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掃除の国のプリンセス

作者: 花見さくら
掲載日:2014/09/08

掃除しかできない女の子をある日拾った。

掃除のできない主人の部屋はきれいになって行くと同時に、その女の子を好きになっていく。

女の子は我が家のルンバがモデルです。


 土砂降りの日の夕刻、傘を差し、雨に濡れないように走っていた。

 そんな時、木陰に一人の女の子を見つけてしまった。

 雨にぬれていて、かわいそうだと思ったので。

「そこの子、傘に入って行ったらどうかな?」

 と声をかけた。

「ありがとう」

 その子は少し安堵したように笑ったような気がした。

 相合傘なんか、照れることでも何でもないのだが、なんだか気恥ずかしい物である。

 彼女は、長い髪が魅力的な大きな目をしたかわいい子だ。

 しかし、彼女は、雨に濡れているせいか、疲れ切っているせいか表情が動く事は、あまりなかった。

「大丈夫?」

「はい」

 弱々しくそう言う。

 そのまま、自分の屋敷に連れて帰った。

「リカルド様、おかえりなさいませ……と、この少女は?」

 絶対の信頼を置いているメイドのクルールが出迎えてくれたのだが、驚いているようだ。

「雨に濡れていたから、ついね、拾っちゃったのかな?」

 そう言うと、拾った少女は、目の前で倒れた。

 急いで、ベッドのある部屋で、眠らせてあげたのだが、彼女の体力に限界が来ていたのだろう、ピクリとも動きもしない。

「服を着替えさせるので、失礼ですが、リカルド様は退室願います」

 メイドのクルールはそう言ってリカルドを部屋の外に出した。

 心配だな。

 そう思ったが、クルールはすぐ出てきた。

「風邪をひいてないといいのですが……」

 そう言い彼女が身に着けていた黒いワンピースがぐしゃぐしゃに濡れている状態で、クルールの手の中にある。

 その夜は、心配で寝つきが悪かったような気がした。

 朝に彼女の部屋を訪ねた。

「おはよう」

「こっ、ここのご主人様ですか?」

 彼女は、緊張した様子で、そう言い床に座り、両手をついた。

「ここで働かせてください」

「えっと、急に言われても……」

「働かせてください、そうしないと、食べていけません」

 彼女は泣きながらそう言う。

「わかった、わかったよ、じゃあ、名前を教えてくれないか?」

「ルウです」

「よろしく」

 ルウの頭に手を当てたのだが、その温度はとても熱く。

「君、熱があるの?」

 クラッとベッドに倒れ込んだ。

 無理するなあ。

 そう苦笑いを浮かべ、ルウを眺めた。

「リカルド様、ここにいらしたのですね、朝食にしてしまおうと思ったのですが?」

「ああ、今行く」

 そう言い部屋を出た。

「あの少女はどうですか?」

「家で雇うことにしたよ、行く当てもお金もないみたいだから」

「そう」

 クルールは、髪を結い上げているせいで、老け顔だが、美人な横顔で、心配そうにそう言う。

「前の職場はどこだったのかしら?」

 そうつぶやき部屋を出ていく。

 

 ルウは目が覚めた。

(ここは、どこ?)

 そう言えば、ここの家のご主人様に、ここで働けるようにしてもらったんだ。

 鏡を見るとやつれた自分が映っているだけだ。

 ベッドから起き上がり、自分の運の良さに驚いた。

(賭けだったけど、助けてくれた人は、見返りを求めるような悪党ではないみたい)

 熱のある中そう思って、寝た。

 しばらくして、扉を叩く音に目が覚めた。

「ルウ、いるか?」

「はい」

「熱は下がったようだな」

「あの、私、一生懸命働きます、この恩を返せる位に」

「期待しているよ」

 リカルドの灰色の瞳が優しく笑う。


 ルウは、その日は休みを取ったが、次の日からは、メイド服を着て立っていた。

「おはようございます」

 少し無愛想にそう言った。

「緊張しているのよね、ね? ルウちゃん」

「は、はい」

「前の職場は、あんまり人と話すような職場では、なかったのかしら?」

 クルールは一生懸命取り繕っているが、ルウはメイドと言うより、人間として生きるのがあまりうまくないようなタイプに見えた。

(だから、前の職場で捨てられてあんな雨の中に立っていたのかな)

 リカルドはそう思いかわいそうになった。

「じゃあ、食事を作りましょうよ、ルウちゃん」

 クルールが、ルウを連れて行く。

(大丈夫かな?)

 そう思い見送り、リカルドは、仕事をしに行った。

 しかし、食事作りは順調にはいかなかった。

 なぜなら、ルウは、家事具品オンチで、何回も失敗しているからだ。

「ルウちゃん、一体今まで、どうやって生きて来たの?」

 クルールは怒りをこらえそう言っている。

「ごめんなさい」

 ルウはすぐ頭を下げて、悪気があったわけではないことが伝わってくる。

 しかも、反省しすぎて落ち込んでいるようにすら見えた。

「仕方ないわね、人間、何事も経験よ、今、できなくても、次できるようになっていれば別にいいのよ」

 クルールは、苦笑いしながらそう言い、ルウを励ました。

 次は、洗濯をしたのだが、力を入れ過ぎて、服を破ってしまったり、洗剤で泡だらけになったりしていた。

「ルウさん」

「ごめんなさい」

 クルールもわざとではない事は分かっていたので、責めることも出来ない。

 そこにリカルドが帰ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさいませ」

 そこにルウも駆けつけて来て。

「お、おかえるなさいめせ」

「ルウちゃん、言えてないわよ」

 ルウはとても落ち込んでいる。だけど、クルールはいじめをするような女ではないので。

「どうしたんだ?」

 と訊いた。

「ルウちゃんは、家事が苦手みたいで、何をしてもダメなの」

 クルールがあきれ顔でそう言う。

(クルールが言うのだから、よっぽどなのだろう)

 とリカルドも思った。

「すみません、せっかく雇ってくださったのに、私……私……」

「いいのよ、ルウちゃん」

 クルールがルウの肩を持って、慰めているようだ。

「何か得意なことはないのかしら?」

「一つだけあります……掃除です」

 ルウは少しだけ震えてそう言った。

「そう、よかったわ、少しでも得意な事があって、清掃の仕事をしていたのなら、最初から言ってくださればよかったのに」

「いいえ、私、なぜか掃除しかできないんです」

 ルウは真剣な目でそう言った。

「そう言う子もいるかもしれないわね」

 クルールは慌ててそう言う。

「それじゃあ、掃除は、任せても平気なのですね?」

「はい」

 そう言い、ほうきとバケツと雑巾、モップ、洗剤を持って玄関に向かった。

「ルウちゃん」

「気になっていたんです」

「何が?」

「絨毯の下」

 そう言えば、絨毯を動かすのはとてもめんどうくさい。

 だからなのか、掃除しないのが当たり前になっていた。

「除けて、掃除していいですか?」

「はい」

 クルールは、あまりにルウが一生懸命なので、頷く事しか出来なかった。

 絨毯の掃除には、洗剤を薄めて、時々、ベンジンなどもうまく使ってシミを取っている。

「うまい、掃除は本当に得意だったのね」

 とクルールは安心した。

 そして、絨毯の上の物を丁寧に除ける。

 そうすると、たくさんのゴミが姿を現した。

 ルウは迷わず、一か所に集め、ほこりを取り、掃除を終わらせた。

「すごいわ、ルウちゃん、まるで、掃除のプロが掃除したみたいに見えるわよ」

「そうですか」

 ほっとして、胸をなでおろす姿にリカルドも微笑んでいた。

 一生懸命掃除している時、ルウはとっても輝いていたな。

 そう思い、ルウへの心配が安堵に変わった。

「ルウちゃんはこれから掃除専門のメイドさんにするわね」

「はい」

 そう言い、クルールと楽しそうに笑っている。

 その後は、庭に出て行った。

「私でも役に立てたんだよ、ほら、煮干しだよ」

「ニャー」

 庭に迷い込んだネコと雑談していた。

「お前も、うれしいか」

「ニャー」


 その次の日には、なんだかわからないが、違和感を感じる屋敷になっていた。

「何か、きれいすぎないか?」

「そうなんです、ルウちゃんが徹夜で掃除なさったみたいで……」

(どおりで……)

 そう思っていると。

「ご主人様、ご主人様の部屋も掃除してもいいでしょうか?」

「ルウちゃん!」

 クルールが悲鳴に似た声を上げ、こちらに走ってくる。

「あのね、リカルド様の部屋は女の子一人で掃除できるほど甘くないわ、なんせ、足の踏み場もない位、散らかすし、何度部屋を移動した事か……」

「クルール、言い過ぎだぞ」

「本当の事です」

 二人のやり取りを聞いていたルウは、余計掃除をしたくなったようで。

「私は掃除専門のメイドです、私がやると決めたらやります」

 と宣言した。

「ルウちゃん、いつでも、逃げ出していいのよ」

 クルールはそう言い、持ち場へ戻った。

「リカルド様と呼んでいいですか?」

「いいよ」

「リカルド様は、そんなに掃除が苦手なのですか?」

「うん、そうなんだ」

 苦笑いして言うと、ルウは困った。

「他の事は何でもできるんだけど、掃除だけは出来なくて……」

「よかったです、リカルド様が掃除が苦手なおかげで、私はここで働けます」

「掃除しかできない君と掃除だけは出来ない俺は案外、相性がいいのかもしれないね」

「そうですね」

 そう言うとルウは笑った。

 そこまではよかったのだが。

「本当に俺の部屋、掃除するの?」

「はい」

 そう言い、ほうきとバケツ、雑巾、モップ、洗剤を持って張り切るルウ。

「では、開けてください」

 そう言い、リカルドの部屋を開けると、本が雪崩れ落ちて来た。

「危ない」

 そう言い、ルウを庇った。

 抱きしめるポーズになってしまい、少し照れて離れた。

「ごめん」

「いいえ」

 その目は輝いていた。

「とても、掃除し甲斐のありそうな部屋で安心しました」

「えっ」

「私は、掃除が大好きですから」

 そう言い、鼻歌を歌いながら部屋の物をどんどん出していく。

「いらない物は、思い切って捨ててくださいね」

「うん」

 そう言い、運ぶのを手伝う。

 本の山だった所のほこりは、とてもすごく、くしゃみが止まらなかったリカルドに対し、全く、くしゃみも咳もしないルウだった。

「鼻の粘膜が強いんだね」

「たぶんそうなんでしょう」

 ルウはゴミ袋を持って外へ歩いていく。

 そして、四時間後には、床が姿を現したのだ。

「足の踏み場がある」

「やりましたね」

 二人で戦闘を褒め合った。

「あっリカルド様、頭がほこりだらけです」

 そう言い、リカルドの短い茶髪の髪からほこりをとろうとした。

「君もほこりだらけだよ」

 と笑われてしまった。

「でも、リカルド様ほど汚れてはいけない職業ではないので……」

「せっかくかわいいのにもったいないんじゃないかな?」

 そう笑い、ルウの髪の毛をくるっと指で巻いた。

「やめてください……」

 照れた顔でそう言うルウはなんだか、かわいくて。

 なんとなくいいな〜と思った。

 途中で、クルールに出会うと。

「ほこりまみれで、二人で何していたんですか?」

「掃除を……」

「すぐにお風呂場に行った方が良いんじゃないかしら?」

 と言われた。

「はい」

 ルウは素直に返事して、リカルドは男湯へ、ルウは女湯へ向かった。

 リカルドは、風呂に入りながら、ルウの事を考えていた。

(ルウは……かわいいよな……うん、かわいい)

 と天井を仰ぎ、頭に浮かんでくるルウに困惑していた。

(俺は好きになっちゃったのかな?)

 そう思い少し考え込んだ。


 次の日に、また、ルウと掃除をすることになり、部屋を片付けていた。

「この、南国の人形なんか、いるんですか?」

 見るからに必要のなさそうな、踊るバナナ人形にルウはそう言い、ゴミ袋に投げ込もうとしていた。

「ああ、それ、それは、友人のお土産で、確か六年間埋もれていた」

 ガシャンと音がして、バナナ人形はゴミ袋に消えた。

「そう言う物をとっておくから散らかるんです」

 珍しくルウが怒った声を出した。

「そうだね、よく考えたら、いらないものって多いのかも……」

 そう思い、部屋をグルグル回る。

「無理に捨てたくないなら良いんです、そこには、理由があるんですよね? でも、理由がない、または、その理由が必要のないものだった場合、どんどん捨ててください」

「はい」

 その目は燃えていた。

(よっぽど掃除が好きなんだな)

 そう思い部屋の物はどんどん減って行った。

「いや〜意外と必要な理由がある物ってないな」

「小物は、ジャンル事に分けて、箱や棚にシールをはったり、マーク、サインを描いておくと失くしませんよ」

「うん、そうだね」

(ルウは本当に掃除がうまいな)

 重いゴミ袋を持ち上げようとしているルウを見て。

「女の子なんだから、少しは頼ってくれてもいいんだよ」

「……はい」

 少し顔を赤らめた。

 かわいいじゃないか。

 あまり見られない、照れた顔に、ついそう思ってしまった。

 クルールが夕食を置きに来て驚いた声を上げた。

「ル、ル、ル、ルウちゃん、あの部屋をこんなにきれいにしてくれるなんて、掃除の女神様としか言いようがないわ、ありがとう」

「い、いえ」

 また、見られた、照れた顔。

 そんな日が続いて行った。


 そんなある日。

「ルーバリル王女の居場所を知らないですか?」

 と尋ねる者が現れた。

 どこかの国の正装の男が、見せてきた写真は、ルウそのものだった。

(どう言う事だ?)

「私達の王女はどこに行ってしまったのだろう」

「あの、王女は、掃除が得意なんですか?」

 王女は、掃除などしないだろうと踏んでそう訊いた。

「そうなんです、掃除しかできないはずです、ルーバリル王女は、掃除の国のプリンセスですから」

「掃除の国のプリンセス」

「家事を国ごとに分かれてやる大国の一つ掃除の国の王女なんです」

(そんな……)

 ルウは確実に掃除の国のプリンセスだろうと思ったからだ。

「どうしたのですか?」

 クルールが出てきた。

「クルール、このお客を客間へ、大事な用事だ」

「はい」

 そう言い、お茶を淹れに走って行く。

「それで、ルーバリル王女が見つかったらどうする気だ」

「つれて帰るに決まっています」

「……」

(ルウを連れて行かれては困るな、掃除が出来なくなる)

 ――本当にそれだけ?

 違う、ルウにずっとそばにいて欲しいなんて思っている。

(ルウ)

「あの〜ルーバリル王女の事を知っているんですか?」

「……」

(言いたくない……)

 そう思っていると、ルウが廊下を通ったらしく。

「ルーバリル王女の感じがする、この近くにいます」

(ばれた)

 焦るリカルドだが、今、リカルドに出来る事など何もない。

(これでお別れなのか?)

 大きな絶望を感じた。

「この家の主に許可を取りたい、ルーバリル王女を探していいか?」

「はい」

 そう返事してしまった。

 廊下をほうきとバケツと雑巾、モップ、洗剤を持って歩くメイド姿のルウが驚いて振り返った。

「あなた達は……」

 探しに来た人の服に見覚えがあったので固まった。

「ルーバリル王女ですよね?」

「はい」

 と小さく返事する声が、廊下から聞こえた。

「よかったです、死んでいたかと思いましたよ」

 そう言い、ルウは、掃除の国へ連れていかれることになった。

「リカルド様、言いたいことがあるので、私が部屋に行きます」

 と言い、いなくなった。

(ルウと別れなければいけないのか? こんなに思い出が出来たのに)

 そう思い自分の部屋を眺める。

 始めは、足の踏み場もなかった部屋が、ルウは、まるで魔法のようにきれいにしてしまったのだ。

(ありがとう、ルウ、もう、ルウなしでは、生きていけないみたいだ)

 そう思っているとドアをノックする音が聞こえた。

(ルウ)

「はい、入っていい」

「失礼します、ルウです」

(やっぱり、ルウか……)

 こ瞬間が来なければいいと思っていたリカルドは、悲しい気持ちに駆られた。

「あの、私、一回、国に帰ります」

「!」

 どこかで「残らせてください」と言うのではないかと期待していた。

 しかし、ルウの答えは、帰る事だった。

「リカルド様、私、掃除、大嫌いになりかけていたんです。でも、リカルド様とたくさん掃除したら、楽しくて、昔みたいに、大好きになりました。いいえ、昔以上にですかね?」

「そうか」

「ありがとうございます」

 そう、両手をついて頭を下げた。

 そのまま、いなくなった。


 次の日、大きな馬車にルウは乗せられ、いなくなった。

「リカルド様、昨日伝えましたか?」

 クルールが熱く強くそう言った。

「何を?」

「照れても隠しても無駄です、私にはわかっているのよ、リカルド様がルウちゃんに夢中なのを」

「えっ?」

「伝えたの?」

「ううん」

「そう」

 クルールは、これまたあっさりと食い下がった。

 しかし、ルウの居ない生活に部屋は散らかって行った。

「リカルド様、また床が見えなくなってきましたよ」

 クルールが怒って片付けるが、すぐに散らかってしまう。

(何が、ルウと違うんだ)

「やっぱり、掃除の国のプリンセスじゃないと片付けられないのかしら?」

 ルウは、とても楽しそうに、時には、熱くなって掃除していたな。

 そう思いなつかしくなる。

 そんな生活が何日も続き、ついに、リカルドの部屋は、床が見えなくなってしまった。

「ルウちゃんの努力も無駄になっちゃったみたいね」

 クルールが腰に手を当て怒りながらそう言う。

 そこに、インターホンが鳴った。

「はい」

 クルールが出ると。

「ただいま、クルール」

 そう言い、立っていたのは、ルウだった。

「どうして、ルウちゃんが? 帰って来るなら手紙位よこしなさいよね」

 クルールはうれしさから、涙目でそう言っている。

「ごめんなさい、字を書くのは、苦手なんです」

「そうよね、ルウちゃんだものね」

 クルールは涙を拭いて、笑った。

「ルウ!」

 リカルドが階段を駆け下りてくる。

「掃除の国の研修で、しばらくお世話になることになりました」

 そう言い頭を下げた。

「もちろん、大歓迎よ、ルウちゃん、特にリカルドはね」

 とクルールがウインクする。

「リカルド様……」

「ルウ……」

「また、掃除しましょうね」

 いままで見たことのない、優しい笑顔でそう言われた。

「う、うん」

「あのね、リカルドの部屋、また散らかっちゃっているのよね」

 クルールが意地悪そうにそう言う。

「そうですか、いつか、いいましたよね『掃除しかできない君と掃除だけは出来ない俺は案外、相性がいいのかもしれないね』って」

「うん」

「それって、私はリカルド様にとって必要な物で、捨てられないって意味だったんですよね?」

「あっああ」

「だから戻って来たんです、私はメイドです、勝手に辞めたりしてはいけませんよね?」

「そ、そうね」

 ルウの目はやる気に満ちていた。

「さっそく、掃除をやりますよ、リカルド様!」

「う、うん」

 また、いつもの片づけが始まった。

「リカルド様、この人形は必要なんでしょうか?」

 そう言い、フランス人形の女の子を手に取った。

「それは、ビスクドールって言って、高価な人形なんだ」

「そうですか、高価……それは、理由になりますね」

「ビンテージってやつ、あげるよ」

「では、いらないのですか?」

「ううん、君への贈り物の一つ、君のために色々買ってみたんだけど」

「……それって」

「君が好きだから、それじゃあダメかな?」

「……いいえ、いいえ、本当に私の事が……夢ではないのでしょうか?」

「夢じゃないよ」

 そう言いルウの頬に、リカルドが手をかけると。

「わかるでしょう、俺の手の感じ」

 ほんのり赤くなる、ルウ。

「はい」

「それで返事は?」

 ルウは少しうつむいた後、顔を上げ、真っ赤な顔で。

「私も好きです」

 と言った。


(了)





小説を読んでくれてありがとうございます。

少しでも面白いと思ってもらえるとうれしいです。

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