裏側
表のあるものには裏がある。
「裏側を見ちゃいけないよ」
コタツから出ない博士はそう言った。裏側を見ちゃいけない。それはなんでだろう。表はいいのに裏はだめなの?
「裏側を見ちゃいけないよ」
太りすぎて飛べないフクロウがそう言った。裏側。気になる裏側。見えない裏側は気になる裏側。
「裏側を見ちゃいけないよ」
長く生き過ぎたネコはそう言った。ああ、見ちゃいけないんだ。でも僕は見た。正確でなくても裏側を。あのつまらない裏側を。
あれは一昨日、夜の街。薄くてぺらぺらな人間が歩いてたんだ。見たんだ、裏側。透けてた裏側。裏側初めて、でも、つまらない。それは酷いものだ。どんなジョークよりもつまらない。ぺらぺら人間は申し訳なさそうに土に帰った。
気になる裏側は気になるけど、気にならない裏側はつまらない。
そして、今表がある。
ここにある。
表がある。
見たいんだ裏側。見たいんだ。気になる裏側は気になる裏側。今は見えない、でもあるんだ。これは表だから裏があるんだ。すぐそこにあるそれは裏側なんだ。凄いよ裏側。すぐそこだよ。だってこれは表だもん。なら裏は裏側なんだ。見ちゃいけないんだ。裏側を。でも裏側がある。そうここに。表の裏に裏がある。何色だろう。気になるよ。大きいのかな。気になるよ。不思議、不思議、気になる不思議。記念、記念、裏側記念。
見るよ。見ちゃうよ。見ちゃうんだ。
ばぁ
「裏側を見ちゃいけないよ」
わあ、後悔。