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きっと君とは交わらない

作者: 山口甘利
掲載日:2026/02/05

 中三に上がり、気づけばもう二月。俺にはずっと好きな人がいる。

 同じクラスになってから約10ヶ月。仲良くなって話せるようになっている訳でもなく、ただのクラスメイトのまま進展はなし。

 彼女の名前だけは中一から知っていたけど、どんな子かは全く知らなかった。同じクラスになって、初めてこの学校にはこんなにも可愛すぎる人がいたのかと知った。

 彼女のことを想うたび、もしかしたら俺のことが好きかもなんて何度も考えた。

 もし付き合ったら、あんな所に行ってデートしたいな、なんてまだ付き合ってすらないのに妄想してしまう。

 お母さんには、俺は絶対結婚しない!って言い張ってるけど、彼女と付き合いたいって心から思う。一人の方が楽だと思ったり、好きな人と暮らしたいって思ったり...。

 どんなタイプの人が好きとか、何が趣味とか、好きな人がいるのかどうかとか。彼女の周辺の友達に聞こうと思えばすぐに分かるはず、でも…聞いて辛くなるのが怖くてずっと聞けない。

「じゃあ、次原さん」

 先生の声でハッと妄想の世界から体を戻す。

「はい、Xの答えは…」

 透き通るような綺麗な声が静かな教室に響き渡る。彼女こそが俺の好きな人の原結香。話したことなんて文化祭の準備だけなのに、勝手に自分の中では結香って呼び捨て。

 周りを見渡せば寝ている人が多い。この眠たい数学の授業は大半の生徒が眠っていていつも静かだ。その中でしっかりと授業を聞いている彼女がもっと好きになった。

 多分俺はあの大きすぎる目に惹かれたんだと思う。サラリと長い黒髪を一つに束ね、背の高い彼女。それとうまく表現できないけど、可愛い声と常に笑顔で友達と接している姿。もう全てが好きだ。

 結香はクラスをまとめるような一軍女子でもなく、休憩時間は一人でゆっくりと過ごすような女子でもなく、友達も多く、勉強もクラスの上位で誰とでも仲良く話せる人。

 俺が中一の頃から少しだけ話せる絢香は結香と共通のゲームが好きで仲が良いし、この学校では少ない自転車通学で帰る方向が一緒の、会えば一緒に帰る夏菜も結香と仲が良い。一応二人には、俺は好きな人がいないことにしている。

 俺がこの10ヶ月で知ったことと言えば、結香は最近流行ってるアイドルが好きで、銃を使ったゲームが好きらしい。他にはテーマパークに行ったり、映画に行ったりしているのをストーリーで見る。

「それじゃあ今から小テストをします。机を片付けて下さい」

 寝ている人たちは机から体を起こし、授業を聞いていた人たちはノートを片づけ出した。

 スタート、という合図で小テストが始まる。内容はもうすぐある高校入試に向けてだ。

 結香はもう県の上位の方の私立校に受かってそこに行くらしい。もちろん俺にはそんなとこに通えるほどの能力はない。もう卒業なんだから好きって気持ちを伝えられたらな。どれだけ片想いを長引かせるんだろう。振られるなら振られて諦められるけど、振られるのも怖い。

「はい、終了」

 静かだった教室が一気にザワザワとなる。ただ小テストが終わっただけでそんなザワザワすることあるかな。

 後ろを振り返って、後ろの席の子とプリントを交換する。その斜め後ろくらいにいる結香に目を向ける。

 彼女は近くの席の子がいつも交換している子がいないことに気づき、さりげなく結香のペアの子と三人でプリントを交換する。周りを見ているし、優しいしやっぱり好き。

 いつか見た記事を思い出す。恋をする時はいつまでに告白するかを決めることが大事だと書いていた。うん、決めた。卒業までにこの恋を終わらせるか、終わらせないかを決める。だったらその前に結香の好きな人を探ることにしよう。


 六限終了のチャイムが鳴り響く。

 少しすると担任が入ってきて、HRが始まる。

 インフルエンザが流行しているから気を付けてくださいとのこと。それと明日の学年集会の話をして、HRが終わった。


 自転車置き場に移動し、約束していた夏菜と会う。

「どうしたの?急に一緒に帰ろうとか珍しいね」

「んーまあちょっと相談したいことがあって」

 マフラーと手袋をつける。

「相談?まあおっけい、分かった」

 お互いに自転車に乗り込み、校門を出る。

「で?相談って?恋愛?」

 早速当てられてしまい、うんと頷く。

「まじっ!でその好きな人は?」

 告白する訳でもないのに、好きな人を言うだけでこれほど熱くなるものかな。首に汗が流れ、マフラーを外す。

「あの、原さん」

 結香!、なんて言ったら引かれるだろうから上の名前で伝えた。

 夏菜は少しニヤける。

「結香ね、結香勉強も出来るし、可愛いもんね。で何を知りたいの?」

「好きな人がいるかどうかを...」

 あー、と言って視線を反対側に逸らす。最悪、絶対いる反応。

「別にもう諦めたって良いから、教えて欲しい」

 別にここで好きな人がいたって、俺は多分恋を諦められない気がする。まだ付き合ってないし。もしそれなら別に失恋じゃなくて、片想いだから、と自分に言い聞かせる。涙なんて出す訳ないし。

「じゃあ私が知ってる限りなら、」

 俺は静かに頷く。

「二組の奥田君」

「えっ、あの?」

「うん、私もどうしてあの子が好きなのか分かんないけど、カッコいいらしい。結香から見て。顔で一目惚れしたらしい」

 奥田君は隣のクラスの二組の中心的な人物で、髪を短く切った、ザ・真面目の陽キャって感じの男子。俺とは真逆。校則とかもきちんと守り、生徒会もしている。

 でも正直に言うと、そこまでイケメンではないと思う。自分で言うのもあれだか、奥田君よりはオシャレにしてると思うんだけどな...。

「どれくらい好きなの?奥田君のこと」

「めっちゃ。…初めてのインスタのDMでカッコいいです!って伝えちゃってるぐらい」

 えっ、と小さく言う。そんなに好きなの。しかもめっちゃアタックしてるし。俺なんかラインも追加してなければ、インスタのDMなんてしたことないし、絶対脈なしじゃん。

 奥田君が羨ましい。結香にそんなにも好かれるなんて。あぁ、奥田君になりたい。

「で、その今の関係ってどんな感じなの?」

「うーん、あんま分かんない。DMを送った後の話は全く聞いてないから。でもよく見かけたら、かっこいいかっこいい、ってずっと言ってる」

「まじか」

 衝撃のことが入ってきすぎで、今にも倒れそうだ。

「じゃ、じゃあ。今まで彼氏がいたとかは?」

「えっとね、それも二組なんだけど、、、坂浦君」

 …坂浦君も真面目タイプだ。

「確か二ヶ月で別れたとか。告白は結香がして、振ったのも結香らしい」

 なんか少しだけわがままに見えたのは気のせいかな。多分何かあったんだろう。

「とりあえず、奥田君のこと、色々情報探ってるね」

 じゃあ私今日おばあちゃんの家だから、と言って夏菜は右の住宅街に入って行った。ありがとー、と言って俺は道を進む。

 そこまでタイプが違うなんて自分には無理な気がしてきた。

 多分やmaybeなんかじゃなく、絶対やProbabilityでもない、“きっと”が今の俺に似合う言葉だろう。

 きっと結香とは交わらない、そんな嫌な予感がする。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

好きな人には好きな人がいる。これはよくあることですよね。もう諦める、いっそう告白してみる、好みに合わせる、そのまま片想いでい続ける…人によって色々ですよね。

主人公はここから、どうするのか?

また次作品で書かせていただきます!お楽しみに!

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