中級魔族な僕と大天使なお前。
電波が来ました。
よろしくお願いいたします。
みゃーん捕まったの~。
僕きちんと仕事してるの~。
人界は黄金週間真っ盛りで僕はのんきに観光に来ているの。
美味しい鰹節を買おうかなの。
煮干しもいいのはってるの。
あそこの焼き魚定食美味しそうなの。
ルンルンと春の日差しの中で歩いていたの。
僕は中級魔族でケットシーの雌なの。
でもニホン大好きでよくお買い物にくるの。
僕は人の姿になると毛なみと同じ真っ黒の長い髪に金の瞳の小柄な雌の姿なの。
長い髪はお魚柄のシュシュでポニーテール、デニムのショートパンツ(裾にレース付き)とピンタックの白ブラウスにレモン色のカーディガンにポシェットに白いオーバーニーソックスとストラップ付きの黒い靴で動きやすいようにしてみたの…。
会沢商店街は今日もにぎやかなの…。
服はみんなこの商店街で揃えてるの。
掘り出し物ないかなと思いながら歩いてたら突然なにか頭にかけられたの。
仁お兄ちゃんとは明日約束してるの。
「相変わらず、うかつな子猫だね、君は。」
なんで~なんで網で捕獲されてるの~。
「離して~。」
僕はじたばたしたの。
人型のままだきあげられてから網がはずされた。
黒いローブの筋肉質な大男なの顔見知りなの。
にゃーん、お魚祭~。
人界では空に沢山お魚が泳ぐんでしょう?
「さて、アイルちゃん一緒に観光いこうか。」
僕を捕まえて男が首筋を撫でながらいった。
にゃーん、力が抜けちゃうの。
「嫌にゃん、くそ天使はなせなの!」
筋肉質の腕のなかでじたばたした。
「いたずら子猫アイルちゃん、俺はイオエリスだよ。」
クスクス笑いながら男がさらっと被ってたローブをはらった。
プラチナブロンドのひとつにまとめた長い髪がこぼれ落ちる。
綺麗な金の瞳が僕を見つめてる。
「お魚祭は会沢商店街の仁お兄ちゃんと行くからいいの。」
僕はうっとうしい男を見上げた。
仁お兄ちゃんは魚屋『大漁月』の店主で優しいの。
お魚祭誘ってくれたの、嬉しいの。
「お魚祭…ね。」
クスクス笑いながらくそ天使があるきだした。
商店街のみんなが見てるの。
みゃーん助けてください~。
お得意様でしょう~。
「アイル、そいつは誰だ?」
仁お兄ちゃんが立ちふさがってくれた。
いかにも働き者と言う感じながっしりした体型の仁お兄ちゃんは短い髪にゴム前掛けにゴム長靴を履いてる。
「仁お兄ちゃん~助けてください~。」
私はがっちり腰を捕まれた状態でじたばたした。
「俺はアイルちゃんの婚約者だから。」
僕をかたに荷物がけに抱え込みながらイオエリスが言った。
「ええ、ちがうよ~イオエリスは天連の上位の~。」
いいかけてここが魔界じゃないのを思い出した。
「天連…なるほどね…じゃあいいか。」
仁お兄ちゃんがなにかズポンのポケットから出した。
そのままそれが三俣槍変化する。
みゃーん、仁お兄ちゃん危ないです。
唸りをあげて三俣槍がイオエリスに襲いかかる。
それを六枚の白い翼を出してイオエリスがよけた。
正確には空をとんだ。
「神樹の民みたいだな…なるほどね。」
イオエリスが網を構える。
天連…天界連合軍の大天使イオエリスの武器は鋼鉄ワイヤー製のこの虫取網らしいの。
おサボり神族を捕まえる特殊部隊なの。
「仁お兄ちゃん~逃げて~。」
荷物かかえされたまま網が降り下ろされて仁お兄ちゃんの三俣槍がからみとられたの。
そのまま圧倒的な力で仁お兄ちゃんは押し返されたの。
「さあ、いこうか?」
ニコニコいいながらイオエリスが飛び立ったの。
倒れた仁お兄ちゃんをお花屋の妙子さんが足先でつついてるのが見えたの。
みゃーん心配なの~。
「ご要望のお魚祭だよ、アイルちゃん。」
イオエリスが甘い口調で言って私の脳天にキスしたの。
お空に色とりどりのお魚が泳いでるの。
あちこちに『伊良沢鯉のぼり祭』って書いてある幟があるの。
仁お兄ちゃんが言ってた鯉のぼりってこれなの?
「しょ、将軍なんでこんなところへ?」
まがまがしい(僕の心理的に)黒ローブが駆け寄ってきて言ったの。
「邪魔するな、婚約者とデートだ。」
不機嫌そうにイオエリスがいうと黒ローブは震えながら敬礼したの。
みゃーん、助けてなの~。
だいたい僕とお前じゃ住む世界が違いすぎるの~。
「アイルちゃんはなに食べたい?」
屋台にイオエリスが近づいたの。
里芋味噌に味噌パン、田舎お焼きに鯉のぼり焼き。
唐揚げなんかもあるの。
「おろしてなの~。」
僕がじたばたしたら鯉のぼり焼き(鯉のぼり型の生地に魚肉ソーセージでうろこ、のりとちくわで目がついてる鰹節青のり、マヨネーズとソースがかかってて割りばしに刺さってる)のをくわえさせられたの。
屋台の人が奴をぽーっと見てるの、のしつけてやるの。
容貌だけならきりっとした美男子なの
美味しい~人界の食べ物って美味しいの。
おとなしくモグモグ食べる。
あの丸鯉のぼり焼きも食べたいな~。
大判焼きみたいなのに鯉のぼりの焼き印で甘い匂いが美味しそうなの。
「ソースが口元ついてるよ。」
イオエリスがさりげなく僕の口元をなめたの。
みゃーん、なんで天界の武将になめられなきゃいけないの?
「お魚いっぱいで楽しいの。」
僕は恥ずかしくて言ったの。
鯉のぼり祭は河上住んでる水の精霊に沢山今年も魚がとれますようにと昇る魚鯉を模したのを空にあげて祈ったのがはじまりなの。
だから海辺は鯉のぼりじゃなくマグロのぼりだった秋刀魚のぼりだったりするんだっきいたの。
「楽しめた、アイルちゃん?」
ニコニコとイオエリスが言ったの。
「ありがとうなの。」
仁お兄ちゃん一緒じゃないのは寂しいけど
楽しかったの…。
「お魚がみられるホテルを取ってあるけど、行くよね?」
イオエリスが色っぽく微笑んだの。
みゃーん、なんか生命以外の危機を感じるの~。
でもお魚みたいの…いざとなったら引っ掻いて逃げるの。
お魚がみられるホテルに行ったの。
なんで天界なの~僕、魔族なの~。
ホテルの大きな窓から空を泳ぐお魚を見ながら文字通り昇天させられたの~。
「うん、可愛いよ、そのちっちゃい翼。」
私の本性の背中に生えた翼を撫でながらイオエリスが言ったの。
「僕、魔族なの。」
僕はエグエグなきながら言ったの、お家に帰れないの~。
窓の外を雲鯨が優雅に泳いでいったの。
「俺のお嫁さんだからこれからは天界がうちだよ、アイルちゃん。」
甘い囁きでいわれて耳をあまがみされたの。
ええ?困るの~。
魔界にお仕事あるの~。
魔王妃様の側仕え辞めたくないの。
「魔界に通勤するの。」
イオエリスに詰め寄ったの。
お嫁さんは仕方ないの…誘惑にまけたの。
「魔界…入れるのかな?」
イオエリスが僕を抱き締めながら言ったの。
筋肉質の胸に潰されそうなの。
「魔連に聞くの。」
そのために 魔族連絡会があるの。
「俺のこと嫌い?」
甘くイオエリスが金の目で僕を見つめたの。
み、みゃーん、嫌いじゃないの~。
お前破壊力ありすぎなの~。
「す、好きにゃ。」
僕は生えたての翼をパタパタさせながら言ったの。
ほ、本当に仕事辞めないの…。
隣の甘い男!なに笑ってるの?
まず、魔連に言ってどうすればいいか聞いてみるの…。
駄文を読んでいただきありがとうございます♪




