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笑い声は嫌いなの。
笑い声は嫌いなの。
私を笑ってるの。あれも。そう、あれも。
大きな声は嫌いなの。
私は怖いの。声が。声が。あの声が。
私はいつも声を聞く。聞いた声は跳ね返って、模様を描いて染みていくの。水たまり。そう言ったら私はおかしくて笑ってしまう。
ああ、怖いわ。私は声が嫌いなの。
笑い声は嫌いなの。
やめて、やめて、私を傷つけないで。あなたの声も、あなたの声も、私を包む。
すぐ目の前さえ見えないの。すぐにぶつかってしまうそれは、あなたの声なの。
あなたの笑い声は嫌いだわ。嫌いだわ。うん。
どこにいこうかしら。また跳ね返って、きっとあの場所に、そうしたらあの場所に。
あら、楽しい。でも私は嫌いなの。
笑い声は嫌いなの。
あなたはあなた。あなたの声は嫌い。笑わないで、笑わないで。
あなたの声は嫌い。だから笑わないで。どこからか、いつからか。
あなたの声は通っていく。
狭い場所をすっと通る、水の中。
私を笑わないで。
おかしいわね、こんな私も。
でもね、笑っちゃ駄目。
私は私。
今も私は嫌いなの。
不思議ね。消えたいわ。