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無能だと追放された令嬢、実は世界唯一の「土楼建築士」でした  作者: ☆もも☆


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第四話:寮が土楼じゃないなんて、ありえない!

王立建築魔導学院の教授……いや、私に平伏した元教授は、

やけに丁寧な、というか、もはや媚びるような手つきで

私を新しい寮に案内した。


案内されたのは、学院の敷地内にそびえ立つ、

最新鋭の高層ビルの一室。


「こちらが桃花様にご用意させていただいた、

 特別研究員専用の住居でございます! 

 最上階の角部屋、三面ガラス張りで夜景も美しく、

 最新の魔導空調と自動給仕機能も完備しておりますぞ!」


教授は誇らしげに、これ見よがしに胸を張る。


しかし、私の目に飛び込んできたのは

――ただの無機質な「鉄と硝子の箱」だった。


壁は血の通わない冷たい金属。

床は歩くたびに虚しく響く硬質な合成樹脂。


巨大な窓の外には、魔力の光をギラギラと反射する

摩天楼の群れが、まるで墓標のように広がっている。


「……ふん」


私が鼻を鳴らした瞬間、教授の顔がピクリと引きつった。


膝の上では、おじいちゃん猫が

「フン、安っぽい造りじゃのう。魂が抜けておるわい」

と退屈そうに尻尾を振っている。


「あのね、教授。こんなの、家じゃないわ」


私は部屋の中央で腕を組み、

冷ややかな視線を室内へ走らせた。


「三面ガラス張り?

 風の通りが悪くて埃が溜まるだけじゃない。

 おまけに、外から丸見え。あの一族のケチ臭い家畜小屋だって、

 もう少しプライバシーに配慮していたわよ」


「は、はは……しかし桃花様、

 こちらは最新の魔導防護膜が施されておりますので、

 外から覗かれる心配はございません。

 何よりこの圧倒的な開放感が――」


「開放感? ただスカスカなだけでしょ」


私は容赦なく言葉を叩きつける。


「魔導空調? 私の土楼にはね、夏の熱気を地中に逃がし、

 冬の冷気を遮断する天然の循環システムがあったの。

 あんな人工的な死んだ風なんて、かえって体に毒よ。

 住む人を病気にさせる気?」


教授が言葉に詰まる。

背後に控えていた「エリート」気取りの助手たちが、

顔を真っ赤にしてヒソヒソと囁き始めた。


「なんだあいつ、贅沢すぎるだろう。王都一の高級寮だぞ?」


「ああ。学長ですらなかなか入れない特等室を、

 『家畜小屋以下』だと……?」


外野の雑音はただのノイズだ、放っておく。


私は一歩踏み出し、床を踵で鳴らした。

カン、と硬い音が響く。


「この床もダメ。硬すぎて足が疲れるわ。

 土楼の床はね、土と石灰を秘伝の配合で固めてあったから、

 夏はひんやり、冬はほんのり温かかった。

 そもそも、この部屋には『呼吸』がないのよ。

 土の匂いもしない、木の温もりもない。

 こんな冷たい箱じゃ、心まで凍りついてしまうわ」


幼かった頃私は、

確かに豪華な部屋で暮らしていた。


けれど、あそこには「生活」があった。

父と母の笑い声、土壁が蓄えた昼間の太陽の匂い。


この部屋にあるのは、ただの「機能」だけだ。


おじいちゃん猫が、私の肩に飛び乗り、耳元で囁く。


「まったくじゃ。こんな鉄と硝子の檻では、

 わしら精霊の居場所もありゃせん。

 桃花、こんなもの、さっさと塗り潰してしまえ」


「ええ、もちろんよ。……教授?」


私はにっこりと――

かつて私を嘲笑った一族の長老たちに向けるような、

極上の「営業スマイル」を浮かべた。


「私が使う資材は、無制限。……そう言ったわよね? 

 この部屋、『土楼スタイル』にリフォームさせてもらうわ。

 一寸の文句も、一秒の遅延も許さないわよ?」


「り、リフォーム……!? 

 しかし桃花様、この寮は王立学院の重要文化財にも

 指定されておりまして、勝手な改築は――」


「さっき私の技術を『神の建築術』とか持ち上げていたのは

 どこの誰かしら?」


私は挑発するように首を傾げた。


「いい? 土楼ってのはね、ただの家じゃない。

 住む人の魂と、大地の気が一体となる『最強の要塞』なの。

 こんな不完全な場所じゃ、私の研究も捗らない。

 ……それとも、私の力を疑ってるの?」


教授の顔が真っ青になる。


彼はチラリと、

私の肩で「文句があるならわしが相手をしてやろうか?」

と言わんばかりに目を光らせるおじいちゃん猫を見た。


「……ッ! 承知いたしました! 

 資材も、工房も、人員も……すべていかようにも! 

 ご自由にお使いください!」


教授は観念したように深々と頭を下げ、出て行った。


鉄とガラスの冷たい箱。ここが私の最初の拠点。

――ここから、最強で最高の『私の土楼』を作り上げてやる。


胸に渦巻くあの一族への恨み、そして悲しみ。

そのすべてを、土を捏ねる力に変えてやる。


見てなさい。かつて私を追い出した連中が、土下座して

「一晩でいいから泊めてくれ」と泣きついてくるような、

世界で一番温かな『城』を築いてやるんだから!


読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m

本日、4話と5話を連続で投稿していきます。

よろしくお願いします☆


明日は、5話と6話を投稿します。

12話で完結しますので、よろしかったらブクマをポチッと

して頂けると嬉しいです。(*^-^*)

よろしくお願いします☆


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