闇から光へ
誰か助けて…
苦しい…
病院のベッドで毎晩、私はこの苦痛に耐えながら生活している。
私の病気は手術でも薬でも治せないらしい。
私は死ぬまでこの苦しみに耐えなければいけない。
考えることはそればかり。
私は子供の頃から身体が弱くてあまり外で遊んだこともない、中学は無理して入退院を繰り返しながら通い、なんとかして高校に合格できた。
一緒に進学する中学の友達や高校で新しい友達を作って一緒に遊びに行ったり、恋について語り合ったり、いずれは結婚して子供を産んで幸せに浸りたい…、たとえささやかな夢であっても私には叶えることはできない夢。
私には余り時間が残っていないから…、自分の身体だから誰よりも解る、一分一秒、時が進につれて私の命が削れていくことを嫌でもわかってしまう。
私はこのまま何も思い出も作れずに死んで行くのか…。
「もっと生きたいか?」
だれ? 誰なの? この部屋は個室だし地上三階だから人はいないはず。
医者や看護師ではないのはわかる。私は生まれてからお世話になっている病院だから。
「君が望めばもっと生きさせてあげるよ」
頭に響くような男性の声、優しさの中に寂しさを含んだ声。
生きれるなら生きたいに決まってる、まだまだやりたいことは数え切れないほどあるもの
「なら君の『死』を貰っていくよ」
暖かい手が私の前髪に触れる。
身体の苦しみが少しずつ消えていく…、涙が出た。もう出ないと思っていた。
「君が迎えるはずたった死は僕が貰ったよ、君の運命は変わったからあとはその命が尽きるまで長生きしてね」
もう私を苦しめていた病気の気配すっかり消えていた。
「じゃ、よい人生を」
あなたは神様? それとも悪魔?
「両方か…な」
彼が笑っているような気がした。
目を開けて体を起こしてみる、自分の身体とは思えないくらい軽い、まるで羽のような感じがする。
辺りを見回しても人がいた気配はない。
けど確かに彼はここにいたのは私にはわかる、まだ前髪に触れた手の感触が残っているもの。
窓を開けると優しい風が部屋に流れこんでくる。
そうだ、私はまだ彼に大事なことを言ってなかった。
ありがとう…
今なら心から感謝の言葉を風が届けてくれると思えた。