掃除の国のプリンセス
掃除しかできない女の子をある日拾った。
掃除のできない主人の部屋はきれいになって行くと同時に、その女の子を好きになっていく。
女の子は我が家のルンバがモデルです。
土砂降りの日の夕刻、傘を差し、雨に濡れないように走っていた。
そんな時、木陰に一人の女の子を見つけてしまった。
雨にぬれていて、かわいそうだと思ったので。
「そこの子、傘に入って行ったらどうかな?」
と声をかけた。
「ありがとう」
その子は少し安堵したように笑ったような気がした。
相合傘なんか、照れることでも何でもないのだが、なんだか気恥ずかしい物である。
彼女は、長い髪が魅力的な大きな目をしたかわいい子だ。
しかし、彼女は、雨に濡れているせいか、疲れ切っているせいか表情が動く事は、あまりなかった。
「大丈夫?」
「はい」
弱々しくそう言う。
そのまま、自分の屋敷に連れて帰った。
「リカルド様、おかえりなさいませ……と、この少女は?」
絶対の信頼を置いているメイドのクルールが出迎えてくれたのだが、驚いているようだ。
「雨に濡れていたから、ついね、拾っちゃったのかな?」
そう言うと、拾った少女は、目の前で倒れた。
急いで、ベッドのある部屋で、眠らせてあげたのだが、彼女の体力に限界が来ていたのだろう、ピクリとも動きもしない。
「服を着替えさせるので、失礼ですが、リカルド様は退室願います」
メイドのクルールはそう言ってリカルドを部屋の外に出した。
心配だな。
そう思ったが、クルールはすぐ出てきた。
「風邪をひいてないといいのですが……」
そう言い彼女が身に着けていた黒いワンピースがぐしゃぐしゃに濡れている状態で、クルールの手の中にある。
その夜は、心配で寝つきが悪かったような気がした。
朝に彼女の部屋を訪ねた。
「おはよう」
「こっ、ここのご主人様ですか?」
彼女は、緊張した様子で、そう言い床に座り、両手をついた。
「ここで働かせてください」
「えっと、急に言われても……」
「働かせてください、そうしないと、食べていけません」
彼女は泣きながらそう言う。
「わかった、わかったよ、じゃあ、名前を教えてくれないか?」
「ルウです」
「よろしく」
ルウの頭に手を当てたのだが、その温度はとても熱く。
「君、熱があるの?」
クラッとベッドに倒れ込んだ。
無理するなあ。
そう苦笑いを浮かべ、ルウを眺めた。
「リカルド様、ここにいらしたのですね、朝食にしてしまおうと思ったのですが?」
「ああ、今行く」
そう言い部屋を出た。
「あの少女はどうですか?」
「家で雇うことにしたよ、行く当てもお金もないみたいだから」
「そう」
クルールは、髪を結い上げているせいで、老け顔だが、美人な横顔で、心配そうにそう言う。
「前の職場はどこだったのかしら?」
そうつぶやき部屋を出ていく。
ルウは目が覚めた。
(ここは、どこ?)
そう言えば、ここの家のご主人様に、ここで働けるようにしてもらったんだ。
鏡を見るとやつれた自分が映っているだけだ。
ベッドから起き上がり、自分の運の良さに驚いた。
(賭けだったけど、助けてくれた人は、見返りを求めるような悪党ではないみたい)
熱のある中そう思って、寝た。
しばらくして、扉を叩く音に目が覚めた。
「ルウ、いるか?」
「はい」
「熱は下がったようだな」
「あの、私、一生懸命働きます、この恩を返せる位に」
「期待しているよ」
リカルドの灰色の瞳が優しく笑う。
ルウは、その日は休みを取ったが、次の日からは、メイド服を着て立っていた。
「おはようございます」
少し無愛想にそう言った。
「緊張しているのよね、ね? ルウちゃん」
「は、はい」
「前の職場は、あんまり人と話すような職場では、なかったのかしら?」
クルールは一生懸命取り繕っているが、ルウはメイドと言うより、人間として生きるのがあまりうまくないようなタイプに見えた。
(だから、前の職場で捨てられてあんな雨の中に立っていたのかな)
リカルドはそう思いかわいそうになった。
「じゃあ、食事を作りましょうよ、ルウちゃん」
クルールが、ルウを連れて行く。
(大丈夫かな?)
そう思い見送り、リカルドは、仕事をしに行った。
しかし、食事作りは順調にはいかなかった。
なぜなら、ルウは、家事具品オンチで、何回も失敗しているからだ。
「ルウちゃん、一体今まで、どうやって生きて来たの?」
クルールは怒りをこらえそう言っている。
「ごめんなさい」
ルウはすぐ頭を下げて、悪気があったわけではないことが伝わってくる。
しかも、反省しすぎて落ち込んでいるようにすら見えた。
「仕方ないわね、人間、何事も経験よ、今、できなくても、次できるようになっていれば別にいいのよ」
クルールは、苦笑いしながらそう言い、ルウを励ました。
次は、洗濯をしたのだが、力を入れ過ぎて、服を破ってしまったり、洗剤で泡だらけになったりしていた。
「ルウさん」
「ごめんなさい」
クルールもわざとではない事は分かっていたので、責めることも出来ない。
そこにリカルドが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
そこにルウも駆けつけて来て。
「お、おかえるなさいめせ」
「ルウちゃん、言えてないわよ」
ルウはとても落ち込んでいる。だけど、クルールはいじめをするような女ではないので。
「どうしたんだ?」
と訊いた。
「ルウちゃんは、家事が苦手みたいで、何をしてもダメなの」
クルールがあきれ顔でそう言う。
(クルールが言うのだから、よっぽどなのだろう)
とリカルドも思った。
「すみません、せっかく雇ってくださったのに、私……私……」
「いいのよ、ルウちゃん」
クルールがルウの肩を持って、慰めているようだ。
「何か得意なことはないのかしら?」
「一つだけあります……掃除です」
ルウは少しだけ震えてそう言った。
「そう、よかったわ、少しでも得意な事があって、清掃の仕事をしていたのなら、最初から言ってくださればよかったのに」
「いいえ、私、なぜか掃除しかできないんです」
ルウは真剣な目でそう言った。
「そう言う子もいるかもしれないわね」
クルールは慌ててそう言う。
「それじゃあ、掃除は、任せても平気なのですね?」
「はい」
そう言い、ほうきとバケツと雑巾、モップ、洗剤を持って玄関に向かった。
「ルウちゃん」
「気になっていたんです」
「何が?」
「絨毯の下」
そう言えば、絨毯を動かすのはとてもめんどうくさい。
だからなのか、掃除しないのが当たり前になっていた。
「除けて、掃除していいですか?」
「はい」
クルールは、あまりにルウが一生懸命なので、頷く事しか出来なかった。
絨毯の掃除には、洗剤を薄めて、時々、ベンジンなどもうまく使ってシミを取っている。
「うまい、掃除は本当に得意だったのね」
とクルールは安心した。
そして、絨毯の上の物を丁寧に除ける。
そうすると、たくさんのゴミが姿を現した。
ルウは迷わず、一か所に集め、ほこりを取り、掃除を終わらせた。
「すごいわ、ルウちゃん、まるで、掃除のプロが掃除したみたいに見えるわよ」
「そうですか」
ほっとして、胸をなでおろす姿にリカルドも微笑んでいた。
一生懸命掃除している時、ルウはとっても輝いていたな。
そう思い、ルウへの心配が安堵に変わった。
「ルウちゃんはこれから掃除専門のメイドさんにするわね」
「はい」
そう言い、クルールと楽しそうに笑っている。
その後は、庭に出て行った。
「私でも役に立てたんだよ、ほら、煮干しだよ」
「ニャー」
庭に迷い込んだネコと雑談していた。
「お前も、うれしいか」
「ニャー」
その次の日には、なんだかわからないが、違和感を感じる屋敷になっていた。
「何か、きれいすぎないか?」
「そうなんです、ルウちゃんが徹夜で掃除なさったみたいで……」
(どおりで……)
そう思っていると。
「ご主人様、ご主人様の部屋も掃除してもいいでしょうか?」
「ルウちゃん!」
クルールが悲鳴に似た声を上げ、こちらに走ってくる。
「あのね、リカルド様の部屋は女の子一人で掃除できるほど甘くないわ、なんせ、足の踏み場もない位、散らかすし、何度部屋を移動した事か……」
「クルール、言い過ぎだぞ」
「本当の事です」
二人のやり取りを聞いていたルウは、余計掃除をしたくなったようで。
「私は掃除専門のメイドです、私がやると決めたらやります」
と宣言した。
「ルウちゃん、いつでも、逃げ出していいのよ」
クルールはそう言い、持ち場へ戻った。
「リカルド様と呼んでいいですか?」
「いいよ」
「リカルド様は、そんなに掃除が苦手なのですか?」
「うん、そうなんだ」
苦笑いして言うと、ルウは困った。
「他の事は何でもできるんだけど、掃除だけは出来なくて……」
「よかったです、リカルド様が掃除が苦手なおかげで、私はここで働けます」
「掃除しかできない君と掃除だけは出来ない俺は案外、相性がいいのかもしれないね」
「そうですね」
そう言うとルウは笑った。
そこまではよかったのだが。
「本当に俺の部屋、掃除するの?」
「はい」
そう言い、ほうきとバケツ、雑巾、モップ、洗剤を持って張り切るルウ。
「では、開けてください」
そう言い、リカルドの部屋を開けると、本が雪崩れ落ちて来た。
「危ない」
そう言い、ルウを庇った。
抱きしめるポーズになってしまい、少し照れて離れた。
「ごめん」
「いいえ」
その目は輝いていた。
「とても、掃除し甲斐のありそうな部屋で安心しました」
「えっ」
「私は、掃除が大好きですから」
そう言い、鼻歌を歌いながら部屋の物をどんどん出していく。
「いらない物は、思い切って捨ててくださいね」
「うん」
そう言い、運ぶのを手伝う。
本の山だった所のほこりは、とてもすごく、くしゃみが止まらなかったリカルドに対し、全く、くしゃみも咳もしないルウだった。
「鼻の粘膜が強いんだね」
「たぶんそうなんでしょう」
ルウはゴミ袋を持って外へ歩いていく。
そして、四時間後には、床が姿を現したのだ。
「足の踏み場がある」
「やりましたね」
二人で戦闘を褒め合った。
「あっリカルド様、頭がほこりだらけです」
そう言い、リカルドの短い茶髪の髪からほこりをとろうとした。
「君もほこりだらけだよ」
と笑われてしまった。
「でも、リカルド様ほど汚れてはいけない職業ではないので……」
「せっかくかわいいのにもったいないんじゃないかな?」
そう笑い、ルウの髪の毛をくるっと指で巻いた。
「やめてください……」
照れた顔でそう言うルウはなんだか、かわいくて。
なんとなくいいな〜と思った。
途中で、クルールに出会うと。
「ほこりまみれで、二人で何していたんですか?」
「掃除を……」
「すぐにお風呂場に行った方が良いんじゃないかしら?」
と言われた。
「はい」
ルウは素直に返事して、リカルドは男湯へ、ルウは女湯へ向かった。
リカルドは、風呂に入りながら、ルウの事を考えていた。
(ルウは……かわいいよな……うん、かわいい)
と天井を仰ぎ、頭に浮かんでくるルウに困惑していた。
(俺は好きになっちゃったのかな?)
そう思い少し考え込んだ。
次の日に、また、ルウと掃除をすることになり、部屋を片付けていた。
「この、南国の人形なんか、いるんですか?」
見るからに必要のなさそうな、踊るバナナ人形にルウはそう言い、ゴミ袋に投げ込もうとしていた。
「ああ、それ、それは、友人のお土産で、確か六年間埋もれていた」
ガシャンと音がして、バナナ人形はゴミ袋に消えた。
「そう言う物をとっておくから散らかるんです」
珍しくルウが怒った声を出した。
「そうだね、よく考えたら、いらないものって多いのかも……」
そう思い、部屋をグルグル回る。
「無理に捨てたくないなら良いんです、そこには、理由があるんですよね? でも、理由がない、または、その理由が必要のないものだった場合、どんどん捨ててください」
「はい」
その目は燃えていた。
(よっぽど掃除が好きなんだな)
そう思い部屋の物はどんどん減って行った。
「いや〜意外と必要な理由がある物ってないな」
「小物は、ジャンル事に分けて、箱や棚にシールをはったり、マーク、サインを描いておくと失くしませんよ」
「うん、そうだね」
(ルウは本当に掃除がうまいな)
重いゴミ袋を持ち上げようとしているルウを見て。
「女の子なんだから、少しは頼ってくれてもいいんだよ」
「……はい」
少し顔を赤らめた。
かわいいじゃないか。
あまり見られない、照れた顔に、ついそう思ってしまった。
クルールが夕食を置きに来て驚いた声を上げた。
「ル、ル、ル、ルウちゃん、あの部屋をこんなにきれいにしてくれるなんて、掃除の女神様としか言いようがないわ、ありがとう」
「い、いえ」
また、見られた、照れた顔。
そんな日が続いて行った。
そんなある日。
「ルーバリル王女の居場所を知らないですか?」
と尋ねる者が現れた。
どこかの国の正装の男が、見せてきた写真は、ルウそのものだった。
(どう言う事だ?)
「私達の王女はどこに行ってしまったのだろう」
「あの、王女は、掃除が得意なんですか?」
王女は、掃除などしないだろうと踏んでそう訊いた。
「そうなんです、掃除しかできないはずです、ルーバリル王女は、掃除の国のプリンセスですから」
「掃除の国のプリンセス」
「家事を国ごとに分かれてやる大国の一つ掃除の国の王女なんです」
(そんな……)
ルウは確実に掃除の国のプリンセスだろうと思ったからだ。
「どうしたのですか?」
クルールが出てきた。
「クルール、このお客を客間へ、大事な用事だ」
「はい」
そう言い、お茶を淹れに走って行く。
「それで、ルーバリル王女が見つかったらどうする気だ」
「つれて帰るに決まっています」
「……」
(ルウを連れて行かれては困るな、掃除が出来なくなる)
――本当にそれだけ?
違う、ルウにずっとそばにいて欲しいなんて思っている。
(ルウ)
「あの〜ルーバリル王女の事を知っているんですか?」
「……」
(言いたくない……)
そう思っていると、ルウが廊下を通ったらしく。
「ルーバリル王女の感じがする、この近くにいます」
(ばれた)
焦るリカルドだが、今、リカルドに出来る事など何もない。
(これでお別れなのか?)
大きな絶望を感じた。
「この家の主に許可を取りたい、ルーバリル王女を探していいか?」
「はい」
そう返事してしまった。
廊下をほうきとバケツと雑巾、モップ、洗剤を持って歩くメイド姿のルウが驚いて振り返った。
「あなた達は……」
探しに来た人の服に見覚えがあったので固まった。
「ルーバリル王女ですよね?」
「はい」
と小さく返事する声が、廊下から聞こえた。
「よかったです、死んでいたかと思いましたよ」
そう言い、ルウは、掃除の国へ連れていかれることになった。
「リカルド様、言いたいことがあるので、私が部屋に行きます」
と言い、いなくなった。
(ルウと別れなければいけないのか? こんなに思い出が出来たのに)
そう思い自分の部屋を眺める。
始めは、足の踏み場もなかった部屋が、ルウは、まるで魔法のようにきれいにしてしまったのだ。
(ありがとう、ルウ、もう、ルウなしでは、生きていけないみたいだ)
そう思っているとドアをノックする音が聞こえた。
(ルウ)
「はい、入っていい」
「失礼します、ルウです」
(やっぱり、ルウか……)
こ瞬間が来なければいいと思っていたリカルドは、悲しい気持ちに駆られた。
「あの、私、一回、国に帰ります」
「!」
どこかで「残らせてください」と言うのではないかと期待していた。
しかし、ルウの答えは、帰る事だった。
「リカルド様、私、掃除、大嫌いになりかけていたんです。でも、リカルド様とたくさん掃除したら、楽しくて、昔みたいに、大好きになりました。いいえ、昔以上にですかね?」
「そうか」
「ありがとうございます」
そう、両手をついて頭を下げた。
そのまま、いなくなった。
次の日、大きな馬車にルウは乗せられ、いなくなった。
「リカルド様、昨日伝えましたか?」
クルールが熱く強くそう言った。
「何を?」
「照れても隠しても無駄です、私にはわかっているのよ、リカルド様がルウちゃんに夢中なのを」
「えっ?」
「伝えたの?」
「ううん」
「そう」
クルールは、これまたあっさりと食い下がった。
しかし、ルウの居ない生活に部屋は散らかって行った。
「リカルド様、また床が見えなくなってきましたよ」
クルールが怒って片付けるが、すぐに散らかってしまう。
(何が、ルウと違うんだ)
「やっぱり、掃除の国のプリンセスじゃないと片付けられないのかしら?」
ルウは、とても楽しそうに、時には、熱くなって掃除していたな。
そう思いなつかしくなる。
そんな生活が何日も続き、ついに、リカルドの部屋は、床が見えなくなってしまった。
「ルウちゃんの努力も無駄になっちゃったみたいね」
クルールが腰に手を当て怒りながらそう言う。
そこに、インターホンが鳴った。
「はい」
クルールが出ると。
「ただいま、クルール」
そう言い、立っていたのは、ルウだった。
「どうして、ルウちゃんが? 帰って来るなら手紙位よこしなさいよね」
クルールはうれしさから、涙目でそう言っている。
「ごめんなさい、字を書くのは、苦手なんです」
「そうよね、ルウちゃんだものね」
クルールは涙を拭いて、笑った。
「ルウ!」
リカルドが階段を駆け下りてくる。
「掃除の国の研修で、しばらくお世話になることになりました」
そう言い頭を下げた。
「もちろん、大歓迎よ、ルウちゃん、特にリカルドはね」
とクルールがウインクする。
「リカルド様……」
「ルウ……」
「また、掃除しましょうね」
いままで見たことのない、優しい笑顔でそう言われた。
「う、うん」
「あのね、リカルドの部屋、また散らかっちゃっているのよね」
クルールが意地悪そうにそう言う。
「そうですか、いつか、いいましたよね『掃除しかできない君と掃除だけは出来ない俺は案外、相性がいいのかもしれないね』って」
「うん」
「それって、私はリカルド様にとって必要な物で、捨てられないって意味だったんですよね?」
「あっああ」
「だから戻って来たんです、私はメイドです、勝手に辞めたりしてはいけませんよね?」
「そ、そうね」
ルウの目はやる気に満ちていた。
「さっそく、掃除をやりますよ、リカルド様!」
「う、うん」
また、いつもの片づけが始まった。
「リカルド様、この人形は必要なんでしょうか?」
そう言い、フランス人形の女の子を手に取った。
「それは、ビスクドールって言って、高価な人形なんだ」
「そうですか、高価……それは、理由になりますね」
「ビンテージってやつ、あげるよ」
「では、いらないのですか?」
「ううん、君への贈り物の一つ、君のために色々買ってみたんだけど」
「……それって」
「君が好きだから、それじゃあダメかな?」
「……いいえ、いいえ、本当に私の事が……夢ではないのでしょうか?」
「夢じゃないよ」
そう言いルウの頬に、リカルドが手をかけると。
「わかるでしょう、俺の手の感じ」
ほんのり赤くなる、ルウ。
「はい」
「それで返事は?」
ルウは少しうつむいた後、顔を上げ、真っ赤な顔で。
「私も好きです」
と言った。
(了)
小説を読んでくれてありがとうございます。
少しでも面白いと思ってもらえるとうれしいです。




