を立てて服を溶かしていた。


 「もっと数をこな…うぉッ……――」


 耳元で何かが空を裂く。風切音が気配と共に危険信号を巡らせ、それに従うように身体は滑った。


 「……死骸?」


 気配のした方を振り向くと、そこにはマンティスの死骸が転がっていた。死体の向きからして背後から襲おうとしていたのが判る。その寸でで殺られたであろう死骸には矢が一本、眉間を狙って刺さっていた。

 幾ら格下であろうとも、クリティカルな攻撃を繰り出すということは余程の技術が要される。増してや他の生物とは違い、線が細い蟲のそれを狙えるというのは只者ではない。


 「こんな子供が王国の追い回してる賞金首ぃ~?」


 女の甲高い声が、センチシルトの向こうから聞こえてくる。


 「ちゃんと敵は殺さないとな、少年。」


 その声と共に、シルトセンチの首が胴体と切断され、命も絶え絶えで身体をぴくりと動かしていた蟲は完全に絶命する。

 女は天使の翼を模した《白翼弓(イーリス)》と呼ばれる名弓を、男は《破砕斧(グレートアックス)》と呼ばれる通常の戦斧の倍はあろうかという斧を肩に乗せては不適な笑みを浮かべている。


 「アンタ等は?」


 見知らぬ来訪者の言葉にツヴァイハンダーを構えて二人を見据える。身体には先の危険信号などとは比べ物にならないそれがフィラメントを赤く染め上げては脳内で警鐘を鳴らす。

 《賞金首》、如何やらオレを狙っている冒険者の様で、その立ち姿からは余裕こそ窺えるものの、熟達した雰囲気がそれを許し、オレに一切の拒否権を与えない。


 「トーゼン、君の首に懸かってるお金を貰いにね」


 弓手であるアーチャーの上位に位置し、狩人の名を駆りハンターと呼ばれるその服装に身を包む女性が悪戯染みた笑みを浮かべる。後ろで気だるそうに煙草を吸っている男はラフなオーバーオールからブラックスミスに見える。


 「そういうこった。オレらは少年、お前を狩りに来たのさ」


 鼓動が、早くなるのを感じた。



視点が難しい。語彙と表現力が乏しいですね……。

もっと頑張ろう。


14/11/16:星弓から白翼弓に変更。

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