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無能だと追放された令嬢、実は世界唯一の「土楼建築士」でした  作者: ☆もも☆


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第十二話:天に届く円環、地の底からの逆転(完)

かつて“灰の街”と呼ばれ、

王都でも最も見捨てられた貧民窟だったこの場所に

――今、一つの奇跡がそびえ立っていた。


それは、白磁のような艶を持ち、

やわらかく太陽の光を反射する巨大な建築物。


見上げる者の心を温め、包み込むような佇まい。


――『円環の城』。


それは、王宮の尖塔よりも高く、摩天楼のような硝子と

鉄の塔たちを圧倒する存在感を放ちながらも、

けっして冷たくはなかった。


どこまでも“温かい”。


住む人すべてを受け入れる、土の器。


そして、今――その堂々たる『城』の前に、

見る影もなく衰えた数名の老人が、

土まみれの衣で膝をついていた。


「桃花……いや、桃花様……!

どうか、この中に我らを入れてくれ……!」


それは、かつて私を“無能の令嬢”と蔑み、

物置小屋へ追いやった土楼一族の末裔たち。


今や、彼らの一族の土地は、

叔父バルトの術式が断たれたことで霊脈が枯れ、

不毛の地と化してしまっていた。


自らの“嘘の基盤”が崩れた瞬間、何も残らなかったのだ。


「……へぇ。ずいぶん素直になったわね」


私は、肩に乗ったおじいちゃん猫を片手で撫でながら、

冷たい目で彼らを見下ろした。


「入れてあげても、いいわよ。

ただし――条件があるの」


「じ、条件……?」


「一族の“名誉”、伝統、地位――全部捨てなさい」


「なっ……!?」


一人が顔を引きつらせた。

だが私は、言葉を続けることを止めなかった。


「この土楼には、特別な人間なんていない。

 身分も血筋も、外から持ち込んだ“威光”も、

 一切通用しない。

 入りたいなら、今日からあなたたちは『ただの労働者』よ。

 土を練る、瓦を焼く、それがあなたたちの仕事」


「そ、そんな……っ!」


「嫌なら、どうぞそのご立派な家系図でも煮込んで食べれば?

  命をつなぐには、きっと足りるでしょうよ」


私は、地面に落ちた一枚の破れた紋章旗をつま先で押し返す。


その金糸で刺繍された『土楼家』の紋章は、

もうこの場所には何の意味も持たない。


「(……よう言った、桃花。あの誇り高ぶる老いぼれどもに、

 ようやく現実を思い知らせたのじゃ)」


おじいちゃん猫が、満足そうにゴロリと喉を鳴らす。


「ふふ、まだ生ぬるいくらいよ。

……この土楼は、“恨み”や“支配”のためにあるんじゃない。

誰のためでもない、“私”のためにあるの」


末裔たちは、もはや反論する気力もなく

、静かに泥へと額を擦り付けた。


かつての一族の象徴だった高い壁も、

今やこの『円環の城』の礎にすらならない。


すべては、終わったのだ。


私は背を向け、静かに屋上庭園へと向かった。

そこには、緑と薬草があふれる癒しの空間

――大地の力を受けて育った“生きた植物たち”が、風に揺れていた。


「(見よ、桃花。あの王宮の尖塔が、

 小さく、情けなく見えるぞ)」


「ええ。まるで、見栄だけで積み上げた積み木ね」


遠くには、王都の誇りとされた高層ビル群

――硝子と鉄の摩天楼が並んでいる。


だが、そのどれもが、

今や私の築いた“円環”の影に隠れて見えない。


高さではない。

大切なのは、何を支え、誰を守るかだ。


この城には、金のない人も、病を抱えた人も、

居場所を失った者もいる。


でも、彼らは皆、笑っていた。

寒さに凍えず、空腹に震えず、

土の香りに癒やされながら生きている。


「(桃花、わしは……本当に誇らしいぞ)」


「ありがとう、おじいちゃん。……

 でも、私は何も終わったとは思っていないの」


私はそっと、庭の片隅に咲いた一輪の薬草を摘み取り、

その香りを鼻先で味わった。


土の匂い。命の匂い。そして――未来の匂い。


「私は、権力なんていらないわ。

 この土と、お爺ちゃんがいてくれれば、

 それで十分よ」


「(そうじゃ、桃花。お前は世界の中心になどならんでよい。

 ただ、自分の“居場所”を、自分の手で捏ね続ける者であれ)」


――私は、もう誰かに与えられるのを待たない。


私の居場所は、私が“練って”、築いて、育てていくもの。


この“円環の城”は、私自身の証。

誰にも奪えない、誰にも媚びない、“大地の輪”だ。


これからも、図太く、自由に。

この土楼の中で、私は私らしく、生きていく。


(完)



最後までご覧頂き

本当にありがとうございましたm(_ _)m


桃花のお話し・・

気に入っていただければ幸いです♪

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