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無能だと追放された令嬢、実は世界唯一の「土楼建築士」でした  作者: ☆もも☆


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第三話:条件次第で受けてあげてもいいけれど?

建設現場は、静まり返っていた。


先ほどまで轟音を立てていた魔導重機も、

鉄骨を浮かせていた術士たちの詠唱も、すべてが止まっている。


彼らの視線の先にあるのは、

私が無造作に地面から競り上がらせた、

分厚く、そしてどこか神々しい土の壁だ。


「……バカな。ありえん」

現場監督だった男が、震える手で土壁に触れる。


「解体用の魔導カッターが……刃こぼれしただと? 

不純物だらけのただの土塊に、

最新の切断術式が弾き返されるなど……!」


私はそんな男を無視して、膝の上に飛び乗ってきた

おじいちゃん猫――始祖の精霊の喉を撫でた。


「ねえ、おじいちゃん。

 この街の建築魔法って、ずいぶん効率が悪いのね。

 あんなに魔力を垂れ流して、

 やっと鉄の棒一本支えるのが精一杯なんて。

 あの一族のケチな長老たちでも、 

 もう少しマシな魔法の編み方を知っていたわよ」


「フン、時代が退化したのか、ここの人間が怠慢なのか。

 いずれにせよ、わしの知恵の欠片も継いでおらんようじゃな」


おじいちゃんがふてぶてしく欠伸をする。


「――そこまでだ! その土壁にこれ以上触れるな! 

 傷がついたらどうする!」


突如、現場に似つかわしくない、威厳に満ちた声が響いた。


人混みを割って現れたのは、仕立ての良い白い魔導衣を纏い、

金縁の眼鏡を光らせた老人だった。


その後ろには、

いかにも「エリート」といった風貌の従者たちが数人、

緊張した面持ちで控えている。


「き、教授!? なぜこのような場に……」


現場監督が慌てて膝をつく。

どうやら、この鉄の街でも最高峰の権威を持つ人物らしい。


老人は監督など目にもくれず、私の土壁に駆け寄った。


震える手で表面を撫で、眼鏡を何度も直しながら呟く。


「……素晴らしい。術式の痕跡が一切ない。

 いや、これは『術』ではないのか? 

 土の粒子一つ一つが、意志を持っているかのように

 完璧な調和ハーモニーで結束している。

 強度が理論値の十倍……いや、二十倍を超えているぞ!」


老人が弾かれたように私を振り返った。


その瞳には、学究的な狂熱が宿っている。


「お嬢さん……いや、魔導建築の天才よ! 君、名前は!? 

 どこでこの構築理論を学んだ!?」


「私は桃花トウファ。 学んだというか……

 実家の土楼うちじゃ、当たり前のことですけど」


「桃花君か! 素晴らしい!

 君のこの技法は、

 既存の術式を根底から覆す可能性を秘めている! 

 ぜひ、我が王立建築魔導学院へ来てくれないか!?」


その言葉が響いた瞬間、

周囲から「ひっ」と短い悲鳴が上がった。


王立建築魔導学院。


卒業すれば国家の命運を左右する建築に関われる、

エリートの聖域。そこに「小汚い娘」がスカウトされたのだ。


どよめきが広がる中、私は冷めた目で老人を見つめた。


王立? 将来の約束? そんなこと、私にはどうでもいい。


私が欲しいのは、あの一族の連中が二度と手を出せない、

完璧で温かな『私の居場所』だけだ。


私はおじいちゃん猫の頭をゆっくりと撫で、

背筋を伸ばして言い放った。


「スカウトですって? ……そうね、条件次第かしら?」


「じょ、条件……?」

老教授が呆気に取られたような声を出す。


周囲からは「なんて生意気な!」

「教授の誘いを条件付きで受けるだと!?」

と罵声が飛ぶが、一切気にしない。


「私ね、人から指図されるのが世界で一番嫌いなの。

 学校に行くなら、私に教えるんじゃなくて、

 私の理想の『土楼』を完成させるための資材と場所を

 無制限に提供してもらうわ。それが条件よ。」


「資材と場所の提供……。 それは、学生ではなく、

 客員教授並みの待遇を求めているのか?」


「そうね。それから……」

私は膝の上のおじいちゃん猫を、仰々しく掲げた。


「このおじいちゃんを、学長並みに敬うこと。

 美味しい供え物と、最高の寝床を用意してちょうだい。

 ……できる?」


「なっ、ただの猫を学長並みにだと!? いい加減にしろ!」

教授の後ろにいた若い助手が色めき立った。


だが、その瞬間だった。


おじいちゃん猫が、鋭い金色の瞳で助手を一瞥した。


おじいちゃん猫の背後に、巨大な円環状の土の巨城――

伝説の『始祖の土楼』の幻影が、圧倒的な威圧感とともに立ち昇る。


「ヒッ……!?」

助手は悲鳴を上げて腰を抜かし、ガタガタと震え出した。


「ま、待て……! その猫……まさか、土地の霊脈を統べる

『黄金の守護獣』か……!?」


老教授の顔から血の気が引いていく。

彼は歴史学者でもあったのだろう。


古文書にのみ記された、大地の怒りを鎮める聖獣の姿を、

おじいちゃんの中に見たのだ。


「ああ、ああ……! なんということだ!

 君は、伝説そのものを連れて現れたのか!」


教授は突如、その場に平伏した。


「分かった! いや、謹んでお受けしよう! 

 君には専用の工房と、王室直属の予算を無制限に与える! 

 講義など出なくていい、我々にその大地の真理を

 見せてくれればそれでいい!」


一国の権威が路地裏の泥の中で平伏する光景に、

周囲は言葉を失っている。


私は、おじいちゃん猫と視線を合わせ、

小さくニヤリと笑った。


「(桃花、よく言った。

 あの一族のケチな長老たちに見せてやりたいのう。

 身売り同然に追い出した娘が、今や一国の予算を

 あごで使っておるわい)」


「いいわ、教授。

 その条件なら、あなたの学校に行ってあげてもいいわ」


こうして私は、近未来の鉄の街で、

最強の『ワガママ建築家』としての第一歩を踏み出した。


見てなさい、一族の連中。


あんたたちが一生かかっても届かない、

最高に温かな『家』を、この街の金と技術を使って、

天まで届かせてやるんだから。


読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m

本日、第3話まで投稿します。

よろしくお願いします☆


明日は、4話と5話を連続で投稿していきます。

12話で完結しますので、よろしかったらブクマをポチッと

して頂けると嬉しいです。(*^-^*)

よろしくお願いします☆


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