第七話:因縁は巡る、円環のごとく
王立建築魔導学院の巨大演習場。
エドワード教授が強引にセッティングした
『建築魔法実技発表会』の会場は、異様な熱気に包まれていた。
詰めかけたのは、最新魔導建築を学ぶエリート学生たち。
さらには、王都の建築ギルドを牛耳る重鎮たちまで。
観客席では、こんな声が飛び交っていた。
「おい、聞いたか? 教授が連れてきた娘が、
最新理論を全否定するデモンストレーションをやるらしいぞ」
「ふん、どうせ地方の古臭い土木魔法だろ。
建物の強度は“魔導回路”の設計で決まる。
田舎娘に何ができるっていうんだ」
そんな嘲笑が渦巻く中、最前列――
一際豪華な椅子にふんぞり返る少年がいた。
プラチナブロンドの髪を整え、
宝石の埋め込まれた魔導杖を弄ぶその姿。
ゼクス・フォン・ロウ。
……私の父を陥れ、死に追いやったあの叔父の、血を引く男。
もちろん彼は、目の前の作業着姿の少女が
「桃花」だとは夢にも思っていない。
かつて死に損なった無能令嬢が、
王立学院の舞台に立っているなどとは。
「……気に食わないな。教授のお気に入りというだけで、
この僕と同じ舞台に立てると思っているのか」
ゼクスが、ゴミでも見るような目で、ステージの中央を睨む。
そこには――
肩に三毛猫を乗せ、作業着姿のままの私、桃花が立っていた。
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「さあ、桃花様。あなたの“真実の建築”を、
この愚かな者たちに見せつけてやりなさい!」
舞台裏で、もはや狂信者と化した
エドワード教授が、祈るように言う。
「言われなくても」
私は肩の上の猫に目をやった。
「ねえ、おじいちゃん。
あそこに座ってる派手な男
……どこかで見たような顔じゃない?」
「(フン……あの薄汚い裏切り者の腐った顔を、
さらに傲慢にしたようなツラじゃな。
桃花よ、奴の目の前で“本物”を見せてやれ。
二度と建築を語れぬほどにな)」
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実技の内容はシンプルだ。
制限時間内に“最強の防護壁”を構築し、
それを学院自慢の自動攻撃魔法が
破壊できるかどうか――を競う。
「まずは僕から行かせてもらおうか。
格の違いというものを教えてやる」
ゼクスが優雅に立ち上がり、杖を振る。
瞬間、幾何学的な紋章が幾重にも展開され、
光り輝く硝子のような魔法壁が出現する。
観客からは「おおっ!」と歓声が上がった。
「――これが“多重屈折魔導障壁”。
物理、魔法、あらゆる干渉を屈折させ、無力化する。
これが次世代の家を守る“壁”の定義だよ。
君のような……泥遊びとは次元が違うんだ」
ゼクスが、勝ち誇ったように私を見下す。
……けれど。
その“壁”を見た瞬間、私は思わず欠伸が出そうになった。
「……屈折? そんな逃げの一手で守るなんて、
基礎がボロボロだって言ってるようなものじゃない」
「なっ……!? この美しさが理解できないとは!
やはり野蛮な無能だな!」
「いいわ。次は私の番ね」
私はゆっくりと、ステージの冷たい石畳に膝をつく。
静かに手を地面へ。
父が、最後の一息まで守りたかった『土楼』の記憶。
何千もの人々を守り、あらゆる嵐を跳ね返してきた――
世界で一番温かな『壁』。
それを、今ここに呼び起こす。
叔父の末裔が誇る“最新の光”など、
**本物の土**で、完全に黙らせてやる。
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「――おじいちゃん、行くわよ」
私の手から、ドロリとした黄金の魔力が、
地底深くへと突き抜けていった。
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