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無能だと追放された令嬢、実は世界唯一の「土楼建築士」でした  作者: ☆もも☆


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第十一話:怪物と、真実の土

王都の片隅、「灰の街」の土楼に、

一台の漆黒の馬車が乗り込んできた。


その扉から現れたのは、

貴族の中でも指折りの実力者――バルト・フォン・ロウ。


そしてその後ろには、物珍しそうに周囲を眺める

一人の青年、リチャード王子の姿があった。


「ふん……見ろ、この泥の匂いが染みついた貧民窟を。

 まったく、土遊びをして悦に入っている小娘など、

 構うだけ無駄だというのに」


バルトの声は冷たい。

だが、その若々しい顔立ちには不自然なものがあった。


彼は、私の父がまだ族長だった頃と寸分違わぬ姿をしている。

いや、それどころか――何百年も前の記録と、

まったく変わらない“異形の若さ”を保っていた。


(こいつ……時間すら土台にして、積み上げてきたのね。

 醜く、歪んだ“延命の楼”を)


「……来たわね、バルト叔父様」


私が、庭の片隅に立ち、土を捏ねながら声をかけると、

バルトの目が細くなった。


「……ほう、死に損ないの桃花か。

 崖から落ちてくたばらなかったのは、

 奇跡というべきか――いや、呪いか?

 始祖の霊獣まで盗み出して、スラムの民を扇動するとは。

 一族の面汚しめ」


「(桃花、こやつ……わしの力を啜りすぎて、

 魂までドブ泥のように腐っておるぞ)」


おじいちゃん猫が、肩の上で毛を逆立てて唸る。


「ええ、分かってる。だからこそ、今ここで終わらせるの」


私は、静かに地面に膝をつき、手のひらで土を撫でた。


「ねえ、叔父様。あんたが“正統なる土楼の継承者”なら

 ――聞こえるはずよ。この庭の花たちが、

 土の中で歌っている“あの歌”が」


「……歌だと? 狂言も大概にせよ。

 警備兵、この小娘を連れ出せ!」


だが、警備兵が踏み込むよりも早く、

私の指が“土”を叩いた。


その瞬間、おじいちゃん猫の瞳が黄金に輝き

庭の空間が淡く揺れる。


やがて、空中に浮かび上がる“記憶の残像”

――それは、数百年前の土楼の記録だった。


投影された映像には、若き日のバルトが、

族長であった兄……私の父に向かって膝を屈し、

裏では密かに「延命の術式」を心臓に刻む姿が映っていた。


「な……!? これは幻覚だ! 誰がこんな茶番を……!」


「茶番? じゃあ、その術式に使われてる魔力の波長……

 今のあんたとまったく一致してるのは、どう説明するのかしら?」


横から、王子――リチャードが冷たく告げた。


「動くな、バルト。王家が有する精密測定魔具でも、

 その魔力波長は完全一致だ。

 映像が偽りであれ、それを流している者と

 “お前”の中身が、同じであることは否定できん」


「バカな、これは罠だ! 

 戯れ言に惑わされるな、王子!」


「(桃花、今じゃ。わしの“始祖権限”を使え。

 こやつの歪んだ根を、土から断ち切るのじゃ)」


「――ええ。土は、与えるだけの存在じゃない。

 取り戻すことも、裁くこともできる。

 さあ、“奪った若さ”を、返してもらいましょうか」


私はおじいちゃん猫の額に触れ、声を高らかに告げた。


「《土楼の裁き(アース・リターン)》――発動!」


大地が震える。

バルトの足元から、細い“魔力の管”のようなものが

一気に引きちぎられ、断末魔のような悲鳴が空気を裂いた。


「あ……ああああああああッッ!!!」


バルトの顔がみるみる変貌していく。

張りのあった肌は枯葉のようにしぼみ、

艶やかだった髪は一瞬で抜け落ち、

虚ろな白目をさらした“抜け殻の老体”が、王子の前に崩れ落ちた。


それはもう、人ではなかった。

数百年に渡って他人の命と魔力を啜り続けた

“老いさらばえた怪物”の成れの果てだった。


「……土楼はね、正しく積み上げなきゃ、必ず崩れるのよ。

 ――あんたの“嘘の人生”みたいにね」


私は、衛兵に震えながら引きずられていく

“元・支配者”をただ見送った。




「(見事じゃ、桃花。

 ……わしもようやく、胸を張って眠れそうじゃわい)」


「まだ寝かせないわよ、おじいちゃん。

 これから王都そのものを――

 “本物の土楼”に組み替えるんだから!」


土に耳を当てれば、もう“あの歌”は聞こえなかった。

代わりに、芽吹きのような優しい“音”が

大地から伝わってきた。


私は、再び粘土を手に取り、次の“構造”を描き始める。


すべては、未来のために。

本物の「居場所」を、世界中に築くために――。



ご覧頂きありがとうございますm(_ _)m

次回、最終回までお付き合いいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします☆

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